教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

黒いシンデレラ

2009-02-28 00:04:09 | オタネタ全般
むかしむかし、あるところに、シンデレラという女の子がいました。
シンデレラは継母とその連れ子の2人の姉と暮らしていました。

シンデレラは今日も姉の1人に蹴り飛ばされています。
「グズだね、はやく掃除してお茶でも入れてよ!」
シンデレラはバケツの汚水をかぶってしまいズブ濡れになってしまいました。

「もうしわけありません、直ちにお茶を入れてまいります」
シンデレラは蝋人形のように無表情で謝罪し、台所に向かいました。

シンデレラは姉のティーカップをとり、いつものように紅茶葉を入れ、そしていつものようにハナクソも入れてやりました。
「ケッケッケ、またハナクソ入りを飲ませてやるわ」
口元が少し歪みましたが、紅茶を入れ終わりトレイにのせるといつものように営業スマイルにもどしました。

「遅いわね、さっさと持ってきなさいよ!」
姉たちはソファーでダベりながらシンデレラを罵りました。
「申し訳ありません、お姉さま」
そう無表情で謝罪しながら、カップを姉にわたしました。
姉がカップに口をつけるのをしっかりと見届け、一人ほくそ笑みます。

「ねえ、シンデレラ」
ふいに姉がにらみつけるのでシンデレラはバレたのかと思い少したじろぎましたが、
「はい、なんでしょうかお姉さま」
と、いつもの営業スマイルで答えました。
シンデレラは営業スマイルをいつも訓練していて、絶対に本心がバレない自信だけはありました。
「今日はお城の舞踏会に言ってくるわ、ドレスを持ってきなさい」

シンデレラは隣の部屋から3つほどスーツケースを運び出し、それぞれに梱包してあったドレスを母と2人の姉に着せてやりました。
母も姉も、まともにドレスを着用することができません。
いつもシンデレラが手伝うことになっています。
シンデレラはこのためにドレスの着付けを勉強しました。
正しい着付けをマスターしました。
だからこそ、ネクタイの結びかたや裾の出し方など、庶民にはわかっていない些細な部分でわざとおかしな着付けをしてやりました。

「あら、あたしってきれーい・・・。
 うまく王子様の目にとまれば、こんなボロ屋住まいから豪邸暮らしにはやがわりよねえ」
姉はドレスを着て上機嫌です。
シンデレラは
『いつもドレスを着慣れている上流階級の人が見たら、あんたの着付けなんてタダの貴族のコスプレしたイナカモノだってすぐにバレるのよ』
と内心ほくそえんでいましたが、そんなことはおくびにも出しません。

慌しく姉の相手をしてやっている間に日も暮れはじめ、母と姉たちは馬車に乗ってお城へ出かけていってしまいました。

「はあー」
シンデレラはため息をつきました。
いやなヤツらが一斉に出て行って、家は静かになっていました。

「はあー」
シンデレラは、またため息をつきました。
『あたしならもっとドレスを着飾ってやれるのに、なんであたしにはチャンスもないのよ・・・』
だれも聞いてもいないのに、ひとり愚痴ることしかできません。

「はあー」
シンデレラは、またまたため息をつきました。
『だれが見ても性格悪いクソむかつく姉にくらべて、あたしなら舞踏会で男が好きそうな女を演じきる自信があるのに・・・』
シンデレラはさっきまで姉が座っていたイスを蹴り飛ばして愚痴りました。

いくら愚痴ってもイライラが収まりません。
ほんのりマブタが湿ってきたような気がして、また腹がたちました。

ピンポーン

だれかが家にやってきたようです。
めんどうだからフテ寝を決め込もうかと思ったのですが、姉だったら後で面倒なことになりそうだと思い、しかたなく玄関に向かいました。

「やあ、シンデレラさん」
いかにも怪しげな婆さんがそこにいました。
「あたしゃ魔法使いだよ、あんたを舞踏会に連れて行ってやろうと思ってね」
婆さんはジャラジャラと全部の指に指輪をはめた趣味の悪い腕をかざして言いました。

「はあ? ババア、あんた姉の知り合い? 姉に頼まれてあたしをからかいに来たんだったら、包丁であんたの処女を奪うわよ?」
シンデレラは相手をするのも面倒くさくなっていました。
母も姉もいなければ営業スマイルを維持する必要もありません。

「あたしゃ本気だよ?」
婆さんは杖をかざしました。
そうするとどうでしょう。シンデレラのボロ服はたちまちドレスになっていました。

「ババア、どうやったのよこれ!」
シンデレラは婆さんの襟首をつかんでにらみました。
「ほら、これでおまえさんも舞踏会にいけるじゃろ、それからババアは止めてくれんかね・・・」
シンデレラは襟首をつかむのをやめ、深呼吸してからこう言いました。
「すてきな魔法使いの奥様、すてきなドレスをありがとうございます、ニコッ」
シンデレラは営業スマイルに戻していました。

「あたしの魔法は夜の12時で効果が切れるからね、注意するんじゃよ」
婆さんは言いました。
「そのまえに、夜の12時になる前に、姉にみつかったら身包みはがされそうよ」
シンデレラは心配になりましたが
「あんたの魔法の服はあんたしか着られないようにしてあるから心配せんでええ」
と教えてもらいました。

「他にはどんなことができるの?」
「たとえば、こんなこととか」
婆さんが杖をかざしたかと思えば、いつの間にか家の前にかぼちゃの馬車が現れていました。

「それじゃ、あたしの胸をFカップにしなさい! 男はみんな乳にしか興味がないのよ!」
「あいよ」
あっという間にシンデレラは巨乳になりました。
「じゃ、次は二重マブタにして・・・」
シンデレラと婆さんは、真っ暗になるまで綿密な打ち合わせをしました。

舞踏会の開始ギリギリ、なんとかシンデレラは間に合いました。
シンデレラはチケットを渡し、会場に入ります。
『ククッ、勝った!』
シンデレラは内心ほくそ笑みました。シンデレラほど美人でスタイルが良い女はいなかったからです。

王子様がシンデレラを見ていたので、お尻をプリプリさせながら中央へ歩いていきました。
こんなこともあろうかと、ドラマでやっていた美人秘書のエッチな歩き方をひそかに練習していたのです。

王子様はダベっていた相手の女の子をほったらかしにして、シンデレラのほうへやってきました。
シンデレラは「釣れた!」と確信しましたが、まだ油断してはいけないと気を引き締めました。

「きれいなお嬢さん、ぼくと踊ってください」
シンデレラは王子様に言い寄られてドキドキしましたが、近くで見ると意外にブ男で少しガッカリしました。
しかし、そんなことで王子様を相手にしないはずがありません。男はツラよりサイフのほうが重要なのですから。

シンデレラは少しうつむき加減で答えました。
「まあ、あこがれの王子様にお声をかけていただけるなんて・・・
あたしのようなイナカモノでお相手を勤めさせて頂けるのでしょうか・・・」
王子様は貴族の小生意気な女どもしか相手にしたことがないのでしょう。
シンデレラのような酒場で小遣いかせぎした百戦錬磨の猛者にかなうはずがありません。
シンデレラはそのあたりのしぐさには少し自信があったのです。

「城の舞踏会とはいっても名ばかりで、貴族のマネをした下民だらけで困っていたところなんだ、ほらあれとか見てくれよ」
王子様が指差したのはシンデレラの母と姉でした。
「まあ、あの着付けったらおかしいですわ(笑)」
王子様とシンデレラは、シンデレラがわざとおかしく着付けした母と姉を指差して笑いました。
シンデレラと気付かない母と姉が笑われて顔を真っ赤にしているのを見て、なおさら笑えてきました。

シンデレラは舞踏会の間ずっと王子様と踊っていました。
本当なら夢のような時間とでもいうのだろうと思いました。
しかしシンデレラは、さりげなく王子様の腕にFカップ化した胸がタッチするよう演出するなど、あらゆる小技を駆使して王子様の印象にのこるよう腕前を如何なく発揮していたため、とてもロマンチックだなどと思っているヒマはありませんでした。

時刻は夜の12時直前になりました。

「王子様、わたくしはもう帰らなければならないのです」
そう言ってシンデレラはお城を後にしました。
もちろん王子様が後を追ってやってくるのを見計らいながら。

シンデレラは思い出しました。
『あんたの魔法の服はあんたしか着られないようにしてあるから心配せんでええ』
シンデレラはワザとらしさが出ないように細心の注意をはらって階段から転げ落ち、ハイヒールを片方だけその場に脱ぎ残して立ち去りました。

『よし!』
かぼちゃの馬車のなかで小さくガッツポーズをしました。
そうとは知らない王子様はハイヒールをにぎりしめ、その場にたたずむのでした。

次の日。
「王子の所有するハイヒールを履けたものを王子の正妻とする」
お城から国中に緊急の御触れが通達されました。

国中の若い女が集められました。
だれもかれもがムリヤリ履こうとしますが、必ずブカブカだったりキツキツだったりして、だれ一人として履くことができません。
シンデレラは自分しか履けないのを予め知っていたので、姉の背中にハナクソをこすりつけながら余裕の表情で順番待ちしていました。

姉たちはどうせ履けないのに醜く何分もねばって追い出されました。
そしてシンデレラの番。
シンデレラはハイヒールをするりと履き、
「王子様、きっとわたくしを見つけて下さるのを心待ちにしておりましたわ」
と、いつもの営業スマイルで答えました。

王子様はFカップじゃない胸を見て一瞬だけ怪訝な顔をしましたが、シンデレラに話しかけられたとたん鼻息を荒くして抱きしめました。

3ヶ月後、王子様とシンデレラの結婚式がなされ、王族としての生活が始まりました。
「姉貴、まだ掃除おわってないの?」
シンデレラの母と2人の姉たちは王族ご用達の商人にデリバティブではめられ、破産寸前になっていました。
「ズグだね、はやく終わらせてお茶でも入れてよ!」
行くあてのない母と姉たちはシンデレラに頼りすがるしかありませんでした。
「なによこの紅茶、あなたと同じでカスカスで全然コクがでてないじゃない!」
シンデレラはいじめていた母と姉たちを快くお城に迎え入れました。いまでは国外でも知れらる美談となっています。
「フンッ、ちゃんとあたしの恩に報いなさいよ、路上で生活したくなかったらね」
シンデレラは、王宮での贅沢三昧と大嫌いな母と姉たちをイビりたおす暮らしに大満足し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
ただ唯一、自分がハナクソ入りの紅茶を飲むはめになっている事をのぞいては。

めでたしめでたし。