紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

さなぎになって

2007-12-08 21:52:33 | テレビ
 今週の『ちりとてちん』の中で、異色な回があったので、そのことについて。

 主人公の喜代美こと若狭が初高座で、「おち」を先に言ってしまうという大失態を演じていきなり内面的な奈落に転げ落ちてしまった。彼女を心配するご近所の人々や師匠や兄弟子たち。しかし、彼女が現実を受入れ、「自ら」這い上がるしかないことを自分の経験値で知っている兄弟子・草々と定食&居酒屋「寝床」の女主人さきちゃんは、一見冷たいほど喜代美を突き放す。

 この回には、未来の喜代美の回想として、喜代美の心中を代弁してくれるナレーションである上沼美恵子の声はないので、喜代美の心中の声も聞こえない。喜代美自身の科白も、あまり聞かれなかった。

 一見、兄弟子・草々の言葉によって喜代美が立ち直るかのようだが、彼が言ったのは「今の自分の立ち位置の低さを認め、そこから一歩ずつ、地道に歩くしかない」という基本中の基本であり、指し示すのは、とても地味な苦しい道なのだ。

 その地味で苦しい道を、迂回したりズルしたり誤摩化したりすれば、先に進むことはできない。誰にも肩代わりできないし、シェアすることも不可能だ。ひとり孤独に、自分の力だけで通り抜けなければならない場面は、たぶん誰にもあると思う。さなぎのように自分のなかに籠って、考え続けアンテナを立てつつ自分が変われる時を待つ。成長するときには、一人でしなければならない作業がきっとあるのだ。

 そんなときに必要なのは、素直な感受性と、あきらめず希望を希求し続ける心。どんなに時間がかかっても、希望の道は途切れないと信じている。

 だから週に何度も人身事故で電車が遅れる事態に遭遇するTくんの話を聞くと、自ら断たれる命の多さが、残念でたまらない。1日2件というのも、決して珍しくはないのだ。