小学校低学年の主人公の女の子は、隣のクラスに転校してきた不思議な女の子と友だちになります。
話したこともないのに、超能力で、主人公の名前も、住んでいる団地の号棟も知っているのです。
女の子は三回も引越ししていて、仲良くなれる子はすぐわかるので、友だちになろうというのです。
学校からの帰り道、主人公は女の子と寄り道して、二人のお気に入りの場所へ行きます。
主人公のお気に入りは、新しいアパートを建てている工事現場です。
女の子は、そこで紫水晶のような石のかけらを二つ見つけて、「大きい方」を主人公にくれます。
女の子のお気に入りの場所は、佐藤さんの家です(といっても、知り合いではありません)。
そこで、女の子は、子猫たちと親猫を、主人公に紹介してくれます。
次の朝、迎えに来てくれた女の子は、水晶のおかげで見られた夢(草原でライオンやきりんと仲良くなります)を教えてくれます。
主人公は、休み時間に、校庭で、女の子がクラスの子たちに問い詰められているところに出くわします。
女の子が嘘をついてばかりいるというのです。
主人公は、女の子をかばおうとしますが、うまく言えません。
そして、だんだん女の子の言っていたことも信じられなくなってきます。
その夜、主人公はおねえちゃんと喧嘩した時に、かんじんなことを言うことの大切さと、女の子と一緒だった時の自分の気持ちは嘘ではなかったことに気づき、女の子のことを信じようと思います。
その晩、水晶のおかげか、主人公は、海の中を魚になってぐいぐい泳ぐ夢をみます。
翌朝、女の子の家へ迎えに行って、夢の話をします。
すると、女の子もその夢の中にいて、サンゴ礁の中から、「ぴらぴらあ」と泳ぐ主人公を見ていたというのです。
そして、今度は一緒に「ぴらぴらあ」と泳ぐことを約束して、二人は両手をぴらぴらさせながら学校へ向かいます。
児童文学研究者の宮川健郎は、「児童文学 新しい潮流」(その記事を参照してください)において、「「ぴらぴら」は、子どもたちの「元気」や「自由」を象徴しているように思える。」と書いていますが、全く同感です。
低学年の女の子たちが仲良くなっていく様子を、上記のような魅力的なエピソードを連発しながら、短い紙数の中で見事にまとめあげています。
初めは、一人で見た夢を、次は二人で見て、今度は一緒に泳ごうという変化が、二人の仲良し度合の深まりを象徴しています。
文章も簡潔でリズムがあって、無駄な描写を廃した児童文学(特に幼年文学)の王道を行く、「アクション」と「ダイアローグ」でスピーディなストーリー展開を描いていて、幼い読者でも作品世界に引き込まれるでしょう。
作者とコンビを組むことが多い、佐藤真紀子の簡潔で力強い挿絵が、作品世界を支えています。