November 7, 2019
先日から即興アトリエでブルガリアの伝統ダンス・ホロをやっているのだけど、リズムが普段からやらない奇数拍なので、生徒たちの脳を全く違った感覚で揺さぶるらしく、とても楽しい。
今回は譜面台やイスも取っ払い、広い教室のスペースを活かしてステップも弾きながら一緒に出来るように。
面白いことに、年が小さい生徒ほどぱっとリズムが掴めるのですね。
もう一人の同僚のジャズの先生、アルノーがウルトラ悪戦苦闘してたのが面白い。でも、生徒と一緒に悪戦苦闘してくれる先生、最高ですよね!
ずっ と昔、ブルガリアの伝説クラリネット奏者、イヴォ・パパゾフのマスタークラスを受けたことがあって、一日中奇数拍子をめっちゃ集中してやってたら脳がシェ イクされた状況になり、帰りにスーパーで買い物しようとしたら4拍子の普通の曲がかかっていてとってもへんな気分になったのを覚えている。どうやら若い生 徒たちにも同じ変調を与えるらしい。
あまりフランスでは気づかれてなさそうだけど、色々特徴の違ったリズムをいっぱい小さい時からやるといいと思う。
み んな何年間も4拍子ばっかり、しかも一拍目から始まるフレーズばっかり、そして時々3拍子になって、わーこれなんか違うね難しい、とかやってると、リズム の面白さが学べないまま。調性もそうなんだけど、フランスにはずーっと一冊ハ長調のままの教本とかあって笑 当たり前だけど一冊終わる頃にはほかの調への苦手意識がしっかり植えついている笑 拍子も最初から柔軟性をある程度つけた方がいいと思うよ。テクニック面とのバランスはもちろん大事だけど。
けっこう一杯アイデアや書いた曲、編曲が溜まっているので、この辺で一回子供のための曲集を出したいなぁ。(例によって有言実行!ここで書けば行動せざるを得ないので)
私 がバルトークを本当に尊敬するのは、彼の例えば子供の為のヴァイオリンのデュオなんかやってても、もう一曲やっただけで調性、リズム、、、全ての音楽の真 理、面白さが自然に詰まっているから、たったの数行でうーん、、、!と唸ってしまうほど素晴らしい作品だし、もう何回何百回やっても飽きない!ヘンデルや ヴィヴァルディのソナタ達も、生徒と一緒にピアノを弾くのだけど、毎回弾きながら生徒よりエキサイトしまくって涙を流してしまうほど、素晴らしい!なんで こんな素晴らしいアイデアがもうこんな時代に、、、と思う。多くの教則本は、いーっぱい説明が書いてあるのに、曲がつまんなすぎて、なーんにも分からない 笑 最近出た子供に擦り寄ってイラスト入れたり、ジャズ風の曲とか入れてCDつけてるヤツもしかり。本質は全く昔と変わってなく、表面上だけカッコよさげに変 えてる感じ。それだったらまだ昔の教則本の方が素朴でいいわ。
やはり脳は、普段使っているのと違う使い方をバシバシしなければ。
これからもどんどん意表を突いたことをやっていきたい。
話が逸れたが、最初ブルガリア音楽という事を言わずにヴィデオで音楽を聞かせ、国当てをさせたら「インド」とか「モンゴル」とかいう答えが出て面白かった。インドやモンゴル近辺からもこの国の民族はルーツがあるから。
それにしてもブルガリアがトルコの影響を長年受け、東西の音楽の交差路となっていることは本当にあまり知られていない。
そこでどうして私がブルガリア音楽に興味を持ったのか、という話に。私をよく知る生徒たちは「先生の旦那がブルガリア人だからだよ笑!」って答えてくれたが、答えは「いや、私がブルガリア音楽を好きだったから出会ったんだよ」である。
そ してパリ音楽院のフルートのクラスでみんな競争意識が強くて馴染めなくて、即興科の戸を叩いた話、そこでもみんながやってる事に納得できないところに、ク ラスにいたブルガリアのフルート「カヴァル」をやってたブルガリア人の生徒がいて、その子が吹いたたった数音が自分の目を開き、やるべき道に目覚めた事、 など話した。
その時一緒に授業している民族パーカッションのクリストフが、「ミエはきっと、その数音に人類に何世代にも渡ってずっと伝わってきたものを聴いたんだ。それは楽譜にしてしまうと、単なるいくつかの八分音符に成り下がってしまうのだろうが」
しかしこの人の注釈はいっつも呼吸ぴったりで素晴らしい。
まさしく、その数音が伝えた事は、なにもブルガリア音楽という事ではない。クリエーションとは今パンっと指を弾いて自分が発明するのもではない。ほんとうのクリエイティヴィティーとは人類の遺産の上に成り立つのだ、という事である。
なにがそれまで馴染めなかったかって、たぶんそれは色んな否定の感覚じゃないかと思う。
いつも欠点ばかり探し出す教育によって刷り込まれる、自分のルーツの否定。自分のキャラクターの否定。
自分の信じている言語以外の否定。自分の民族以外の否定。人間の歴史の否定。
性の否定。人間はお母さんとお父さんと半分半分からできている。
どちらかを否定することは、自分の半分を否定するということ。
否定からはなにも産まれない。産まれるのは混乱、憎悪だけだ。
また話が逸れた。話 しているうちに、この私の人生を分けた音を出した、その当時親しかったカヴァルの子が、2年前に亡くなった事実がまた胸に迫った。そのことは話さなかった けれど、このショックは私にとって大きく、4月にその事実を知った時、それは長年やってきた大切な事を成し遂げるスパイラルメロディーのライヴ前だったの だけど、ショックで二週間は立ち直れなかった。でも彼はきっと自分の分も私に頑張ってほしくてこの事実を私に伝えたのだと思って、乗り切った。
彼に、あの時のあなたの音が私を支えているのだと、一生のお手本なのだと、伝えたかった。彼には残念ながら伝えられなかったけれども、こうして次の世代に、語り継ぎたいし、自分の音として、彼の意思をせめても一緒に伝えて行きたいと思う。
そして、この3月に初共演を果たし、もうすぐブルガリアで2度目の共演が実現するブルガリアのアコーディオンの巨匠、ペーター・ラルチェフさんの言葉。
「我々はみんな同じ大きな木の中にいるんだ。ひとりひとりは四方八方に自由に伸びる枝なんだよ。」
このお言葉に勇気を得て、ただ今絶賛練習中笑!迫る11月29日、ブルガリア・プレーヴェンにて!
ところで、スパイラル・メロディー再演決定です!
今回は前述の二人の即興アトリエの親愛なる同僚、ジャズサックスのアルノーと民族パーカッションのクリストフに賛助出演してもらいます。
ライヴ、スパイラル・メロディーの意図は、誰でもアイデアに賛同する人なら自分の好きなように参加できる、っていう事なんです!
2020年3月10日(火) 20時、パリ市立ジャック・イベール音楽院にて。
パリ在住の皆さん、是非お越し下さい