パリの東の郊外、とは言ってもメトロでアクセス出来る、パリ外縁からほんの15分ほど徒歩で入ったあたり。
その辺を昨年のロックダウン中によく自転車で娘と散策していて気に入り、この辺ってアパートは高いのだろうか?と思い不動産サイトに登録してみたのだが、郊外とはいえパリから徒歩圏内だと、これがなかなか、曰く付き地区や訳あり物件以外では、相場的には手に届きそうに見えてちょっと届かない感じだ。
そんな中で、あんまり広告写真の見栄えが良くなかったにも関わらず、どこかピンと来て見学に訪れた物件が、想定外の眺望と広さで、しかも訳あり物件でなく、そのご家族のご都合でなるべく早く売りたい意向での低価格らしかったので、速攻予約。それからの展開は前回、前々回ブログに記した通りである。
引っ越してみると、これまでの生活範囲をほぼ変えることなく(職場や学校、マルシェまでも自転車でこれまでより5分ほど余計にかかるのみ)、それでいて帰ってくると、パリとは全く違う静かな環境に身を置くことが出来る。
仕事から帰ってきてパリ方面の重なり合う喧騒を遠くに聞きながら、夕焼けを眺めてビールを飲む。とても客観的に、まるでついさっきまでの出来事が、他人事であるかのように。これが、四六時中喧騒の中心にとどまっているより、ずっと精神衛生に良いらしい。
車がない私たちはこれ以上郊外に出ると、どんなに環境が静かでも相当な不便になるので、この辺の匙加減は人による価値観でかなり違ってくると思うけど、私たちには最高の着地点だったと思う。
私もうすうす感じていたし、パリに住んでいる社交人の友達も豪語しているのだけど、現在何かが起こっているのは、パリ東郊外のモントルイユであると。
ここ数年必ず訪れる、モントルイユで年一回開かれる布市。
ものすごく面白い。アートの原料の坩堝。
その隣町、私達の街バニョレは文化的知名度ではモントルイユに劣るが、何かがこれから起こりそうな雰囲気があることは感じることができる。
例えばうちの近所のこの小さな牧場。
子供はそこら辺にいる鶏を追いかけ回したり、山羊と遊んだり、小屋にあるアート作品に触ったりと楽しそう。
うちの子も速攻舞台作りを手伝わされた。
新旧のアパート群に囲まれたこの牧場も、「役に立たない場所」として市に潰される日も遠くないという噂も聞く。
けど本当にこういう「え?」というなんのカテにも入りきらない逃げ場がある街ほど、いい街だと思うのだけれど。
土曜の朝には、これまたバニョレテーゼ的に、近くの競技場で陸上競技をするようになった娘。
秋晴れの空の下で、パリの小学校の猫の額のような校庭の100倍ぐらいの、こんな広い場所で子供達が思いっきり走っているのを見ると、自分が清々する。
もちろんここでは、本家パリみたいなビッグネームの輝かしいコンサートの数々があるわけじゃない。私が言いたいのは、やる気のある矮小アーチストたちがアトリエを構え、小さなコンサートを開くのに理解にある場所が点在し、まだみんなが新しいことをしようと、何かみんなで出来ることを一緒にしようと、この辺にはオープンな気質に溢れているっていうこと。
私がパリに来た1990年代に私が知っていたような幾つかの場所は、近所からの騒音の苦情、度重なったテロ、トドメはコロナ騒ぎで閉店してしまった。私たちにしても、前より気軽に街に出るということは無くなっている。アーチストに出るお金はナゼかどんどん減り、対して物価ばかりが上がっているからかも知れない。本当のところは分からないけど、段々とみんなで自分たちの首を絞めていくのは、人のエゴのひしめき合う大都市の法則なのか、それとも世界的なグローバリゼーションの副産物か。
ということで、先日は例のパリ東の文化中心地、モントルイユのこれまた中心にある映画館のカフェテリアにて、ジャズで生音楽提供を毎週しているという同僚のアルノーに誘われて、数曲一緒に演奏してきた。
ブッフ(フランス語でジャムセッション)なんて、超久しぶり!_ダリウス・ミヨーの名曲で知られる「屋根の上の牛(ブッフ)」とは、実は当時有名なパリのジャズマンがジャムるためのライヴハウスの名前だったのである。だから「今度牛しようぜ!」なんてパリジャンが言うのは、ジャムろうぜ、という意味である)_
最近普段はドジャズをあんまりやらなくなっているので、新鮮で面白かった。それに家から自転車で5分だし。
今秋のヴァカンス真っ只中なので、毎日自分の職場の音楽院に通って、娘と連日こちらもセッション、しまいには私達が家を空けるので退屈した相方アタまで登場して、延々と即興している。
なんでまたヴァカンス中にまで音楽院に?と言われるかも知れないけど、先生も生徒もいない、授業のないカラの音楽院は、ビッグレジャーランドですよ!誰にも気兼ねなく、時間も気にせず、色んな楽器に好きなだけ触ることが出来るんだもの。大太鼓、ゴング、ウインドチャイム、色とりどりのジェンベ、ビリンバウ、、、地下のパーカッションスタジオは、パラダイスだ。
娘はドラムスにハマって、フルート吹いたり歌ったりピアノ弾いたり、二人でセッションするのの楽しいこと。厳格に教えたり、自由にやってみたり、気がつくと3時間ぐらい経っている。これって「はい今日は楽器」「明日はソルフェージュ」とか言ってカテで括ってやらせるより、ずーーっと一体化してて良い。こういう風な授業形態があったら良いのにね。小学校の授業は音楽院のしがらみがないから、まさしくこのフィーリングで実施しているんだけど。バニョレでも初めてみようかな。
話が逸れた。要するに地元のオープンな気質を謳歌し、パリの喧騒から逃れるためにパリ脱出する人たちの裏をかいて、ヴァカンス中は無人のパリで好き放題やるという話である。
物事は逆に考えると、とっても面白くなったり楽しくなったりするらしい。
そういえばバニョレのご近所の新しいお友達、ソフロロジストMさんも「価値観を変える」それだけで「世界が変わる」って言ってたっけ。全くそうだなあ、と思う今日この頃でした。
ご近所さんにもらった、田舎りんご。
Ps 日本にいながらパリと繋がる計画、第一弾
開始しております。
様々な音楽スタイルの即興アドリブ講座、またフランススタイルでのフルートレッスン、フランス留学を目指している方…日本人唯一のパリ市フルート科並びに即興科教授、ミエ・ウルクズノフがご要望にお答えいたします。このブログまで、お気軽に先ずはご相談、お問い合わせ下さい。