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ヤマザクラ・3~尾根緑道

 50年ほど昔、私の大学入試の際には『合格電報』なるものが存在した。本人の代わりに電報屋の学生アルバイトが合格掲示板を確認し、合格者には『サクラサク』、不合格者には『サクラチル』の電報を打っていた。何度も上京するのが困難な地方からの受験者のために昭和30年代に早稲田大学で始まったとされている。私は自分で合格発表を見に行ったが、賑やかしでこの電報を頼み無事『サクラサク』を受け取った記憶がある。
 日本人は花の種類によってその最後の表現を変えており、サクラは散る、ウメはこぼれる、ツバキは落ちる、ボタンは崩れる、アサガオは萎む、菊は舞う、と言い方が異なる。秋の七草のハギもウメと同じくこぼれると表現するようだ。日本人の感性は素晴らしい。
 写真は尾根緑道に生育している「ヤマザクラ(山桜)」。バラ科サクラ属の落葉高木で日本固有種。江戸時代後期に拡がったソメイヨシノの前はこのヤマザクラが花見の対象で奈良県吉野山の桜はほとんどがこのヤマザクラになる。ヤマザクラ以前の日本人の花見はウメだった。
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オクタマスミレ・3~開花

 スミレ科スミレ属の「オクタマスミレ(奥多摩菫)」。エイザンスミレヒナスミレの交雑種で花色は薄紅色になり葉はやや太めに裂ける。牧野富太郎博士が奥多摩で発見したので名付けられているが、奥多摩だけではなくエイザンスミレとヒナスミレが多く咲く場所に出現するようだ。高尾山では数年前に登山道脇で一株見つかり登山客の人気者になっていたが、一昨年の開花後に盗掘されて消えてしまった。その場所には今は『盗掘厳禁』のプレートが置かれているが何とも虚しい。
 写真はエイザンスミレのような花だがその葉は深く切れ込んでいない。去年も同じようなタイプの花を見つけ当地の専門家に確認したところ『交雑したものが更に交雑し直したかも知れないがオクタマスミレと判断しても良いだろう』とのコメントを頂いた。写真もオクタマスミレとしておこう。
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アブラチャン・8~高尾山1号路

 高尾山“1号路”で見られる「アブラチャン(油瀝青)」。クスノキ科クロモジ属の落葉小高木で雌雄異株。写真は雌花序でひとつの花の直径は5~6ミリ。雄蕊は退化して小さく雌蕊の膨らんだ子房が見える。果実は秋に熟すのでその頃また観察しよう。アブラチャンの果実には油分が多くこれを絞って灯用としていた。“チャン(chian turpentine)”とは天然のアスファルト、タール、ピッチなど、黒色の粘着性のある物質を意味する“瀝青(れきせい)”のこと。
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