「一路」という本が面白い。
浅田次郎の作である。
内容は読んでもらえればわかる。
浅田らしい話の展開が、なんとも言えない。
「横着は不忠にござる」
と一路が和尚に言う。
とたんに和尚は、長い問答をおえたようにニッコリと笑った。
「ご名答だ」
「忠義」が「忠」の狭義であり、
「忠」の正しい意味は、中(うち)なる心、すなわち「真心」であり「真実」なのである。
この本の中に一貫して流れる主張は
横着は不忠であり、間違っていると言っている。
学者風に言えば、「怠惰は真実を損なう」のである。
徳川300年の末期にあたり、世の中には横着が闊歩し、なんでも適当にしている。
そこに「真実」はないと言う。
翻って、今の世の中を見るに、確かに「横着」がはびこっている。
正しいことを正しいと言えない。
組織を守るために、平気で嘘をつく。
やりもしないことを、やったと言う。
出来もしないことを、できると言う。
ひたむきに努力することを、僕たちは忘れているのかもしれない。
この本、一読されることをお薦めする。