16のメッセージと32のカラーイラスト(妻の大江ゆかりによるもの)からなる、子どもたちの疑問に答えるために書かれたエッセイ集です。
特に、興味深い疑問については、個別に記事を書きましたので、それを参照してください。
子どもといっても、中には高校生ぐらいの若い世代でないと分からないような内容になったと著者は反省し、宮沢賢治はすごいと言っていますが、賢治も「注文の多い料理店」の新刊案内(その記事を参照してください)の中で、「少年少女期の終りごろから、アドレッセンス中葉(思春期、青年期)に対する一つの文学としての形式」と述べていますから、対象はほぼ同じで、正しく児童文学のひとつと考えていいと思われます。
他の記事にも書きましたが、著者は典型的な教養主義時代の地方出身の優等生なので、その子ども時代の過ごし方や勉強方法は、この文章が書かれた2000年頃でも、大半の子どもたちにとっては、理解したり実践したりすることは難しかったかもしれません。
しかし、ノーベル文学賞も受賞した著者が、子どもたちに真摯に向き合い、より理解しやすくなるように平明な文体まで作り上げた姿勢には感銘を受けました。