いま、マイルス・デイヴィス クインテット(注。第2期の黄金時代、とか言われる方の)を聴いている。
ウイーンの事を書こう、と思っていたんだけど、ちょっと興味が逸れてしまったので、またの機会に書くこととして。
けっこう長い間マイルスを聴いてきたけど(ついこの間までは「マイルストーン」という、こちらは第一黄金期のほうのクインテットを、さんざん聞き直していたんだけど)ハービー・ハンコック達の入った、この第2期のものは、いろいろアルバムを網羅して聴いてみても、あんまりじ~っくり味わってきいたことは、実はなかった。
なぜって、テナーのウエイン.ショーターが加わってからのこのクインテットは、もっとめちゃくちゃにエキセントリックで、鋭利で、ハードで、マイルスもこの年で、よくここまでスタイルを変えてハマれるよな~、と心底感心するのだけど、やっぱりちょっと気負っている感じもして、「うお~~!!」という感じで聴いていてもだんだん疲れてきてしまう。
でも、このたぶん、彼らが出会った初期の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、なんかおいしいもんを食べている時のように、幸せなふっくらした感じがある。
まず、マイルスの最初のいちフレーズから、「そうだよ!音楽はそうじゃなくちゃ」としみじみ感じる。
キース・ジャレットが「だれでも楽器を始めたときは感動的な音をだせる。しかし楽器を極めたのち、その感動的な音をまだ出せるのはマイルスしかいない」という趣旨のことを言っていたと思うんだけど、まさしくそうですね。
多分彼の自伝によるとこの時期はあまり練習してなかった時期だったと思うんだけど、そういうのさえが音の魅力になるのがすごいよね。ほんと、練習だけが音楽ではないのです。音楽とは人生なのだ。
若きハービー・ハンコックのふんわりしてて、遊び心に満ちて、ゆるいアーチを描くバッキングに(いっぱい音をひいてても、この人は構築感はやっぱり天才的だね)トニー・ウィリアムスの細かく振動するリズムが濃密なクリームのようにまとわりつき、ロン・カーターの、ポール・チェンバースの時代とは打って変わった新鮮でフルーティーなベースの動きが隠し味になって、
う~ん!これはまるで、上質のロールケーキだ!!しかもそのロールケーキと一緒に上質の豆を丹念に煎ったコーヒーを飲んでいるように薫りたかいぞ。
(どんな例えや!けどもちろん、すこし苦みの利いたコーヒーは、マイルスのソロである。)
ちなみにジョージ・コールマンのアルトが時たま古くさいフレーズをやって、バックが一致団結して、あのさ~、イマっぽくやろうや!って意気込むんだけど、やっぱり不毛になってるあたりは、愛嬌である。
そして、もっと昔にさかのぼり、20代のマイルス奏でる「マイルストーン」のほう。
このフレッシュ・オレンジジュースのように新鮮で、溌剌としたカラーは、やっぱりフィリー・ジョー・ジョーンズのはじける粋なドラム(粋なリズム、というと私にはなぜかこの人が思い浮かぶ)と、レッド・ガーランドのおきゃんな?これまた粋な透明感あふれるピアノのせいじゃないかと思う。
マイルスもパキッしゃきっとした演奏してるし、(これは、すごい練習してるよねきっと)コルトレーンでさえ、あの独特のクサミがなくさわやかだし、もちろんキャノンボールはいつもどおりパキパキ、つやつや、ぐいぐいと吹きまくる。
これがそのちょっと後の「'58 マイルス」や「カインド・オブ・ブルー」あたり、ジミー・コブのドラムとビル・エヴァンスのピアノになると、ソロイスト陣がおなじでも、なんだかもっと格調高く、水彩画的な色あいになるんだから、面白い。この辺の変化がマイルスを聴く醍醐味である、と思う。
もちろんマイルスは自身がジャズ史のようなひとで、あまりに沢山のすごいアルバムがあるけど、もし興味をもったひとはこの辺からどんどん聴いてみてください。
ちなみにマイルスの自叙伝ですが、これは最初友人の作曲家、Tさんが貸してくれて、何度もお借りして、あまり読みすぎてぼろぼろにしてしまったので、とうとう根負けしたTさんが私にプレゼントしてくれました。そのぐらい好きな本なので、その事についてはまた別の機会に書きます。
昨年より友人Mさんのブログ「ボチクラ」に会長のペンネームで掲載させていただいていたコラム、(音楽や、その他の話題もあり。)読みたい方はコチラへどうぞ!!
「ボチコラム」
http://blog.goo.ne.jp/kedamayu/c/b1a92148acfd575de66a5fa80e5b3c02
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ウイーンの事を書こう、と思っていたんだけど、ちょっと興味が逸れてしまったので、またの機会に書くこととして。
けっこう長い間マイルスを聴いてきたけど(ついこの間までは「マイルストーン」という、こちらは第一黄金期のほうのクインテットを、さんざん聞き直していたんだけど)ハービー・ハンコック達の入った、この第2期のものは、いろいろアルバムを網羅して聴いてみても、あんまりじ~っくり味わってきいたことは、実はなかった。
なぜって、テナーのウエイン.ショーターが加わってからのこのクインテットは、もっとめちゃくちゃにエキセントリックで、鋭利で、ハードで、マイルスもこの年で、よくここまでスタイルを変えてハマれるよな~、と心底感心するのだけど、やっぱりちょっと気負っている感じもして、「うお~~!!」という感じで聴いていてもだんだん疲れてきてしまう。
でも、このたぶん、彼らが出会った初期の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、なんかおいしいもんを食べている時のように、幸せなふっくらした感じがある。
まず、マイルスの最初のいちフレーズから、「そうだよ!音楽はそうじゃなくちゃ」としみじみ感じる。
キース・ジャレットが「だれでも楽器を始めたときは感動的な音をだせる。しかし楽器を極めたのち、その感動的な音をまだ出せるのはマイルスしかいない」という趣旨のことを言っていたと思うんだけど、まさしくそうですね。
多分彼の自伝によるとこの時期はあまり練習してなかった時期だったと思うんだけど、そういうのさえが音の魅力になるのがすごいよね。ほんと、練習だけが音楽ではないのです。音楽とは人生なのだ。
若きハービー・ハンコックのふんわりしてて、遊び心に満ちて、ゆるいアーチを描くバッキングに(いっぱい音をひいてても、この人は構築感はやっぱり天才的だね)トニー・ウィリアムスの細かく振動するリズムが濃密なクリームのようにまとわりつき、ロン・カーターの、ポール・チェンバースの時代とは打って変わった新鮮でフルーティーなベースの動きが隠し味になって、
う~ん!これはまるで、上質のロールケーキだ!!しかもそのロールケーキと一緒に上質の豆を丹念に煎ったコーヒーを飲んでいるように薫りたかいぞ。
(どんな例えや!けどもちろん、すこし苦みの利いたコーヒーは、マイルスのソロである。)
ちなみにジョージ・コールマンのアルトが時たま古くさいフレーズをやって、バックが一致団結して、あのさ~、イマっぽくやろうや!って意気込むんだけど、やっぱり不毛になってるあたりは、愛嬌である。
そして、もっと昔にさかのぼり、20代のマイルス奏でる「マイルストーン」のほう。
このフレッシュ・オレンジジュースのように新鮮で、溌剌としたカラーは、やっぱりフィリー・ジョー・ジョーンズのはじける粋なドラム(粋なリズム、というと私にはなぜかこの人が思い浮かぶ)と、レッド・ガーランドのおきゃんな?これまた粋な透明感あふれるピアノのせいじゃないかと思う。
マイルスもパキッしゃきっとした演奏してるし、(これは、すごい練習してるよねきっと)コルトレーンでさえ、あの独特のクサミがなくさわやかだし、もちろんキャノンボールはいつもどおりパキパキ、つやつや、ぐいぐいと吹きまくる。
これがそのちょっと後の「'58 マイルス」や「カインド・オブ・ブルー」あたり、ジミー・コブのドラムとビル・エヴァンスのピアノになると、ソロイスト陣がおなじでも、なんだかもっと格調高く、水彩画的な色あいになるんだから、面白い。この辺の変化がマイルスを聴く醍醐味である、と思う。
もちろんマイルスは自身がジャズ史のようなひとで、あまりに沢山のすごいアルバムがあるけど、もし興味をもったひとはこの辺からどんどん聴いてみてください。
ちなみにマイルスの自叙伝ですが、これは最初友人の作曲家、Tさんが貸してくれて、何度もお借りして、あまり読みすぎてぼろぼろにしてしまったので、とうとう根負けしたTさんが私にプレゼントしてくれました。そのぐらい好きな本なので、その事についてはまた別の機会に書きます。
昨年より友人Mさんのブログ「ボチクラ」に会長のペンネームで掲載させていただいていたコラム、(音楽や、その他の話題もあり。)読みたい方はコチラへどうぞ!!
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