森でも多くの生物が生きている。
今日は、トチノキの話をしよう。
***
古木の伐採
琵琶湖の西に位置する高島市朽木では、2008年の秋ころからトチノキが買い付けされ始め、2012年までには60本ものトチノキが伐採さ れヘリコプターによって搬出された。
これらの多くは、樹齢が300年以上の巨木で あった。
なぜこのような古い樹木がこれまで選択的に残ってきたのだろうか。
朽木において森林の保全活動を行っている青木繁は次のように指摘している。
「樹齢数百年を経た安曇川源流に広がるトチノキ巨木林は、かけがえの ない価値と大きな存在感を持ち続けながら、現在まで生育しつづけてきた。
常食であり、また、ある時は非常食として大きな存在を保ち続けて きたトチノキも、時代とともに人々の関心も薄らいでしまった。
そんな中、トチノキ伐採は起こった。」
早速、地元住民や森林所有者、研究者、行政者によって森林地域の保全が開始され、巨木と水源の森を守る会や日本熊森協会などの諸団体が連携 して、売却されたトチノキの買戻しを行った。
ところが、2014年には、琵琶湖の東北部に位置する木 之本において、あらたにトチノキの伐採計画が起こった。
行政にとっても盲点としていた場所だった。
このことは、森林にしても琵琶湖にして も、常に関心をもって接しなければ、急激に環境が破壊されることを如実に示している。
こうした反省から、認定NPO法人びわ湖トラストは、親子を招待して湖上学習貝やトチノキ観察会などを行ってい る。
こうした市民レベルでの地道な取り組みが、環境保全に関する世代間の対話を促進し、未来において豊かな社会基盤を創生することを忘れ てはならない。
***
こうして、木之本のトチノキ伐採を阻止する取り組みも、大詰めを迎えた。
森の木の多くは、いずれかは切られる運命にある。
しかし、長年、森の主のように保護されてきた古木の伐採は、慎重にすべきだろう。
日本の民は、そうした古来からの知恵の中で生きてきた。
戦争中に禿山となった森の中でも生き抜いてきた、数百年もの古木の伐採には、それなりの理由が必要だ。
単なる人間のエゴだけで壊してはいけない。