びわ湖トラストの理事長である山田能裕さんが、天台宗の擬講(ぎこう)に選ばれた。
御年84歳の高齢だが、とてもそうは見えない。
沖島清掃の時に船から軽やかに下船する姿は、60歳といってもわからないだろう。
めでたいことだ。
だが、そもそも擬講って何なのだ。
「平安時代以降、三会(さんえ)の講師に任じられる僧。講師に擬された者の意。」
三会って?
「諸仏が衆生を救うために法を説く三大説法会のこと。「さんね」とも読む。」
講師に擬される、というのが天台宗らしい表現だ。
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同宗の高僧は、毎年8月の戸津説法を終えて「望擬講(ぼうぎこう)」の階級となり、その中から選ばれた一人が「擬講」に上がる。
さらに、学識と信仰を試す別請豎義を経て「已講(いこう)」、「探題(たんだい)」へと昇任する仕組みとなっている。
探題は天台座主をはじめ複数いる。」
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つまり、擬講とは天台宗の中で第3位の経歴法階とされる。
教学上の最高階級「探題」に昇任するためには、4年に1度の口頭試問「別請豎義(べっしょうりゅうぎ)」をうけなければならない。
延暦寺の薄暗い堂内で問答が繰り返さる。
探題の一人が論題を与え、已講が「門者(もんじゃ)」として問いを発し、擬講が「豎者(りっしゃ)」として答える。
こうして順送りに位階があがるしくみだ。
1000年以上続く古式でもある。
いずれ山田理事長も位階が上がり、天台座主になられることだろう。
そうなると、びわ湖トラストの理事長は続けられない。
嬉しいやら、悲しいやら、複雑な気持ちだ。
ただ、こうやって山田能裕師に出会えたことによって、天台宗という仏教の仕組みを少し学ぶことは楽しいことだ。
これからも元気で活躍してほしい。