小学校低学年のころに読んだ本で、たしか次のような内容の記述があった。
たぶん絵本まがいの本だったと思う。
> 蟻は力持ちだ。
> 蟻が人とおなじ大きさになったら、アゴで数人分を一度にくわえて持ち上げる。
>
> 蚤はすごいジャンプ力がある。
> 蚤が人とおなじ大きさになったら、数十階建てのビルを飛び越える。
わたしは子供心に思った。
そんなヤツらがいたら、人間が戦ったら絶対に勝てるわけがない。
本当に人間が勝てないほど強くなるのなら、数億年のときをかけて昆虫は巨大サイズに進化し、ついには哺乳類を駆逐するはずだ。
しかし現実にはそうはなっていない。
ぜったいに何かがおかしい。
どこかが間違っているはずだ!
そのときはどこが変なのかまではわからなかった。
小学校低学年だとそんなもんだろう。
しかし!
いい歳こいた今ならこのカラクリを説明できそうな気がする。
なので、この積年のインチキ説をここで退治してみたい。
構造力学の心得があるひとならば多分わたしより巧いこと説明してくれると思うので、ここはひとつテキトーにお目こぼしでもしてくだせえ(笑)。
まず1cm×1cm×1cm□の大きさの立方体の角砂糖を用意しよう。
角砂糖の比重はよく知らんのでアレだが、重さは1グラムだったとする。
角砂糖を1個置いた場合、角砂糖1個あたりにかかる力は1グラム、あたりまえか。
角砂糖を8個用意する。
それをつかって2cm×2cm×2cm□の大きさの立方体に組み立てる。
角砂糖は2段積みになっているから、下側の角砂糖1個あたりにかかる力は2グラム。
これくらいだったら平気で作れる。
角砂糖を1兆個用意する。
それをつかって1万cm×1万cm×1万cm□の大きさの立方体に組み立てる。
角砂糖は1万個も段積みになっているから、下側の角砂糖1個あたりにかかる力は1万グラム。
角砂糖1個にノートPC数台分の重さが加わるので、この積み木はもちろん倒壊する。
角砂糖が耐えきれないからだ。
これを小難しく言い直すとこうなる。
動物の身長をn倍にすると、体積と質量はnの3乗倍になる。
しかし底面積(というか断面積というか)はnの2乗倍にしかならない。
そうするとn倍の加重がかかる。
蟻に適用してみよう。
1.5cmの蟻を100倍にするとだいたい人並みのサイズになる。
体重は100万倍。
足の太さ(足の断面積)は1万倍。
足の負担は100倍だ。
さすがに蟻のうえに100倍の重しをのせたら身動きは取れない。
だいたいあんな細い足でどうにかなると思うほうがおかしい。
さて、100倍巨大になった蟻と人類がタイマン勝負したとしよう。
蟻は身動きがとれない。
だから蟻がくたばるまで横でくつろいで待っていればいい。
人類は勝つ!
哺乳類の繁栄は守られたのだ!!
じゃあ、つぎに人類を100分の一にしてみる。
さて、蟻と100分の一に小さくなった人類がタイマン勝負したとしよう。
人類の足の負担は100分の一だ。
体感では体重は100分の一にしか感じない。
蚤のようなジャンプ力を獲得できるはずだ。
そして(同じ意味において)蟻なみのバカ力も発揮できるはずだ。
そうはいっても、その寸法で最適化されている蟻のほうが強いかもしれない。
だが、その脚力をもってして逃げ回ればいいから負けはしない。
ところが!
100分の一になったということは、体積は100万分の一だが表面積は1万分の一だということでもある。
体積における表面積の割合が100倍になったということだ。
ということは、単純計算でいくと、体の表面から100倍の速さで熱が逃げていくことになる。
人類は100分の一になった瞬間に寒さで凍えて身動きが取れない。
だから蟻は人類がくたばるまで横でくつろいで待っていればいい。
人類は負けるのだ!
追伸:
このたびの昆虫のはなしはお子さま向けの説明としていたしかたない面があるのは理解している。
だから本の執筆者の方も「こいつ揚げ足をとりおって!」と怒らないでね(笑)。
たぶん絵本まがいの本だったと思う。
> 蟻は力持ちだ。
> 蟻が人とおなじ大きさになったら、アゴで数人分を一度にくわえて持ち上げる。
>
> 蚤はすごいジャンプ力がある。
> 蚤が人とおなじ大きさになったら、数十階建てのビルを飛び越える。
わたしは子供心に思った。
そんなヤツらがいたら、人間が戦ったら絶対に勝てるわけがない。
本当に人間が勝てないほど強くなるのなら、数億年のときをかけて昆虫は巨大サイズに進化し、ついには哺乳類を駆逐するはずだ。
しかし現実にはそうはなっていない。
ぜったいに何かがおかしい。
どこかが間違っているはずだ!
そのときはどこが変なのかまではわからなかった。
小学校低学年だとそんなもんだろう。
しかし!
いい歳こいた今ならこのカラクリを説明できそうな気がする。
なので、この積年のインチキ説をここで退治してみたい。
構造力学の心得があるひとならば多分わたしより巧いこと説明してくれると思うので、ここはひとつテキトーにお目こぼしでもしてくだせえ(笑)。
まず1cm×1cm×1cm□の大きさの立方体の角砂糖を用意しよう。
角砂糖の比重はよく知らんのでアレだが、重さは1グラムだったとする。
角砂糖を1個置いた場合、角砂糖1個あたりにかかる力は1グラム、あたりまえか。
角砂糖を8個用意する。
それをつかって2cm×2cm×2cm□の大きさの立方体に組み立てる。
角砂糖は2段積みになっているから、下側の角砂糖1個あたりにかかる力は2グラム。
これくらいだったら平気で作れる。
角砂糖を1兆個用意する。
それをつかって1万cm×1万cm×1万cm□の大きさの立方体に組み立てる。
角砂糖は1万個も段積みになっているから、下側の角砂糖1個あたりにかかる力は1万グラム。
角砂糖1個にノートPC数台分の重さが加わるので、この積み木はもちろん倒壊する。
角砂糖が耐えきれないからだ。
これを小難しく言い直すとこうなる。
動物の身長をn倍にすると、体積と質量はnの3乗倍になる。
しかし底面積(というか断面積というか)はnの2乗倍にしかならない。
そうするとn倍の加重がかかる。
蟻に適用してみよう。
1.5cmの蟻を100倍にするとだいたい人並みのサイズになる。
体重は100万倍。
足の太さ(足の断面積)は1万倍。
足の負担は100倍だ。
さすがに蟻のうえに100倍の重しをのせたら身動きは取れない。
だいたいあんな細い足でどうにかなると思うほうがおかしい。
さて、100倍巨大になった蟻と人類がタイマン勝負したとしよう。
蟻は身動きがとれない。
だから蟻がくたばるまで横でくつろいで待っていればいい。
人類は勝つ!
哺乳類の繁栄は守られたのだ!!
じゃあ、つぎに人類を100分の一にしてみる。
さて、蟻と100分の一に小さくなった人類がタイマン勝負したとしよう。
人類の足の負担は100分の一だ。
体感では体重は100分の一にしか感じない。
蚤のようなジャンプ力を獲得できるはずだ。
そして(同じ意味において)蟻なみのバカ力も発揮できるはずだ。
そうはいっても、その寸法で最適化されている蟻のほうが強いかもしれない。
だが、その脚力をもってして逃げ回ればいいから負けはしない。
ところが!
100分の一になったということは、体積は100万分の一だが表面積は1万分の一だということでもある。
体積における表面積の割合が100倍になったということだ。
ということは、単純計算でいくと、体の表面から100倍の速さで熱が逃げていくことになる。
人類は100分の一になった瞬間に寒さで凍えて身動きが取れない。
だから蟻は人類がくたばるまで横でくつろいで待っていればいい。
人類は負けるのだ!
追伸:
このたびの昆虫のはなしはお子さま向けの説明としていたしかたない面があるのは理解している。
だから本の執筆者の方も「こいつ揚げ足をとりおって!」と怒らないでね(笑)。