昨日たまたま成り行き上新しく封切りされたアメリカのアニメーション映画Tous en scène 2を見てきたんだけど、色んな意味ですごかった。
私は残念ながらあんまり普段映画を見ない人なのだけど、今日映画をみてびっくりしたのが
1:音が大きい。
朝一番だったこともあり、1音目の爆音に耳が吹き飛ばされてしまった。うちの娘も耳を塞ぐなど咄嗟に身体が防御反応を示している。
こりゃあいかん、、、と映画館の人に「ボリューム下げてもらえませんか?ここまで強いと子供に悪影響ですよ。このままなら途中で出ざるを得ません」と言うと、「このシネホールは特別仕様で、ホールに合わせた音響になっているのですがね、、、」などとブツブツ言いつつも我慢できるレベルまでは下げてくれた。それでも終わったら耳が曲がっていたけれど。
でも、見渡すと周りの家族連れは、全然衝撃受けてないし、見たところ普通に鑑賞してるみたいなんだよね、、、音量が下がったあとも、誰も気付いたようにも見えない。みんな耳がこういう音響に慣れっこになっているのだろうか。
歴史的に見ても、木製のフルートはオーケストラの巨大化に伴って金属管になり、また今日のあらゆる音楽はアンプリフィケートされ巨大な機材を必要とする。
でも人間の耳にはリミットというものもあると思うので、ボリュームの揺り戻しというのはないのだろうか。
2:アメリカーン!な衝撃。
物語はよくある一攫千金のアメリカンドリーム物語だし、すごい単純な話なのに、それをここまでエンターテインメントに仕上げられるのには感服しかない。
そして細部のプロフェッショナリズム、、、色彩が目眩く、立体エフェクトが凄すぎて目が痛いのは好みの問題としても、こんな単純な話を昇華させる技術の高さ、細やかさが素晴らしい。
「あのゴリラのヒップホップの踊り方といい、クライマックスの旋律のライオンが歌うネイティブアメリカンな美しさといい、さすがアメリカ音楽文化の深さって感じね」と私が言うと、アタ(相方)は
「俺はあんたほど感服しないな。だいたい全然迷いがないんだよ、このアメリカ文化は、、、だからこそ強い。世界を圧巻する。最強のエンターテイメントだ、それは分かる。脱帽だよ。でも自分は迷いがないものは嫌いだ、、、」
なるほど、アメリカ文化から分断された時期を過ごした東欧ブルガリア出身の彼はこう捉えるんだ。
私「ていうか、こういうのを多くの人が「スタンダード」として捉えてるのが問題じゃないの?実はアメリカ文化、というローカルとして捉える人は少なくて、これを見て、世界はこのようなものだ、と普通に思ってこの後さあマクドナルドに行こう、、、みたいな。そういうルーツへの無関心さが文化のグローバリゼーションを生んで、みんな一緒くたになってしまうのかも?」
アタ「自分はこの文化が圧倒するこの世界で、世界の隅っこで小さいながら一生懸命に耐えて自分たちの独自の文化を守っているブルガリアの音楽が好きだよ。」
世界の隅っこで頑張っている立ち位置、なるほど。
これに関して思い出した話がある。
今年の8月には(もう5ヶ月も前になってしまった)、コペンハーゲンで久々にトリオメンバーで色々話せる機会が持てた。
ブルガリアの夏季アカデミーで(前ブログ参照)、生徒みんなが英語で歌っていて、ブルガリアの文化が消えてしまうのではないか、と私達を含め多くの人が危惧したという話をしていると、我らがリーダーのペーター・ラルチェフいわく
「でもな、例えばイヴォ・パパゾフのやったこと(電気楽器の持ち込みや奏法の改変)は当時ブルガリアで賛否両論だった。ところが今はこれがブルガリア音楽とはこういう演奏の仕方なんだというスタンダードになった。歴史って分からないものなんだよ。」
さすが現代ブルガリア音楽のトップ奏者として変化の真っ只中にいるペーターの言葉には、説得力がある。
それは今ではパリの象徴であるエッフェル塔が、建設当時は風景にそぐわないと嫌がる人が多く、モーパッサンがその姿が嫌いで、見なくて済むようにエッフェル塔上のレストランのみで食事をした、という話に通じるかも知れない。
最近娘が世界地理を習う年齢になり、色んな国歌に興味を持っているので聴いているのだが、しかし国歌とは国の性質を良くも悪くも如実に表しているものが多い。
フランスは血で血を洗って勝ち取る、武器を取れ!そら進め!と血なまぐさい歌詞。今だってデモをしまくって権利を勝ち取ろうとしているではないか。
対して日本は「さざれ石が巌となる」と永遠を謳い、随分と詩的だ。どうしても絶対に変化したくない、これこそが日本の奥底に流れる意識であるらしい、そう思えば政治が全く変わらないのも、ちょっとは腹が立たずに見守れるかもしれない。
村上春樹風に言えば、世界は変わりたい人たちと変わりたくない人たちに溢れている。
歴史とは、変化を望む人と望まぬ人のせめぎ合いの潮流なのかも知れない。
〜この記事は「日本万博国際交流事業/らるちぇにっつぁトリオFB国際交流グループ」の為に書き下ろしています。
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