1987年公開の西ドイツ映画です。
日本ではミニシアターで公開され、当時のミニシアター・ブームの代表作の一つです。
アメリカの砂漠地帯で、夫とけんか別れして車を降りた中年の太ったドイツ女性が、さびれたガソリンスタンドとモーテルを併設したカフェにたどり着きます。
そこの風変わりな住人たち(グータラな夫を家からたたき出した女主人、いつもピアノを弾いている息子と彼の赤ん坊、遊び回っている娘、なまけものの店員、そばのトレーラーで暮らすヒッピー風の老画家(往年の悪役スター、ジャック・パランスが好演しています)、モーテルで暮らす女入れ墨師など)と交流するにつれて、主人公は失った人間性を回復していきます。
その一方で、主人公の大きな童女とも呼ぶべき容姿と振る舞い(マリアンネ・ゼーゲブレヒトが体当たりの演技を見せています)が、住人たちの人間性も回復させていきます(イライラ周囲に当たり散らしていた女主人は落ち着きを取り戻して家庭(夫も戻ってきます)も商売も軌道にのせます。息子はピアノの腕前をみんなに認められます。娘は落ち着きを取り戻して勉強も手伝いもするようになります。老画家は創作意欲をかき立たせられると同時に主人公に結婚を申し込みます)。
主人公が、夫の荷物(別れる時にスーツケースを間違えたようです)の中にあった手品セットを独習して、みんなに披露し、それが評判をよんで、カフェも繁盛します。
全体に大人向けのファンタジーのような趣があり、典型的なハッピーエンドなので、幸せな余韻に浸れます。
ただし、うまくいき過ぎの感は拭えないので、「みんなが仲良しすぎる」といって途中でモーテルを去った女入れ墨師のように、作品についていけなくなる人もいるかもしれません。