1962年に出版された幼年童話の古典です。
私の読んだ本は1998年で93刷ですから、今ではゆうに100刷を超えているであろうロングセラーです。
以下の七つの短編からできています。
「ちゅーりっぷほいくえん」約束が七十もあって、主人公のしげるはいつも約束を守らないので、物置に入れられてしまいます。
「くじらとり」積み木で作った船で海にのりだして、くじらを連れて帰ります。
「ちこちゃん」しげるは、なんでもちこちゃんのまねをしてしまい、大変な目にあいます。
「やまのこぐちゃん」山から来た小熊が保育園に入り、みんなと仲良くします。
「おおかみ」保育園をさぼったしげるは、野原でオオカミに会いますが、あまりに汚かったので食べられずに済みました。
「山のぼり」約束を守らずに果物を食べすぎたしげるは、鬼の「くいしんぼう」と友だちになりました。
「いやいやえん」しげるは、ちゅーりっぷほいくえんの代わりに、なんでもいやだと言えばやらなくて済む「いやいやえん」へ行きます。
この作品の一番の成功は、作り物でない生身の幼児であるしげるを創造したことでしょう。
また、大人よりも意識と無意識が不分明な幼児の特質を生かして、現実と空想の世界が入り混じった魅力ある作品世界を作り出しています。
ただし、この作品のおもしろさは、しげるが幼児らしく約束を守らなかったりいたずらをするところなのですが、どの短編でも作者は教育的なおちをつけてしまっています。
この本を使って、保育者や親などの大人たちは、幼児たちのしつけをしようとするかもしれません。
しかし、子どもたちが喜んでいるのはそういった教訓的なところではなく、しげるのいたずらやわがままに素直に共感しているのでしょう。
おそらくそれは作者たちの意図を超えたところであり、そのためにベストセラーになったのであればやや皮肉な感じもします。
ただ、作品に出てくる体罰(物置に閉じ込めたり、無理やり女の子の服を着させます)は今の時代にそぐわないので、そろそろ賞味期限が来ているのかもしれません。
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いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ) |
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