大きな力を出したいときに、身体を動かすための最も大切な原則です。
大きな筋肉とは、腹筋・腰背部の筋肉などの体幹のことです。
大きな筋肉そのものの動きは小さくても、指先や足先に伝わるときには大きな動きとなります。
体幹をうまく使えている場合、身体の中心軸はぶれることがありません。
腕や足だけではそれなりの力しかでませんが、体幹から指先・足先へと力がうまく伝わっていれば大きな力を発揮することができます。
また、肩や肘、膝などの関節部分の故障も少なくなります。
大きな筋肉に力を入れる方法やそれを指先に伝える方法を最初に教えると、その後のフォームの改善もスムーズにいきます。
それができないのに細かな指導をしても、結局のところ時間だけがかかり最初からやり直すということがよくありました。
体幹をうまく使うことを実感するのに最も自然な動きは、ドルフィンキックであると考えています。
もともと陸上で生活していた哺乳類であるイルカやクジラといった生き物の動きがその例として挙げられるでしょう。
そのため、体感を使う練習としてドルフィンキックからはじめることが通例となっています。
次にその体幹の力を指先に伝えることが必要となります。
大きな力を伝える指先というのは、小指や薬指のことです。
競泳で小指や薬指の大切さを指導するコーチがどれほどいるかわかりませんが、このことはすべての運動にあてはまることであると考えています。
親指や人差し指というのは細かな動きをするための働きが中心であって、大きな力を発揮することには向いていません。
体幹でも特に腰の力が背中を通して小指や薬指に伝われば、大きく力強い自然な動きとなって、その人本来の良さが発揮されます。
今まで指導してきた経験から言うと、もともとその動きができている人から、いくら教えてもなかなかできない人まで様々です。
なぜ人によってこれほどの差があるのかは今もって不明ですが、筋力の強さとはまた別のようです。
大きな筋肉を使うことができれば、力みがなく、自然と美しいフォームになります。
腹筋や背筋など体幹をしっかり鍛える理由もここにあります。
競泳は道具を使用しないので体幹から指先への動きは意識しやすいものですが、おそらく道具を使用するスポーツも同様ではないでしょうか。
「大きな筋肉を使う」という原則は、人間本来の自然な動きと一致するものであると考えています。
竹村知洋