この教えは、とかく精神論に傾きがちな日本人にあてはまるものであると思います。
精神的な強さが生かされるのは、あくまでも合理的なトレーニングを行っている場合です。
科学的な知識をもとにトレーニングやコンディショニングを組み立てることで、段階的に運動能力を向上させることができます。
科学的な知識とは、解剖学や生理学、運動科学、栄養学などです。
人体の仕組みを理解し、練習メニューを作成することが第一です。
エネルギーの供給系に基づき、各選手の大会種目にあわせて練習量や強度を決定しています。
解剖学はウェイトトレーニングやストレッチングの指導にとって不可欠です。
どの筋肉をどのように鍛えるかという理解に役立ちます。
栄養学は食事やサプリメントの重要性を教えてくれます。
食事や補食をしっかり摂ることは当然として、それ以外の栄養をサプリメントで補うことはスポーツ選手として必須のことです。
豊山水泳部では20年以上前から栄養面には力を入れています。
どのようなサプリメントをいつ摂ればよいのか、ということは血液・尿検査で明らかになります。
その数値の読み方は栄養学的な知識がなければ読むことはできません。
人体に関する科学的な知識を実践していくことで経験を積み、応用ができるようになります。
運動中に水を飲むと疲労が増すとか、ウェイトトレーニングをやると背が伸びないなどの迷信に対しても明確な説明をすることができます。
注意しなければならないことは、科学というのは常に進歩・発展しており、現在認められていることでも数年後にも同様であるとは限らないということです。
例えば、私たちが選手であった20年前には練習やレース前には静的ストレッチングを入念に行っておりました。
現在は運動前、動的ストレッチングを行うことが常識とされています。
良いことであると思われていたことが実は…、ということがよくあります。
また、理論上ではよいとされることであっても現場では取り入れにくいこともあります。
特に高校生は学業との両立を図ることや学校行事との関係などもあり、すべてを水泳だけのことで考えることはできません。
大きな大会の前に身体を休めたくても、6時間の授業があったり、運動会が開催されるなどがそれにあたります。
しかし、科学的な知識を身につけてそれをもとに現場に生かしていくことは、自信を持って指導をすることにつながります。
そのうえで経験を積み重ね、応用することでより知識を現場に生かすことができるのです。
竹村知洋