![]() | サキ短編集 (新潮文庫) |
中村 能三 | |
新潮社 |
裕福な独身男性が、周囲の期待する家庭的な女性ではなく、職業婦人(死語ですね。何しろ百年以上も前に書かれた作品ですので。彼女の仕事は今の言葉で言えば、帽子デザイナーです)と結婚します。
しかし、結婚すると、彼女はさっさと仕事を辞めてしまい、彼の嫌いな世話焼き女房になってしまいます。
もちろんこの作品は古いジェンダー観に基づいて書かれているのですが、日本においても女性の(あるいは社会が要求する)職業観は二転三転しています。
高度成長時代は、男性が会社で働いて女性が家庭を支える方が効率が良かったので、それが一般化しました(それ以前は、庶民では男女の区別なく働いていました)。
その後、家庭の電化と社会の労働力不足で、女性の社会進出が求められるようになりました。
それが、低成長時代になると労働力が余って就職氷河期をむかえ、特に女性の就職は困難になり、それに疲れた若い女性の専業主婦志向が高まります。
しかし、高度成長時代と違って、豊かな生活に慣れていたために、結婚相手への経済的条件が高過ぎて(年収六百万円以上で、これをクリアできる若い男性は当時4パーセントしかいませんでした)、非婚化と少子化に拍車をかけました。
その後、世界景気が持ち直したのと団塊の世代が退職したために人手不足になって、また女性の社会進出が声だかに叫ばれているのは、ご存じのとおりです。