宮沢賢治学会イーハトーブセンター冬季セミナーin東京「宮沢賢治と映画」で行われた講演です。
宮沢賢治の作品が、日本映画にどのように影響を与えているかについてまとめています。
アダプテーション(作品の映画化)やそれへの言及は多いが、それらはあまり生産的ではないのではないだろうかと、講演者は疑義を示しています。
むしろ賢治作品をどのように受け止めて、自分の作品に生かしているかの方が重要だし、それへの言及は少ないとのことです。
まず、海外の賢治と同時代の映画で、賢治の作品と共通するものとして、1932年の「吸血鬼」や「上海特急」をあげて、それらは互いに影響を与えたのではなく、同時代の空気や先行するほかの作品からそれぞれが同じような影響を受けたのではないかと推定しています。
次に、賢治の作品の影響を受けた映画として、1952年の「リンゴ園の少女」、1968年の「太陽の王子ホルスの冒険」、2001年の「千と千尋の神隠し」などをあげ、その他にも、賢治の作品の一節を引用したり、賢治の作品を朗読する作品を紹介してくれました。
この講演でも、それらのシーンを実際に上映したので、非常に説得力がありました。
これらの賢治の作品に影響を受けた映画には、死んだ者の遺品にこだわったり懐かしむといったことが、共通のモチーフとして現れることが多いとのことでした。
賢治に限らず有名な文学を映画化することには、表現手段の違いによる困難性が存在していて、むしろこれらのように一部だけを活用する方がうまくいくのではないだろうかと指摘していました。
それにしても、多彩な作品の細部まで網羅してチェックしている講演者の探求姿勢には、脱帽させられました。
宮沢賢治学会の場合、対象が賢治に限られているので、このようなマニアックな発表が多く、私のような賢治ファンにはたまりません。
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