SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

人生はビスケットの箱である。 (By村上春樹、ノルウェーの森より)〜パリ市フルート教授国家公務員試験の話

2023-01-21 09:11:00 | Essay-コラム
絵と楽譜の入り乱れる娘の部屋(アトリエ?!)

果たして、パリ市フルート科教授の正規国家公務員席コンクールで、一次書類審査に通って、第二次試験を受けられるリスト7名に残った、という話を年末にちらっと書きました。


普通の教授と、国家公務員資格を持った教授はどう違うの?

と思われると思いますが、給料も待遇も全然違うんですねー。だからパリ中のフルート科教授がこの機会にと、こぞってコンクールに参加して、ものすごい競争率になるわけです。


年始早々に最終面接試験があるということで、クリスマス休み中は、休みも返上で面接の練習。


まず第一難関は10分間の自己紹介スピーチ。自己表現の苦手な文化背景を持ち、それのみならず元々人前で喋るのが嫌い、そしてもちろん外国人だから、フランス語がハンデという三重苦、、、


音楽なら、そーんなこと無視していくらでも表現出来るからと音楽家になったものの、そんな言い訳はここでは通用しない。やっぱり音楽家とは言え、社会で生きていくには、こういう難関がいつかはは立ちはだかるものなんですね。


小学校の頃から大らかで自然な自己表現を叩き込まれているフランス人に対抗するには、どしたら良いのか?私、音楽で即興教えてるからよく分かるんですが、そうそう、即興できるバックグラウンドがないなら、とりあえず暗記するしかない!


経験豊富な友人に助言され、まず骨組みを書いて、全部暗記することから始めました。10分とは、長いようで短い。グズグズ噛んだり淀んだりしていると、速攻タイムオーバーに!テンポよく、キレ良く、自分のこれまでして来たことの全てを首尾良く紹介する。。。自分の音楽人生を全て10分で話せって、、、めっちゃ難しいやんか!


クリスマス休暇中には、相方アタがパリにいる友人たちはうちに取っ替え引っ替え呼んでくれて、私の自己紹介にあーしたほうがいい、これを言え、あれは言うな、など細かいアドバイスをしてくれました。ありがたい!


そうこうしているうちに、だんだん形はうまく整って来たかも?少し自信のようなものがついてきます。


年が明けて音楽院が始まってからは、お馴染み同僚Cの特訓が始まった。


第二難関には質疑応答があるので、質問シミュレーションをしてもらう。


「今の答えでいい?」


「全然ダメ!闘争意欲が欠如している!」


「じゃあこれでは?」


「全然ダメだね。君は過去のことばっかり話して未来に言及していない」


...などなど()


当日時間ギリギリまでワッツアップで猛特訓。

で、アドレナリンが急上昇したところで、いざ会場のパリ市庁舎へ自転車でゴーー!!



おーー。いつもこのお城のように壮麗な景観を見ると感激。

いやいや写真撮ってる場合じゃ無いでーー、、、


そこへ相方アタから電話で


「ミエはミエのままでいいんだ。自分以外のものをどんなに上手く表現できて合格できたからって、嬉しく無いだろう。自分そのままでいて、それで向こうが良いと思ったら取るし、取りたくなければ取らないさ。だから自分自身で臨むんだ」


という言葉が大きな励みになる。


自己紹介は、もうこんなに上手くできることは一生ないだろう、という自己最高点。インプロまで飛び出すアドレナリンの高さ。


しかしその後の質疑応答で異変が!音楽教育系やフルートに関する専門系、音楽院のシステム系の質問は概ねバッチリだったものの、政治系の質問があって。私実はパリ市の政策をまったく勉強して来てなかったんですねー(苦笑)。もちろん音楽院に関する政策は経験値で答えられますが、それ以外はえーと、知りません!という失態と、輝かしき自己紹介との鮮やかなコントラスト()審査員たちの態度がここで数すーっと冷え切る()これは無理だな 、と腹をくくった瞬間でした。


しかし結果はなんと!合格者の一名にはなれなかったものの、なんと補欠合格リスト2名に入っているではないですか!パリ全域でたったの3人に入れたのです。



補欠合格とは、すぐに席が貰えるわけではないが、2年内に、と言うことらしく、直ぐの異動がない分19区音楽院に残れる可能性が出てきた訳です。

これまではいろんな人脈や幸運で上手く運んできたこともあった。けど今回は長い道のりを経て自分で掴んだもの。それが一番嬉しいです。そしてたくさんの周りの友人たちが一生懸命私を合格させるためにトレーニングしてくれたこと。こういう芯から優しい人たちのエネルギーが一つになって、素晴らしい結果がもたらされたのだと思います。


相方が言うように、政治政策をペラペラ言えなかったことさえも、私を象徴しているし、補欠で何とか最後に引っ掛かっているというのも私らしいのでちょうど良いと思う。


いつも地道に地下を掘るようにやって来た私にとっては、輝かしくなることは重要ではないし、今後どのような地位が貰えるとしても、それはマイノリティーのアングラの代表として。間違えてもシステム側の姑息なあやつり人形にならないように決意を新たにしたいと思います。


ここのところ「らるちぇにっつぁトリオ」が突然解散したり、また他の人間関係が突拍子もなく切れたりと、数人の重要人物が勝手に何の前触れもなく、私の周りから離れて行ったところでした。


村上春樹氏の言うように「人生はビスケットの箱」。嫌いな味のビスケットが続けば、好きな味のビスケットが出てくるみたいです。


「魔笛」と新年。

2023-01-01 12:31:00 | Essay-コラム

安藤福子さん作の新しいドレスで。


2023年明けましておめでとうございます!


昨年は大変お世話になりました。


私はもう5年も日本に行けていませんが、皆様はどのような年明けになっていらっしゃいますでしょうか?


新年一週目は、多くの新しい人と出会う予定が目白押しになっています。


新しい世界が開けるのかも知れません!


この記事は、年末に信じられない出来事が起こってから、それに関する初めての私からの公的な発信となります。


日本語ですが、他の言語で読みたい方は昨今グーグル翻訳があるのですから、お好きにお読みになっていただければと思います。


11月からの2ヶ月間、YouTube 上の「らるちぇにっつぁトリオ」の動画が消されていたり、SNS上の写真や動画などのトリオの記録を消すようにプレッシャーが掛けられたりしました。その邪悪な力は、トリオの名前さえ、使用することを禁じようとしたのです。


それは私たち三人で話し合って選んだ大切な名前なのではなかったですか?


これを使用するなと言う権利が、一体誰にあるのでしょう。


この事件の背後に執拗な嫉妬があることが分かったとき、戦慄はしたけれど、これまで起こったことに全て筋が通りました。


誰も勝手な都合で人の過去を奪ったり、人の実績を隠蔽することは出来ない。


そのような卑怯な行為を断じて許してはならない。


私とアタナスは、二人の尊厳を守るため、トリオの活動停止を決断しました。


2021年度日本万博基金の助成事業に採択されました「らるちぇにっつぁトリオ」は、以上の理由により、痛みを持って3年半に渡る活動にピリオドを打ちました。


私は、らるちぇにっつぁトリオでやってきた音楽の軌跡と、それを支えてくださった方々を本当に誇りに思います。


夢であったトリオでの日本ツアーが実現できなかったことに悔いが残りますが、私たちは素晴らしいクオリティーのCDと録画を残すことが出来ました。


このトリオの名称も、映像も、私が個人的に管轄するSNS上では保護しますので、これからもご覧になれます。


https://youtube.com/@mieogura-ourkouzounov779


https://www.facebook.com/mie.ogura19


ところで。


話は変わりますが、最近モーツァルトの「魔笛」を9歳の娘と一緒に全幕見ました。


嫉妬に駆られた「夜の女王」は最終的に地獄に落ちます。


モーツァルトと台本のシカネーダーがタッグを組んで挑んだ、普遍のテーマ。


人間の醜悪ささえ、このような美しい音楽に変えて伝えたモーツァルト、本当に深いですね。


村上春樹氏も著書のなかで、「嫉妬とプライドほどたちの悪いものはない」と言っています。


嫉妬とプライドは、いつしか巨大な邪悪な生き物となって、欺瞞心からそれを許した弱い者を飲み込んでいく。


己の弱さから邪悪を許す者は、加担者です。


宮崎駿監督の「千と千尋」に出てきた、欲で肥え太った醜い化け物のように、それは自分に跪くものを全て飲み込んで、ますます巨大化します。そこには個人の尊厳はない。


このエゴの化け物は、人の気持ちなんて、もう考えることが出来ないんです。真実ではなく自分の妄想を信じ、自分だけを正義化し、他人は自分がコントロール出来るものと信じます。


それを断ち切るには、真実の愛を信じる勇気を持つことのみだと、モーツァルトはその死の直前に、全力で伝えている。


そして勇気の御守りとなったのが、タイトルの「魔笛」。


私はタミーノと同じく「マテキ」を持っている!(マテキフルートです笑)


私もパパゲーノのように、時代を超え、エゴを超え、マテキを始め色んな楽器を携えて、2023年も愛と音楽と真実を信じる旅を続けていきます。


2023年もミエ・ウルクズノフをどうぞ宜しくお願い致します。


どなた様も、良いお年をお迎えください!