大きな大会の前には調整を行います。
強化期が終わり、疲労を回復していきながら調子を上げていく時期です。
強化練習が万全であっても調整がうまくいかなければ大会で思うような結果を残すことはできません。
調整の練習というのは繊細さが要求されます。
一日一日の調子を見ながら、大会に出場するその日までの状態を計算し、最善の状態に仕上げていきます。
調整期というのは選手だけではなく、コーチも不安になりやすいものです。
その不安は休息を取りすぎているのではないかというものが多く、どうしても練習をしてその不安を取り除こうとしてしまいます。
しかし、調整の練習というのは大胆さが必要であると考えています。
ここでいう大胆さとは、休みをとることを恐れることなく、しっかり休息をとって身体を回復させることです。
そして練習内容も中途半端にするのではなく、思い切ったリカバリーを入れながら強弱のあるメニューにするようにしています。
また、練習タイムよりも身体の感覚やフォームを大切にすることを強調しています。
ただし、調子の合わせ方はやはり個人差があって、休みを十分にとったほうが良い選手もいれば少しでも泳いでいたほうが調子の上がる選手もいます。
50m・100mを専門とする選手でもそれほど休みを必要としない選手もいれば、400m・1500mを専門とする選手でも休息を十分にとったほうが良いという選手もいます。
その見極めには選手の自覚とコーチの経験が生かされます。
もちろん大胆な調整ができるのは、その前の強化期間に十分な練習ができている場合です。
それができていなければ大胆な調整は不可能です。
強化練習が充実しており、調整が思うようにできれば大幅にベストタイムを更新できる可能性があります。
強化練習にしても調整にしても中途半端にすることが最もよくないパターンです。
自分が目標としていた試合以外でベストタイムを更新し、肝心な試合で失敗しているという場合、強化練習か調整で中途半端になっている可能性があります。
大胆な調整をするというのも度胸がいるものです。
その度胸は十分な強化練習ができたという自信から生まれてきます。
度胸をもって大胆な調整ができる強化練習を積み重ね、大幅なベストタイムの更新をすることが毎年の目標となります。
竹村知洋