小さなことから大きなことまで様々な問題が発生しますが、大切なことはできるだけ早い段階で問題に対応するということです。
問題というのはたいてい、そのまま放置していて改善することはなく、はじめは小さかった問題もいつの間にか大きくなっているものです。
そのため、まず問題点を小さなうちから見つけられるようによく観察することが必要となります。
選手にも何か問題があればできるだけすぐに申し出るように伝えています。
身体の故障などはその一例で、少しの痛みの段階で早めに対応することでその後の練習に影響を与えずにすみます。
また精神的な面に関しても、選手の表情などから少しでも様子がおかしい場合は、なるべく早めに対応するように言われたことを覚えています。
これまでも仕事が重なっていたり、選手の表情の変化を見逃しているうちに改善が難しくなってしまうという反省点が多くありました。
今後も問題点はできるだけ小さなうちから即座に対応していきたいと考えています。
ただし最近になって特に強く感じていることなのですが、問題点をすべて即座に解決することが本当にその人のためになるかどうか、ということです。
それを感じている理由は、あまりにも問題を自分で解決する力がないように思えるからです。
問題を抱えたまま受け身の姿勢で待っているような様子も感じられます。
強い人というのは、問題点を自ら見出し、改善する力を持っているはずです。
それこそが「生きる力」ともいえます。
確かにフォームなどは第三者から確認してもらう必要はあります。
しかし、何から何まで少しの問題のうちから周囲の人がすべて解決して育った場合、その人は本当に生きる力の強い人になるのだろうか、という疑問を抱いています。
周囲の人が問題をすべて解決しているため、自分自身のことがよくわかっていないという状況も発生しています。
イメージでいうと、ハウス栽培の温室で栄養を与えられながら管理されて、大きく育っているような感じを受けます。
そのような恵まれた環境で育った植物の場合、おそらく風や雨を遮るものがなくなればたちまち枯れてしまうでしょう。
つまり、自分で根っこを張り巡らせて栄養を吸収し、花を開こうという生命力がないわけです。
人間も同様で、厳しい環境の中で育たなければ強い人間にはなれません。
本当に強い人間というのは、問題を自ら解決し、一人でも生きていける力を持つ人であると思います。
競泳でいうと、コーチがいなくても自分で練習し、強くなれる選手です。
最近はその点を意識し、問題を指摘した上で、自分ではどう思うかということを問うようにしています。
どうすればわからないという場合にも、まずは自分で考えて改善することを促しています。
大学や社会人で選手として活躍したいと考える選手であれば、自ら考えて行動できなければ強くはなれないからです。
「問題には即座に対応する」と言う姿勢は今後も変わりありませんが、対応の仕方を考える時期に来ていることを感じています。
竹村知洋