水銀汚染の防止を目指した国際条約が「水俣条約」と名付けられることになりました。
新聞報道
原爆投下による惨状によって、広島と長崎が世界に知られることになりました。
そして今度は、水銀汚染による公害の象徴として、水俣という地名が採用される。
原爆で被曝した方、水俣で水銀汚染の被害を受けて今も闘病中という方々がいらっしゃいます。
ですから、今回の「水俣条約」という条約名に対して複雑な感情を抱く方もいらっしゃることでしょう。
私も、その1人です。
でも、事実から目をそらさないで真正面から受けとめていくことが、日本の役目なのでしょう。
=======
私が高校から大学を過ごした1970年代は、公害や薬害と社会が格闘する時代でした。
都内に住んでいた私の身近な地域でも、光化学スモッグで練習中に呼吸困難になる運動部員が続出。
自転車に乗って駒沢通りを抜けて多摩川の河川敷に行くと、合成洗剤の含まれた生活排水によって、川面は不気味に泡立っていました。
また、早大理工学部のはす向かいにある病院には、サリドマイドの薬害による障害を抱えた人たちが通院していました。
そんな時代でしたから、法学部の民法の講義でも、民法の一般不法行為と特殊不法行為の定め、そして水質汚濁防止法等の特別法なども駆使して、企業の損害賠償責任を問うて被害者救済を目指すという雰囲気がみなぎっていたことを、落ちこぼれ学生だった私でも懐かしく思い出します。
=======
1月の後半は、多くの学生さんたちが後期試験と格闘している時期です。
社会科学系の学部では、試験勉強で詰め込んでいる事柄の中にも、まさに現代の社会が直面している問題が含まれているはずです。
試験は試験として切り抜けてもらうとして、試験終了後に、自分自身の身近なところに当てはめて考えてみることをお薦めします。
一夜漬けで詰め込んだ知識であっても、噛み砕いてみると、世の中の仕組みや動きが、意外に理解出来るものなんです。
社会科学は、文字通り、社会を科学する学問なのですね。