2012年上期の芥川賞受賞作です。
過去のぜいたくな暮らしを忘れられない母と弟から理不尽な目にあわされている主人公は、脳性の障害を持つ夫と、家族の思い出のホテルを訪れます。
かつては豪華なリゾートホテルだったのが、今では二月の平日ならば一泊五千円で泊まれる区の保養所になっています。
古びたホテルと重ね合わせるようにして、没落した家族の思い出が語られます。
最後に主人公は、理不尽な過去と決別して、障害者ながら生命力に富んだ夫と生きていく決意を再確認します。
端正な文章、的確な表現力、丁寧な主人公の心理描写など、どれをとっても一級品です。
しかし、残念ながら、この作品に新しい文学への挑戦は感じられません。
精緻に作り上げられた佳品といった趣です。
芥川賞受賞を待っていたかのように、この短編に他のもっと短い作品をくっつけた単行本が書店に平積みにされ、雑誌売り場には表紙に芥川賞受賞作全文掲載(それほど短いということです)と書かれた文藝春秋が大量に積み上げられています。
芥川賞発表時のおなじみの光景ですが、地味な純文学作家への経済的な救済だと思えば、出版社の儲け主義にも少し目をつぶりたくなります。
過去のぜいたくな暮らしを忘れられない母と弟から理不尽な目にあわされている主人公は、脳性の障害を持つ夫と、家族の思い出のホテルを訪れます。
かつては豪華なリゾートホテルだったのが、今では二月の平日ならば一泊五千円で泊まれる区の保養所になっています。
古びたホテルと重ね合わせるようにして、没落した家族の思い出が語られます。
最後に主人公は、理不尽な過去と決別して、障害者ながら生命力に富んだ夫と生きていく決意を再確認します。
端正な文章、的確な表現力、丁寧な主人公の心理描写など、どれをとっても一級品です。
しかし、残念ながら、この作品に新しい文学への挑戦は感じられません。
精緻に作り上げられた佳品といった趣です。
芥川賞受賞を待っていたかのように、この短編に他のもっと短い作品をくっつけた単行本が書店に平積みにされ、雑誌売り場には表紙に芥川賞受賞作全文掲載(それほど短いということです)と書かれた文藝春秋が大量に積み上げられています。
芥川賞発表時のおなじみの光景ですが、地味な純文学作家への経済的な救済だと思えば、出版社の儲け主義にも少し目をつぶりたくなります。
冥土めぐり | |
クリエーター情報なし | |
河出書房新社 |