教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

シュウォッチにかけた夏の思い出

2009-01-23 00:18:24 | シューティング
2003年はじめ、ある親友が宣言した。
「シュウォッチをWindowsに移植しコミケに出展する」
と。

わたしはこう言う以外にありえなかった。
「おもしろそうだ! おれにも何かやらせろ」

その男はとある国立大の情報工学をおさめた院卒の、いわゆるエリート教育をおさめた男である。仮にS氏とでも呼ぼうか。
なおかつ、あとの人気を考えれば発売日は驚くほど低調だったPCエンジン版のときメモを早期に発掘する慧眼もさることながら、ぷよぷよでも15連鎖くらい平気で組んでしまうようなゲーマーでもあり、同人ゲーを作らせたら名だたる大物ソフトをさしおいてvectorで日間ダウンロード2位になったこともあるという、すばらしい尊敬すべきオタだ。
そして今は某会社で産業用の巨大システムのソフト開発を行っている。
彼に言わせればわたしのほうが濃ゆいと謙遜なさるのだが、まあそれはおいておこう。

これから作るプログラムの規模自体はたいしたことはないので、スーパープログラマーなS氏以外に他にソフト屋を雇い入れる意味はなかった。

わたしはそれ以外のシゴト、広報パンフの作成と、ハードウエアを担当した。
広報パンフの作成は前回書いたやつなので、そちらを参照してほしい。今回はもう1つのほうについて書く。

コミケに出展する際、単にCD-ROMをスペースに陳列して売るだけでは目立ちはしない。
ではどうするか?
むずかしい問いだった。

そこでわれわれは決断した。
「ホンモノのシュウォッチをUSB対応に改造し、ホンモノのシュウォッチをつかって俺たちの同人ゲーを動かすデモをやろうではないか!」
わたしのやることは決まった。

さいわいにして、昔とあるレースゲーム用にメガドライブのコントローラーを改造して専用コントローラをつくった経験があり、それくらいならきっと何とかなろうと思った。

まずホンモノのシュウォッチを分解する。
液晶の裏にICがのっている以外は電子部品はのっておらず、ボタンを押したときの接触用に単層プリント基板があるだけだった。場所もあんがい空いていた。
つぎに別途買ってきた普通のUSBゲームパッドを分解する。
これもDIPのIC1個とコンデンサが2個のっているだけの簡単な構造だった。

USBゲームパッドのほうの部品3つをシュウォッチのほうへ移植し、USBゲームパッドのボタンの配線にそってシュウォッチ側のボタンのパターンなどに配線すれば完了。

しかしこれでは面白くない。
なぜなら、シュウォッチは電池駆動じゃないか。できたものが電池駆動できなかったら魅力が半減じゃないか。USBケーブルをつなげなければシュウォッチとして機能しないというのはどうなのか。電池駆動できてもすぐに電池が切れるようでは意味がないじゃないか。

わたしは新たな対策を考える必要があった。
思いついた解決策はこうだ。
かなり専門的な話になってしまうのでアレなんだが…、USBゲームパッドのICの入力端子に電流が流れないようにMOSFET(※1)でバッファする。FETの電源はUSBからもらい、ゲートを高抵抗を介してシュウォッチ側のボタンのパターンに並列に配線する。こうすればシュウォッチ側の電池のエネルギーをほぼ消費しない回路になる。

だが問題があった。
部品点数がすごく増える。FETだとか抵抗だとか。いったいこれでシュウォッチの中に納まるのか?

まず若松通商にいって現物のFETの大きさとCQ出版のデータシートをにらめっこしながら要求に合致するパーツを探した。さいわい表面実装のちっこい部品でいいのがあった。抵抗は米粒よりはるかに小さい1608サイズのチップ抵抗を用意した。(※2)
次に秋月無線に行ってハーフピッチで両面に部品がおけるユニバーサル基板を入手した。

さて用意はできた。
ユニバーサル基板をシュウォッチ内におさまるギリギリ大きい寸法に切り出してみた条件で部品レイアウトを検討してみたが、部品は入りきらなかった。
しかたがないからネジを1つ潰して空いたスペースも流用を模索。
これなら部品を実装することができた。
実装方法が確定すれば試行錯誤はすでに済ませてあるので作るのは早い。

ネジを締める。
シュウォッチとしてもバッチリ動いている。
PCにつなげてみてもゲームパッドとしてボタンのON/OFFにも反応している。
よし!

S氏はコミケのためだけに当時けっこうな値段がしたハンディーPCを買ってきていた。
わたしは完成したUSB改造シュウォッチを片手に自慢しにいったのだが、「この男できる!」と認めざるを得なくなり微妙に返り討ちにあった気がした。

そしてShwatch++(※3)は完成した。
本体部分は完成していたゲームとUSB改造シュウォッチをつなげてプレイしてみたときの喜びはひとしおだった。
大人気はムリにしても、何人かコアなお客のハートをガッチリゲットできると目配せした。

広報パンフの作成やら何やかんやあり、いよいよ当日。(※4)

わたしは直接面識はなかったがS氏のダチでコミケ事情に詳しい助っ人も入り、コミケの混雑具合を勘案した最適交通ルートを提案してくれ、われわれシロウトではアタフタするような事務処理なども手伝ってくれ、いざ決戦の時間となった。

まあ大混雑で目に留めてくれる人の割合は高くはなかったが、コアなお客さんはたくさん来てくれた。
パワーグローブ(※5)をはめた通なお客さんが来れくれたり、マジに16連射できるすごいお客さんが実演デモをかってでてくれたりと、いろんな思い出ができた。
CD-Rも思いのほか売れ、昼過ぎには完売した。
われわれの熱い夏は終わった。

そして今でも時折思い出す。
高橋名人にあこがれてシュウォッチをたたいた少年時代、高橋名人にあこがれてシュウォッチを改造しコミケへ出陣した青年時代を。



【※1 MOSFET】
トランジスタの1種。
ある端子とある端子の間の電圧である端子の電流を制御できる。

【※2 若松通商 秋月無線】
http://www.wakamatsu-net.com/biz/
http://akizukidenshi.com/

【※3 Shwatch++】
オリジナルのダウンロードはこちら
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se326564.html

【※4 広報パンフ】
前回記事分

【※5 パワーグローブ】
ある意味で激レアなファミコン用コントローラ。
手に握って使うのではなく、手袋のように着用して使う。
http://www.ne.jp/asahi/oroti/famicom/cont23.html