2019年公開のイスラエル映画です。
1990年に、崩壊間近のソ連からイスラエルに移住した初老の声優夫婦が、新しい生活に悪戦苦闘しながら順応していく姿をユーモラスに描いています。
当時は、大勢のユダヤ人がソ連圏からイスラエルに移住していたようで、ロシア語を使ったコミュニティが成立していたようです。
二人がありついた、そんな環境ならではの仕事が、興味深かったです。
妻の仕事は、そうしたロシア人相手のテレフォン・セックスの相手役です。
彼女は62才なのですが、声優ならではの声色を自在に使い分けられる能力を発揮して、22才の娘から人妻まで、相手の要望に合わせて演じ分けて、人気を博します。
夫はやっとありついたビラ配りの仕事にねをあげて、映画の違法ダビングの犯罪に荷担します。
映画館で、上映されている映像をこっそり撮影して、ロシア語に吹き替えて、レンタルします。
最後には、それぞれの仕事が破綻するのですが、それをきっかけに、仲たがいして別居していた二人は再び絆を確認します。
個人的に興味深かったのは、二人(おそらく監督も)がイタリアの映画監督のフェデリコ・フェリーニ(関連する記事を参照してください)を敬愛していて、彼の作品に対するオマージュが語られていたことです。
特に、妻の方は、フェリーニ作品でジュリエッタ・マシーナ(「道」を始めとした彼の主要作品の主演女優で、彼の妻でもあります)の吹き替えを担当していたという設定にはしびれました。
たしかに、彼女は風貌も声も、ジュリエッタ・マシーナを彷彿とさせるところがあります。
私の最も好きな女優に思いがけず再会できたようで、感動しました。