

途中で2回、遠く大気汚染に霞むエッフェル塔の先っちょを望む事が出来る。この瞬間のみ「あ、パリかも」と思ったりする。(この辺はパリの下町ではあるが、実際地理的には標高がパリの中心部よりかなり高い。)20区と19区の往復で日々を過ごすので、(娘が産まれてからは特にそうなった)たまに日本から来る友人とパリの中心の観光について行くと、「あ、パリに来た!うお~、セーヌ川

このように、私のライフワークを支えるこの界隈。実は今年からパリ市のおエラいさんが「パリ市立音楽院の先生を地元の普通の小学校に派遣させて楽器を教える」というプロジェクトを始めたんですね。早速派遣教師として任命されました私。一見「おー、さすが文化の都パリ、小学校にいってまでフルート教えるんですかね



そして、とんでもない生徒達を手なずける日々が始まった。フルートを教えるどころではない。ここの子供達はそう簡単に人を信頼したりはしない。彼らの両親たちは貧困や、差別などの苦労を背負っている、自分も移民の立場だから想像できるのだが。しかもその過酷な環境を生きると同時に、このフランスの自由な空気を存分に吸って育って来た子供達。しかも多感な子供はどこの国でも大人以上に悪賢く、残酷だ。クラス内ではすでに、「黒人系」と「白人系」の子供達がいがみ合っていた。みなさん、肌の色でお友達を差別するのはやめましょうね~、と言うのは簡単だ。でも面白い事に、実際に物事に対する考え方、感じ方、みたいなのが、見ていると「黒」と「白」では根本的に違っている、明らかに。後ろにある文化がまったく違うのだ。私は彼らのなかにあるとてつもない「憎しみ」を感じる事が出来る。そう、私の教えている「音楽院」にはそんなものはない。この社会は憎しみに溢れている。。。それを肌で理解できただけでも、ここにきた甲斐があったというものだ。。。
「黒」組は明らかに被害者意識があるから、私はまったく差別しているつもりは無いのに、私に「白」を優遇している、といちゃもんを着け始めた。これは別に、本当にそう思っているのでなく、ただ私を試しているだけなのだが、これはキツかった!彼らには、音楽院から来た先生なんて、憎むべき「おフランス」なのだから。でも、どうやって納得させたら良いんでしょう?私が言いたいのは、音楽とは、そんなものを超える存在なんだ、あなた方は、ただ、それを尊重しなければならないんだ!!という、ただそれだけ。
生徒にボイコットされたり、私が逆にボイコットしたり、パリ市のお偉いさんも巻き込んで、かなり大荒れとなった年初め。「先生が差別するからだ!!」というのを理由に走り回る生徒らに、ついに私は叫んでしまった。「このくそガキめ






いわゆる「おフランス」という表現はあながち間違ってなくて、「音楽院」に代表されるように、この国はすぐに複雑怪奇な洗練されたシステムを造りたがる。パリの公立音楽院では、楽器を選ぶ以前にソルフェージュを義務づけている。そのあとは楽器を始めた子供達は第一過程第1学年、第2学年というように、年刻みに試験があり、ものすごく細かくレベル分類される。それはそれでいいこともあるけど、そのようにして育つ子供達はいつの間にか「牙抜き」されちゃって、どうしてもスポンタニティーが無くなってただの「いい子」になってしまう。いま私がお話した小学校では、アイツらうるさいけど、私がノリのいい曲を吹いたり聞かせたりすると、椅子から立ち上がって自然に踊ったり歌ったりしちゃうんですよ
