SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

トップシェフの隠し味〜オーケストレーションの目眩く世界

2023-08-04 20:52:00 | Essay-コラム

写真はブルガリア名物、最高に新鮮なショプスカサラダ。


前回(2年前)にフランス・フルート・オーケストラという、フルートのみの楽団から委嘱いただいた、カリブの偉大な伝統フルート奏者、マックス・シラとの共同プロジェクト。


シラの作品を3曲、私の作品を3曲。


カリブ音楽と、日本出身でクラシックxジャズx現代音楽フィールドを持つ私の音楽との融合。


2人がオーケストラを前に即興を繰り広げられるよう、各曲にインプロビゼーションスペースがある。


オーケストラが集団インプロに挑戦出来る場面だってあるんだから。


一度は成功したプロジェクトだし、曲はもうあるんだから、いつかフルート・オケじゃなく、本当のオケでやってみたいなぁ、、、というかなり無謀な望みを抱いていたんだけれど、それを同僚の新進指揮者、若きホープジャンヌちゃんに相談すると「やろうよ!絶対。」という話になり、なんと19区、10区音楽院共同の高等科学生オケの来年度プロジェクトに抜擢させて頂いた。


学長「で、オーケストレーションは誰がやるのかね?」


「私がぜひやらせて頂きたいと、、」


「君はオーケストレーションを勉強した経験があるのかね。」


「ええと、まぁパリ国立音楽院の時に少々、、、」


なーんちゃって。私がやっていたのはオーケストレーション科の実験オケの団員の方であって、オーケストレーションをしていた側ではないのですね、正確には()


でも長年、即興アトリエや小学校向けプロジェクトで毎年、次から次へと余りにも無理難題な多色な楽器編成で編曲した経験が多数あるので、一応色んな楽器のことは分かると思うけど。


で、実際にフルオーケストラのオーケストレーションをやってみると、これが、あまりの色彩のパレットの大きさに、楽しいやら、難しいやら、異様にバランスの悪いトンデモ編成で修行してきただけに、これは正に「嬉しい悲鳴!」です。


ひとつはっきり言えることは、


「超時間がかかる。。。」ですね。


で、この夏はあらん限りの時間を、全6曲のオーケストレーションに費やしているわけです。



バルカン山中でも。



縦の割り振り、一つ一つの楽器の横の流れ。そして曲全体のバランス。ハープなど分かりづらい楽器は各同僚に基礎を教えてもらう。短期間でも音楽を理解してもらえるようなるべくシンプルに、ひとりひとりのパート譜を完璧にチェックしないといけないし、しかも学生たちにとって新しい音楽なので、楽器的に難しすぎず、かつ喜んで挑戦出来るように魅力的な響きにしたい。


で、大好きなラヴェルやドビュッシーの一番好きなオーケストラ音楽を、大変遅ればせながらきちんとスコアを見て聴きました。


すると。


何とも複雑な響きを内包して聴こえるこれらの曲が、整然と、あらん限りシンプルに書かれているではないですか!


オケの中にいるとまるでマジックワールドにいるような錯覚に陥るあのオーケストレーションが、こんな風に紙に書かれていたとは。 


何と言うイマジネーション、なんというパーフェクション!


気付くの、遅いって!


でも50歳にしてオーケストレーションの目眩く世界に入門できただけでも幸せ。


モーリス・ラヴェル曰く


2声部をフルートとホルンに振り分ける。これだけではタダのインストゥルメンテーションだ。しかしここでホルンのパートにヴィオラのピッチカートを加える。すると聴いている人には分からないかも知れないが、響きに何かが加わる。これこそがオーケストレーションだ」


だって。


食べている人に気づかれないほどの絶妙な隠し味。


とっても料理に似ていると思いませんか。


ラヴェルはトップシェフ。


そうとう経験積まないと難しそうだ。


楽譜上では、(フィナーレなどを使っても)実際にどうオーケストラが鳴るのか、超不明。って相方の作曲家アタに言うと、


「当たり前じゃないか。当日やってもらうまで、分からないもんなんだよ。

武満徹とかもスコアみて聴いてみたら?隠し味だらけだぜ」

そうなんだ()


これはもう、超楽しみなやら、超不安なやら。


このオーケストラx即興プロジェクトは、9月の新学期スタートで、1月末頃のコンサートとなります!