SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

普段着(じゃなくなった)コンサートvol.6~J.S.Bach Prélude BWV1009 C Major

2021-03-30 10:27:00 | Essay-コラム


われら「らるちぇにっつぁトリオ」の初日本公演(アコーディオンの巨匠、ペーター・ラルチェフ氏の記念すべき夢の初来日となる)が、実現できる見込みとなりました!


Expo2025に向けた大阪・関西万博基金が助成する「国際文化交流事業」の2021年度事業のひとつに、私たちの10月日本ツアーがなんと、採択されたのです!


申請では、自分の言葉で自分のやりたい事をどのような分野の審査員にも分かって頂けるよう記述すること、万博理念に自分のプロジェクトが適合することを証明すること、(多様性、国際性、必要性)そして、具体的にツアー全体の予算、詳細、コロナ対策、全ての面でちゃんと説明し的確な予算を提示すること。


最近仏語で書いた「多様性へ」という教育論文に似て、どれをとっても大変な作業でした。でも、好きこそ物の上手なれ!ということで、何より私の思いがちゃんと審査員達に伝えられたのが、最高に嬉しい。


私はこのトリオで伝えられる音楽に自信を持っているし、(ペーターさんとアタナスのお陰です!)それをどうしても今、伝えたかった。


政治的なものが何も絡んでない、ただ音楽で伝えたい、それだけの私たちの思いを、私の全く名前も知らない方々に受け入れて頂けたなんて、日本も、この世界も、捨てたもんじゃないと思いました!


最近は春が来た!というニュースがとても多い。


先日のフランス国立管の首席フルートの試験で受かった、友人のシルヴィア・カレッドゥがパリに帰って来ることになった、という嬉しいニュース。


パリ音楽院を出てジュネーブコンクールで1位を取り、その後ドイツ圏でホントに色々な体験をし、史上初のウィーンフィルの女性フルート首席奏者に選ばれ、試用期間後に何故かいきなりクビにされる、というヨーロッパクラシック音楽界切って話題に晒されることになった、好む好まざるに関わらず激動の運命を生きた彼女。


彼女と、現在パリオペラ座で吹いているザザは、パリ音楽院とシエナのニコレのところで一緒だった、数少ない気の合うフルートの友達だから、「またパリでシエナ組作ろうねー!!」なんて今からワクワクしている。


この子たちを私が好きなのは、全く計算がなく、経歴に縋り付かず、いつだって素のままだからなんだよね。どんなにそれぞれ違う世界で生きていようと。


私の周りからは計算高い人や、偉ぶる人、何かを恐れている人、表面の肩書きやジャンルの括りでしか見られない人、などはどんどん去り、本質を見られる人だけがどんどん戻ってくる。


気がつけばコロナ禍が始まってからというもの、一歩も歩を緩めたことがなかった。自分が一生懸命(この言葉あんまり好きじゃないな)頑張って緩めなかった、というよりは、何者かによって緩めさせられなかった、という感じが近い。


その何者か、とは使命とか運命なのかな。


見知らぬ所から、ある教育実習生が「あなたに習いたい」と来てくれて、一緒に今は、生徒たちと毎週新しい発見の連続。


デザイナーの安藤福子さんからは、次なる舞台で着る新しいドレス達が届いた。


着てみるとこれが!

魂が喜んで共鳴するような、何ともピッタリした、本来の自分に戻るような感覚なのです。


これはもう「服」なんかじゃない。

福子さんいわく、「ミエさんの魂の器」。もちろん日本ツアーでデビューさせます!


それに、最近急に「曲を書いて欲しい」というお声がいくつかあって、そのうちの一人はわざわざ、私の最近の活動を大変評価している、と20年ぶりに突然電話をかけてきた、パリ音時代の師匠、ピエール・イヴ・アルトー。意外過ぎて、え?ジャズでいいんですか?私が書くんですか?!って思わず聞き返してしまった笑


最後に、あれほど希望と値段に沿ったものがなく難航していたアパート探し、すぐ近所で(と言ってもパリ外縁を乗り越えます)ぴったりのが見つかって、見学がたまたま朝一番乗りだったので、運良く物件を予約することが出来たんです!人生初の購入。これでついに10年以上住んだ賃貸アパートを離れ、夏には引っ越しです。


あー、、、動くときは全部動く。。。


人生いっぱい嫌なことあったし、これからももちろん存分にあるんだろうけれど、今はこのご褒美を存分に享受したいと思っています。


10月の日本ツアー、スケジュール、曲目など近いうちにアップしますので、どうぞ楽しみに待っていて下さい! 


このバッハの組曲3番のプレリュードは、春が来たら吹こう、と思って少しずつ練習していたものです。福子さん作の新しいドレスを着て演奏します。



偽ゆるゆるロックダウンは状況が悪化するだけで終わり、どうやら来週から1ヶ月、本物のロックダウンが来るみたいです。さて、これより先1ヶ月は作曲、編曲に専念したいと思います。



普段着コンサートvol.5 遠近両用の視点~homage to Chick Corea

2021-03-19 13:35:00 | Essay-コラム

大好きなチック・コリアが29日に亡くなってしまって、一曲は彼の曲を、感謝のためにも、私なりに何か今やってみたい、と思っていた。


彼らしいフレンドリーなやり方で、私を作曲へと背中をすっと押してくれた曲は「Cappucino 」というスティーブ・ガッドらと一緒の「Friends」というアルバムに入っている終曲だった。あえて即興の途中からいきなり曲に入るアイデア、そのあとの難易度4回転級の切り込むような速いフレーズの嵐、対照的にツーコードのみで奏者の目眩くモード即興を喚起するコーラス、怒涛の如く異様な転調を繰り返すコーダ。何という恐れを知らない知の自由さよ!ジャズの真髄にいながら、軽〜くジャズというボーダーを乗り越えてしまっている!


そして、こんな鬼のような曲に「カプチーノ」というお気楽なタイトルをわざわざつけて、フレンズ、というこれまたお友達との気軽なセッション、という軽いノリにしてしまう。彼が他と一線を画しているのはきっと、その遊びと知の結晶という相反する二面性の、高い次元での統合なんじゃないか、と思う。



星の数ほどある多作な作品の中から、今回の演奏に選んだのは「You’re everything」、シンプルで美しいメロディーライン、軽快なブラジリアンリズム、南から吹いてくる暖かい風のように心地よく耳当たりがよいこの曲は、実はまたしても知の境地で、かなり複雑な和声進行で出来ている。


このような和声進行の個性的な美しいグリーユ(私はこのフランス語で「格子」を意味するgrilleという言葉を和声構成という意味に当てはめるセンスが好きなのだけど、英語では何て言うんだろう?ワンコーラス、だとテーマ分の長さ、と言う意味になるので同じことを指すけど、ちょっと意味合いは違う)は、グリーユ、その和声進行自体を活かすように音を選ばなければならない。よってブルース進行みたいに自由に好き勝手に即興できる余白は少ない。


それはいたるところに障害物があるところで走るのと同じである。しかもその障害物は作曲者によって美しく配置されていて、踏み潰したり無視してはコースの良さが生かされない。


そこで、近視眼的に一つ一つの和声を鳴らす可能性そのものを探ること、そして遠視的俯瞰的になるべく遠くを見て、一つ一つに拘りすぎず、大きなデッサンを描くこと、この二つが必要になってくると思う。


昔、パウル・クレーの「アド・パルナッスム」という絵画(普段はスイス・ベルンのクレー美術館にあるのが、その時は東京に来ていた。とても大きな絵画で、クレーの傑作の一つ)を見てすごく心に残ったのだけど、その絵は、

遠くから見たらこの上なく洗練されたシンプルなラインが浮き上がり、近くで見ると緻密な様々な色彩の点が数限りなくびっしりと描かれている。異様なまでにマニアックな細部が、後ろに下がって全体を見ると、子供が描いたような純真な線による壮大なファンタジーになるところに、息をのんだ。


その絵はまさに、クレーの徹底した論理性の追求と、自由な子供の感性の解放、という相反する二つのディメンションの奇跡のバランスの上に成り立っている。


最近、超近視の私も歳をとって来て、「次回は遠近両用メガネに替えましょうね!笑」なーんて近所のメガネ屋さんに言われているから、今ならこのクレーのアイデアも、音楽的に掴みやすいかも知れない。


チックコリアの難曲に挑戦しながら、「アド・パルナッスム」を思い出し、こういう風にいつか即興が出来たらいいな、できれば老眼になる頃には、という目標を持てた。


めっちゃ難しいけど、まあ、今日失敗したって落ち込まないさ、明日があるさ、、、まだ完全な老眼じゃないし笑、とか

思う。

大体、即興なんてどれが失敗なのか、分かったもんじゃないし、繰り返すしかない。


何週間も学生の時みたいに練習したけど、まだまだ準備は出来てない。しかしブルガリアのペーターさんがコペンハーゲンで言ってたっけ、「我々はいつだって準備なんて出来てないんだよ。(だからいつだってやらねばならない。)」 


キース・ジャレットに言わせれば、「私は準備が出来ていない。しかし時刻が来たなら即興する」


そして彼は、その意味を解さないミュージシャンの楽屋の時計を、悪戯でワザと早めた。

(彼の本の中には、実名で誰か、書いてあるよ!)


つまりは即興とはこういうことなんだ。


人生そのものなんだ。


準備を誰よりもして、それも死ぬほどしなきゃならない。でもそれが「準備」になっているようじゃダメなんだ。


意味不明、矛盾、ですって?


そうなんですよ、、、即興とは、人生とは、意味がないからこそ、矛盾してるからこそ面白い!!


今日深夜0時よりパリはまたロックダウン()ということです。時刻が迫って来たので、iPhone で録画してしてみました。(使用ループペダルは、bossRC-300、左手のベースラインは、ヤマハ refaceDX )


それではまた、出来れば近いうちに。