娘が5区にあるR校に行き始めてから、送り迎えの為に、パリ中心部を通って5区(カルチェラタン:パンテオンを中心に、多くの著名大学や名門高校が集まっている)に滞在する時間が増えた。
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時間制で支払って、コーヒーやケークも値段込み、という学生向けのリーズナブルなワーキングカフェも、作編曲によく利用させて貰っている。
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学生が多いカルチェ・ラタンは、安く美味しい最先端のレストランも多い。ここはカラフルさが楽しい四川ラーメンの店。8段階から辛さが選べる、パリでは珍しい店。5段階にしたら結構辛かった、満足!
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R校は、芸術/スポーツ科、半日制で、後の半日は自分のやりたいことを好きなように極めてくださいね、という、大変自由な校風で、独特の時間割と選抜試験を持つ、公立であるにも関わらず、パリでも唯一の小学高学年部併設の中学校。
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音楽、舞台、フィギュアスケート、ダンス、チェスの名人まで、、、R校の子供の守備範囲は幅広い。
フランス(もちろんパリ市も含む)が、「音楽はみんなのためのもの」という民主化の大合唱の元で、子供の試験を無くし、くじ引きや学区制(学区外からの受験を排除するため、住所による減点制にする)にしたが為に、音楽自体のレベルがどんどん下がってしまっている(多分日本の「ゆとり教育」の時みたいな感じなのかな?)
というご時分に、R校が選抜式で学区の区別なし、という独自方式を維持しているのはすごいことだし、ぜひ「みんな推し並べて同じです、ピース!」という風潮に対抗して、特殊な環境が必要な子供たちのために頑張って、長く存続して欲しいと思う。
芸術に「推し並べて同じ」は存在しないのだから。
子供それぞれに、一番あった場所があるということだと思う。
大人にしたって、居場所は一番大事。日本人としてパリにいる、それは私が自分で選んだ場所であり、これでとても幸せだと思っている。
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6年前(もうそんなに経つんだ!)の火事から、再建を急いでいるノートルダム。
R校と同じ通りのセーヌ川沿いにある老舗レストラン「トゥール・ダルジャン」、なんかノスタルジック。
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冬至も近づき、日がとても短い。
水曜の暗くなった夜は、クリスマスらしく飾り付けられた10区の親密な路地(10区って、何故か親密って言葉がしっくりくる)を通って、現在行われている10区/19区音楽院合同オーケストラの練習に参加しに行く。
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「フランス/アンティーユ/日本」と題されたこの学生オケコンサート企画、(最終コンサートは年明け1月26、27日!) 夏の間3か月かけてオーケストレーションした自分の作品と、アンティーユ諸島のマックス・シラの作品を、5カ月間リハを聴いたり、協奏曲形式のものは一緒に演奏したりして練習している。
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指揮者でヴァイオリニストのステファンが、これらの作品を心から気に入ってくれて、一小節、そして次の一小節と、彼が感じることを、滋味深い、ユーモアに溢れた言葉で表現し(彼の人生経験を知らなくとも、それを感じる瞬間だ)、オケがそれに感応して、月が満ち欠けするように少しずつ、時間をかけて曲が姿を変えていくのを聴いていると、ああ、インタープレテーション(楽曲解釈)とは、こんなに素晴らしいことだったのか、と思う。
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2、3回だけのリハでわーっと飛び込むように組み立て、その時の感動だけで通りすぎる通常のコンサートだと「月の満ち欠け」を感じる時間なんてないけれど、5か月に渡って二人の指揮者と仕事を共にしていると、深い共感が脈打つのが肌で感じられる。私のパーソナルな心から出てきた音楽が、指揮者のパーソナルな心を通り、そしてそれがオーケストラのひとりひとりの心に伝わっていく、その微妙な振動の過程で、私が書いた当初思い描いていたものとは全く違った形になっていくのを、新鮮な驚きを持って聴いている。
そして、指揮者によって、出てくる音のなんと違うこと!!指揮者という職業の「イタコさん」のような奥深さを感じると共に、心から心への振動によって、音楽は意味を持つものになっていくんだなあ、と思った。
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その10区のサン・マルタン運河沿いにある、ハスキー犬がお留守番するカフェ。ショコラやホット抹茶ミルクがとっても美味しい!
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今学期最後の日には、9区と10区の境目にあるCさんのアトリエのクリスマス・ツリーを見に寄ってみた。予約札済のブランネンのフルートは、なんと1月のオケとのコンサートで貸してくれるとのこと!楽しみすぎる新年。
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「やることがハンパじゃないでしょ(笑)」とCさん。確かにこんな完璧なツリーは珍しい。