現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

戌井昭人「鳩居野郎」すっぽん心中所収

2017-08-23 21:17:18 | 参考文献
 これも日常に潜む狂気を描いた作品です。
 ある事情でビルの屋上の小屋に住むことになった鳩嫌いの男と、もともとそこにいた鳩たちとの攻防戦を通して、ふとしたはずみで平凡な人間が常軌を逸してしまう姿を、ユーモアも交えて綴っています。
 狂気とユーモアの同居というのは「ほら吹き男爵」などの昔から児童文学の得意とする分野ですが、どうも最近の日本の児童文学ではその伝統が廃れてしまっているようです。

すっぽん心中
クリエーター情報なし
新潮社
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松本清張「断碑」

2017-08-23 21:14:00 | 参考文献
 在野の天才的な考古学者の、悲劇的な短い生涯を描いています。
 考古学にかける驚異的な情熱と才能を持ちながら、学歴がないことへのコンプレックスと狷介な性格のために、まわり中に敵を作り、孤独(妻が唯一の理解者でパトロンでもありましたが、彼から結核をうつされて先に亡くなります)なまま生涯を閉じます。
 大学や学会が閉鎖的なことは、戦前は今の比ではないでしょうから、彼のような生き方が周囲に認められなかったのは無理もなかったでしょう。
 大学や学会(特に文系)は、民間の企業などと比べると、今でも旧弊が残っている部分があります。
 理系の学問と比べて成果が見えにくい点はあると思いますが、研究成果の発信量が少なくて、講座が縮小されたり予算が削られてしまう場合は、やむを得ないかなとも感じます。
 中には、ろくに論文を書かなくなっている大学教授も、まだいるようです。
 今は論文もデータベース化されているので、それをチェックすれば、児童文学の世界でも、誰がまじめに研究を続けているかはすぐに分かります。

松本清張全集 (35) 或る「小倉日記」伝 短篇 (1)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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