今日は党首討論が主な話題となろうが、民主党の弱体ぶりが曝け出されるだけであろう。まだ見てないから判らんけど。まあ、こんな話題は捨て置いて、諮問会議の議事録の方が大事ですので、そちらを読んでみました。
第3回議事録
与謝野さんを始め、財政一派の人々が「単純な試算」ということで、削らなければならない支出の大きさは「何と、20兆円!」にもなると、大々的に数字を出してきた訳ですね。これは「経費削減だけでは、間に合わない」=「増税しよう(必須ですよ)」という意味である。なるほど、そうですね。全く仰る通りでございます。私の(思い込みと独断で勝手に)提唱している方法では、消費税を上げるかわりに、保険料徴収を止めるというもので、結果的には増税効果が出てくる可能性が高いわけですし(きっと企業負担は多くなる)。財政再建というテーマがある限り、ある程度のスピード感を持って取り組まないと海外からの信用にも影響してくる可能性がありますからね。このままの増大傾向を放置する訳には参りません。ただ、財政再建策だけに目を奪われてしまいますと、今までの「政策デフレ」圧力と同様に、経済全体への悪影響というか、これぞ正しく副作用というものも顕在化してくる訳ですから、何といってもバランスが大切です。前にもちょっと書いたのだが、鋭い嗅覚というか天性の勝負勘を持つ小泉さんが「消費税増税はまだ早い」と明言して、経済全体への「心理的な悪化」というものを封じ込めたことは、ズバリ正しかったと思いますね。
時間が取れたので、追加しました。
一応原文をご自身でお読み下さった方がいいと思いますが、やり取りの一部をピックアップすると、次のような部分がありました。
竹中「(略)いずれにしても、この要対応額という概念は小泉改革を御破算にして、それからどれだけ対応額が必要かということを計算しているという問題点が第一点、それと、成長率が違うと数字も根本的に違ってくるので、その複数のケースの議論をするべきと、その2点は申し上げておきたい。」
小泉「私も説明を聞いてよくわからない。竹中議員がわからなくて、私がわからなくて、一般国民がわかるだろうか。専門家はわかるだろう。一般会計でどの程度削減しなければならないかを出してほしい。社会保障費は、一般会計で今年20兆円ぐらいだろう。公共投資も7兆円台だろう。国と地方を合わせたものなら、国と地方がどうなるのかというぐらいを出してほしい。その方がわかりやすいので、お願いする。」
吉川「竹中議員からお話があったので、その点だけ簡単にご説明する。20兆円という数字はどのようにして出てきたかということだが、これは『改革と展望』を基にしており、竹中議員が経済財政政策担当大臣をされていたときのシミュレーションなどでも、非改革ケースというのはほとんど似た形でやっていたと思う。(中略)このシミュレーションで最終的にどこまで抑えなければならないかという抑えるべき目標水準は、表現ぶりはともかく、同じになるということだ。竹中議員が2番目に言われた、成長率によって数字が変わってくるのではないかということは、そのとおりである。今回は機械的な試算なので、2011年時点では、『改革と展望』の参考試算に基づいて、名目成長率は3.2%としている。ただし、4%の名目成長率についても試算はしてもらっている。3.2%名目成長率というのは、実質成長率1.7%、インフレ率1.5%を足したものだが、仮にインフレ率が1.5%ではなくて2.3%で4%成長ということになると、2011年時点での要対応額は20兆円ではなくて19兆円となる。したがって、数字が根本的に違っているわけではなく、むしろ基本的なストーリーは、それほど変わらないのではないかと考える。」
(中略)
竹中「いずれにしても、これは問題意識を共有する、クリアなイメージを作るものにはなっていない。我々に対しても今のような説明をしないとわからない形になっている。今後はそういう協議を是非お願いしたい。」
小泉「この資料を基にして、経済学を勉強していない一般国民も常識でわかるような、書き言葉ではなく話し言葉で「こういうことです」という講演をしてくれないか。私はその講演録を読む。その方がわかりやすい。それを是非お願いする。」
こういったやり取りがあったわけであります。今回の説明・配布資料には、この民間議員からのペーパーが示されておらず、与謝野大臣の記者会見での説明だけですので、正確には判りません。ただ言えることは、将来見通しで今までと同じ規模の財政支出をするとして、名目値は増えていくのと利払いも増えていくので、それをまかなうのには20兆円くらいは必要になるであろう、ということですね。平ちゃんがかつて内閣府から出していた資料とほぼ同じ水準であると吉川先生は仰っておられるので、要するに「自分の作ってた数字でしょ」と切り返されたわけですね(皮肉まじりかな?)。平ちゃんは「数字を出す前に、予め検討させてほしい」ということを事務方にお願いしていたようですが、内閣府官僚たちから「仕返し」をされた?ということでしょうか。平ちゃんに「マクロ分析くらいやっとけ」(竹中大臣の要望)と言われたのが、よっぽど恨みを買ったということでしょうか(そんなわけないか、笑)。それはいいのですが、なんてったって竹中・中川路線の掲げる重要政策がありますからね。それは・・・アレですね。
今年の流行語大賞へのノミネートが狙えるキーワードがあります。
『The Economist』誌編集長のビル・エモット氏の著書で、昨年末から話題となりましたね(そういえば、退任報道がありましたね)。『The sun also rises』(日はまた昇る)です(バブル期には「日はまた沈む」で名を馳せたそうですけれども)。昨年の日米首脳会談でもブッシュ大統領に小泉さんが「サンライズ」とかって(「あれ、英語でなんて言うんだっけ?」とか何とかも言ってた)、使っていました。そうです、「rising」(ライジング)ですね。竹中・中川一派は「上げ潮政策」― rising tide policy ―を掲げています。日いずる国~日ノ本であるところの「ニッポン」ということで、「the Land fo the Rising Sun」に引っ掛けたエモット氏のタイトルと同じ意味合いだろうと思いますね。外人の(米国人の経済学者と新聞か何かに出てたように思う)指南役が付いているからでしょう。ですので、今年のキーワードとしては、「ライジング」を挙げたいですね。これ、今のところイチ押しです。
吉川先生は押し出しは強くはないが、大変冷静に経済・財政を見ていると思います。資料に挙げた対談もとても面白くて、政治学者の飯尾先生(よくメディアにも登場しますね)に経済学の基礎を講義しています(笑)。内容的には言い尽くされた事柄ばかりですが、重要なことは総括的な部分で「共通の理解」は出来ている、と認識していることですね。
第6回「財政再建やデフレ脱却などマクロ経済管理とミクロ面での構造改革とを両立させる選択肢」
是非とも中身をお読み頂きたいと思いますけれども、一部分だけですが、印象的な部分をピックアップしてみましょう。
「一方で、日本経済、変化の方向はともかく、水準としては天井よりも低い。経済学者、エコノミストの言葉遣いで言えば、GDPギャップがある。これは明らかに需要不足を示している。私自身はこの立場に立ち、需要不足だと考えております。
需要不足があると、もし構造改革というのが純粋なサプライサイドのポリシーだとすると、的外れだということになる。なぜなら、それは天井を上げることでしょう。現実が天井より低いところにあるときに天井を上げても意味はない。それは、GDPギャップを広げるだけで、現状をよくすることにはならないのではないかということになる。天井と現実が合っていて、その天井があまりに低いというのが問題だというのであれば、サプライサイドを強くして天井を高くするのは大いに意味があるわけですが、天井よりもずっと低いところにいるときに天井を上げても意味がない。
天井を上げるようなことは的外れじゃないかという論者の代表選手は、たとえば海外ではポール・クルーグマンです。日本でも、ケインズ派の人たちの中には、そういうことを言う人はかなりいます。財政積極論者の人は、当然このような考えを持っています。ただ、需要が足りないというのはその通りなんだけれども、持続的な需要と場当たり的な需要というのを、分けるのが一番大事ではないかというのが、私の持論です。」
「私は何よりも需要創出型の規制改革というのが、今一番大事だと思います。本当の意味での弱者を、社会の合意を得た上で支えるのは当然のことだと思いますけれども、そのためにいくらお金がかかるかという問題があります。弱者というのが、ただ口実になっているケースもあるわけです。」
「まず第1に政府は、見通しをちゃんと言ってないじゃないかと民間の方がおっしゃることがあるんですが、それはそうではなくて政府としても、「改革と展望」というもので完全に明らかにしているんです。今後5年、それからもう少し長期の10年を考えて、日本経済はどういうふうに成長していくか、財政がどういうふうに推移するかということを明確に数字で出しているわけです。ところが、どういうわけかこれもあまり読まれません。政府としては、日本経済の中期的な展望を示しているわけです。外れる、当たるということとは別にして少なくとも明らかにしていることは間違いないんですよ。」
「デフレというのは、インフレもそうですが、貨幣的な現象だという言い方をよく経済学者やエコノミストはします。物の値段なのだから、貨幣、マネーに関係したことだろうと。ということは、それをつかさどる、あるいはコントロールする金融政策によって最終的に決まってくる問題だということになる。したがって、この問題に対する責任は、日本銀行が第一義的に負うべきだという議論があります。それで、日銀に対して、インフレターゲットを掲げて、もっと果敢に金融を緩和しろという話をするわけです。」
「ベースマネーは30%増えていますね。しかし、市中の預金を中心とした、いわゆるマネーサプライ、これはM2+CDというんですが、それが大体3%ぐらいの伸びでしょうか。さらに銀行の貸し出しになるとマイナス2~3%のマイナス成長です。
現在の日本は、そういう姿なんですよ。日銀流の言い方では、ベースマネーの30%増というのは、これはまさにextraordinary(並外れた)だということになる。アクセルは目いっぱい踏んでいる。だけど、トランスミッションがいかれている。トランスミッションというのは市中銀行。それはなぜか。理由は不良債権だ。こういう話ですね。これが日銀のスタンスでしょう。」
(飯尾先生の質問、「確認しますが、デフレは解決すべき問題なんですよね」に対して)
「それは経済学者、エコノミスト、全員一致しています。中にはユニクロ現象とかいって、物価が下がるのはいいことだと言う人もいますが、それは個別の価格の話です。メーカーが頑張ってくれてパソコンの値段が下がるのはいいことですよ。それはいいことなんだけれども、一般的な物価水準が下がるデフレはそれとは別です。デフレがトラブルだということでは、経済学者は全員一致しています。
ちなみに、これがトラブルだということを経済学の歴史の中で、非常に強く言った経済学者はアーヴィング・フィッシャーです。フィッシャーはアメリカの大不況で、自分も財産を失ったのですが、資本主義経済というのは、振り子のように、安定化の機能を持っているんだけれども、それが壊れてしまうことがある。その条件は2つあって、好況のときに企業が過大な債務を負うこと。その後にデフレが来ること。この2つが重なると、資本主義の安定化機能が壊れてしまうと言いました。 」
こういう具合でして、ライジングチーム(竹中・中川一派)と特別な政策的対立を際立たせる訳でもないのですが、何故か最近は平ちゃんとの折り合いが・・・気まずく?なっている訳ですね。平ちゃんにとっては、事務方への不満というものがあって(総務省の大臣なんだから、内閣府へはあまり口出しできないのではないかと普通思うけれどね)、「(出す前に)オレにも見せろ」ということを要求するのですけれど、言うことを聞いてくれない(笑)から、勢い民間議員たちや与謝野さんとか(+谷垣くんも?かな)の財政一派への不満に置き換わってしまっているかもしれませんね。
諮問会議内での「経済学の授業」(by 小泉総理)を細かくやって対立することよりも、政治的な成功を目指すべきで、平ちゃんの戦術は悪いと言わねばならないでしょう。それは(長いので略して)「ライジング政策」をダーンとぶち上げて独り舞台を演出するよりも、共通の「目指すべき地点」というものを明確にしていくことの方が重要であろうと思いますね。それにコンセンサスが得られていれば、残るは政策手段とか優先順位の問題で、本質的な違いというものを減らせますよね。
例えば、
・絶対にデフレを終息させ、逆戻りさせない
・名目成長率は中期的には3.5%前後(±0.5くらい?)
・プライマリーバランスをゼロ近傍にする2012年前後以降には4%を基準にする
(「日本21世紀ビジョン」でも12年までは”3%台半ば”、13~20年では”4%以上”を想定している)
ということでもいいのではないかと思いますね。これらは、既に出来上がっているものですし、特別な反対論なんてある訳ないんですから。自らが決めたものですし。諮問会議にもこのビジョンは上がってきて、みんなで数字も見てたハズですね。一緒に答申したんですから、今更「前には知らなかった」とか「そんな積もりで同意したわけではない」なんて無責任なことが出てくることもない訳ですし。皆も大体同じ考えなんだ、ということを、もう一度確認した方がいいですよ。平ちゃんも、吉川・本間両先生も(笑)。
あとは、需要創出型の改革を考えていってもらえれば。雇用の問題についても、そういう意味合いですよね。
去年書いた記事ですけれども、挙げておきたいと思います。
経済学は難しい9
発散を防ぐ基本的な方法というのは、同じようなものですよね、きっと。
全く無関係ですが、yahooの新たなカテゴリーに「政治」というのが出来て、一般国民が行政の情報にアクセスしやすいページ(「みんなの政治」というタイトル)が出来ました。これはとても良い試みだと思います。議員検索とか、法案の情報なども出ていて、普通の人達が関心を持ちやすい感じになっています。今後、こうした「入り口」があることで、行政とか政治への理解が進むことを期待したいですね。
第3回議事録
与謝野さんを始め、財政一派の人々が「単純な試算」ということで、削らなければならない支出の大きさは「何と、20兆円!」にもなると、大々的に数字を出してきた訳ですね。これは「経費削減だけでは、間に合わない」=「増税しよう(必須ですよ)」という意味である。なるほど、そうですね。全く仰る通りでございます。私の(思い込みと独断で勝手に)提唱している方法では、消費税を上げるかわりに、保険料徴収を止めるというもので、結果的には増税効果が出てくる可能性が高いわけですし(きっと企業負担は多くなる)。財政再建というテーマがある限り、ある程度のスピード感を持って取り組まないと海外からの信用にも影響してくる可能性がありますからね。このままの増大傾向を放置する訳には参りません。ただ、財政再建策だけに目を奪われてしまいますと、今までの「政策デフレ」圧力と同様に、経済全体への悪影響というか、これぞ正しく副作用というものも顕在化してくる訳ですから、何といってもバランスが大切です。前にもちょっと書いたのだが、鋭い嗅覚というか天性の勝負勘を持つ小泉さんが「消費税増税はまだ早い」と明言して、経済全体への「心理的な悪化」というものを封じ込めたことは、ズバリ正しかったと思いますね。
時間が取れたので、追加しました。
一応原文をご自身でお読み下さった方がいいと思いますが、やり取りの一部をピックアップすると、次のような部分がありました。
竹中「(略)いずれにしても、この要対応額という概念は小泉改革を御破算にして、それからどれだけ対応額が必要かということを計算しているという問題点が第一点、それと、成長率が違うと数字も根本的に違ってくるので、その複数のケースの議論をするべきと、その2点は申し上げておきたい。」
小泉「私も説明を聞いてよくわからない。竹中議員がわからなくて、私がわからなくて、一般国民がわかるだろうか。専門家はわかるだろう。一般会計でどの程度削減しなければならないかを出してほしい。社会保障費は、一般会計で今年20兆円ぐらいだろう。公共投資も7兆円台だろう。国と地方を合わせたものなら、国と地方がどうなるのかというぐらいを出してほしい。その方がわかりやすいので、お願いする。」
吉川「竹中議員からお話があったので、その点だけ簡単にご説明する。20兆円という数字はどのようにして出てきたかということだが、これは『改革と展望』を基にしており、竹中議員が経済財政政策担当大臣をされていたときのシミュレーションなどでも、非改革ケースというのはほとんど似た形でやっていたと思う。(中略)このシミュレーションで最終的にどこまで抑えなければならないかという抑えるべき目標水準は、表現ぶりはともかく、同じになるということだ。竹中議員が2番目に言われた、成長率によって数字が変わってくるのではないかということは、そのとおりである。今回は機械的な試算なので、2011年時点では、『改革と展望』の参考試算に基づいて、名目成長率は3.2%としている。ただし、4%の名目成長率についても試算はしてもらっている。3.2%名目成長率というのは、実質成長率1.7%、インフレ率1.5%を足したものだが、仮にインフレ率が1.5%ではなくて2.3%で4%成長ということになると、2011年時点での要対応額は20兆円ではなくて19兆円となる。したがって、数字が根本的に違っているわけではなく、むしろ基本的なストーリーは、それほど変わらないのではないかと考える。」
(中略)
竹中「いずれにしても、これは問題意識を共有する、クリアなイメージを作るものにはなっていない。我々に対しても今のような説明をしないとわからない形になっている。今後はそういう協議を是非お願いしたい。」
小泉「この資料を基にして、経済学を勉強していない一般国民も常識でわかるような、書き言葉ではなく話し言葉で「こういうことです」という講演をしてくれないか。私はその講演録を読む。その方がわかりやすい。それを是非お願いする。」
こういったやり取りがあったわけであります。今回の説明・配布資料には、この民間議員からのペーパーが示されておらず、与謝野大臣の記者会見での説明だけですので、正確には判りません。ただ言えることは、将来見通しで今までと同じ規模の財政支出をするとして、名目値は増えていくのと利払いも増えていくので、それをまかなうのには20兆円くらいは必要になるであろう、ということですね。平ちゃんがかつて内閣府から出していた資料とほぼ同じ水準であると吉川先生は仰っておられるので、要するに「自分の作ってた数字でしょ」と切り返されたわけですね(皮肉まじりかな?)。平ちゃんは「数字を出す前に、予め検討させてほしい」ということを事務方にお願いしていたようですが、内閣府官僚たちから「仕返し」をされた?ということでしょうか。平ちゃんに「マクロ分析くらいやっとけ」(竹中大臣の要望)と言われたのが、よっぽど恨みを買ったということでしょうか(そんなわけないか、笑)。それはいいのですが、なんてったって竹中・中川路線の掲げる重要政策がありますからね。それは・・・アレですね。
今年の流行語大賞へのノミネートが狙えるキーワードがあります。
『The Economist』誌編集長のビル・エモット氏の著書で、昨年末から話題となりましたね(そういえば、退任報道がありましたね)。『The sun also rises』(日はまた昇る)です(バブル期には「日はまた沈む」で名を馳せたそうですけれども)。昨年の日米首脳会談でもブッシュ大統領に小泉さんが「サンライズ」とかって(「あれ、英語でなんて言うんだっけ?」とか何とかも言ってた)、使っていました。そうです、「rising」(ライジング)ですね。竹中・中川一派は「上げ潮政策」― rising tide policy ―を掲げています。日いずる国~日ノ本であるところの「ニッポン」ということで、「the Land fo the Rising Sun」に引っ掛けたエモット氏のタイトルと同じ意味合いだろうと思いますね。外人の(米国人の経済学者と新聞か何かに出てたように思う)指南役が付いているからでしょう。ですので、今年のキーワードとしては、「ライジング」を挙げたいですね。これ、今のところイチ押しです。
吉川先生は押し出しは強くはないが、大変冷静に経済・財政を見ていると思います。資料に挙げた対談もとても面白くて、政治学者の飯尾先生(よくメディアにも登場しますね)に経済学の基礎を講義しています(笑)。内容的には言い尽くされた事柄ばかりですが、重要なことは総括的な部分で「共通の理解」は出来ている、と認識していることですね。
第6回「財政再建やデフレ脱却などマクロ経済管理とミクロ面での構造改革とを両立させる選択肢」
是非とも中身をお読み頂きたいと思いますけれども、一部分だけですが、印象的な部分をピックアップしてみましょう。
「一方で、日本経済、変化の方向はともかく、水準としては天井よりも低い。経済学者、エコノミストの言葉遣いで言えば、GDPギャップがある。これは明らかに需要不足を示している。私自身はこの立場に立ち、需要不足だと考えております。
需要不足があると、もし構造改革というのが純粋なサプライサイドのポリシーだとすると、的外れだということになる。なぜなら、それは天井を上げることでしょう。現実が天井より低いところにあるときに天井を上げても意味はない。それは、GDPギャップを広げるだけで、現状をよくすることにはならないのではないかということになる。天井と現実が合っていて、その天井があまりに低いというのが問題だというのであれば、サプライサイドを強くして天井を高くするのは大いに意味があるわけですが、天井よりもずっと低いところにいるときに天井を上げても意味がない。
天井を上げるようなことは的外れじゃないかという論者の代表選手は、たとえば海外ではポール・クルーグマンです。日本でも、ケインズ派の人たちの中には、そういうことを言う人はかなりいます。財政積極論者の人は、当然このような考えを持っています。ただ、需要が足りないというのはその通りなんだけれども、持続的な需要と場当たり的な需要というのを、分けるのが一番大事ではないかというのが、私の持論です。」
「私は何よりも需要創出型の規制改革というのが、今一番大事だと思います。本当の意味での弱者を、社会の合意を得た上で支えるのは当然のことだと思いますけれども、そのためにいくらお金がかかるかという問題があります。弱者というのが、ただ口実になっているケースもあるわけです。」
「まず第1に政府は、見通しをちゃんと言ってないじゃないかと民間の方がおっしゃることがあるんですが、それはそうではなくて政府としても、「改革と展望」というもので完全に明らかにしているんです。今後5年、それからもう少し長期の10年を考えて、日本経済はどういうふうに成長していくか、財政がどういうふうに推移するかということを明確に数字で出しているわけです。ところが、どういうわけかこれもあまり読まれません。政府としては、日本経済の中期的な展望を示しているわけです。外れる、当たるということとは別にして少なくとも明らかにしていることは間違いないんですよ。」
「デフレというのは、インフレもそうですが、貨幣的な現象だという言い方をよく経済学者やエコノミストはします。物の値段なのだから、貨幣、マネーに関係したことだろうと。ということは、それをつかさどる、あるいはコントロールする金融政策によって最終的に決まってくる問題だということになる。したがって、この問題に対する責任は、日本銀行が第一義的に負うべきだという議論があります。それで、日銀に対して、インフレターゲットを掲げて、もっと果敢に金融を緩和しろという話をするわけです。」
「ベースマネーは30%増えていますね。しかし、市中の預金を中心とした、いわゆるマネーサプライ、これはM2+CDというんですが、それが大体3%ぐらいの伸びでしょうか。さらに銀行の貸し出しになるとマイナス2~3%のマイナス成長です。
現在の日本は、そういう姿なんですよ。日銀流の言い方では、ベースマネーの30%増というのは、これはまさにextraordinary(並外れた)だということになる。アクセルは目いっぱい踏んでいる。だけど、トランスミッションがいかれている。トランスミッションというのは市中銀行。それはなぜか。理由は不良債権だ。こういう話ですね。これが日銀のスタンスでしょう。」
(飯尾先生の質問、「確認しますが、デフレは解決すべき問題なんですよね」に対して)
「それは経済学者、エコノミスト、全員一致しています。中にはユニクロ現象とかいって、物価が下がるのはいいことだと言う人もいますが、それは個別の価格の話です。メーカーが頑張ってくれてパソコンの値段が下がるのはいいことですよ。それはいいことなんだけれども、一般的な物価水準が下がるデフレはそれとは別です。デフレがトラブルだということでは、経済学者は全員一致しています。
ちなみに、これがトラブルだということを経済学の歴史の中で、非常に強く言った経済学者はアーヴィング・フィッシャーです。フィッシャーはアメリカの大不況で、自分も財産を失ったのですが、資本主義経済というのは、振り子のように、安定化の機能を持っているんだけれども、それが壊れてしまうことがある。その条件は2つあって、好況のときに企業が過大な債務を負うこと。その後にデフレが来ること。この2つが重なると、資本主義の安定化機能が壊れてしまうと言いました。 」
こういう具合でして、ライジングチーム(竹中・中川一派)と特別な政策的対立を際立たせる訳でもないのですが、何故か最近は平ちゃんとの折り合いが・・・気まずく?なっている訳ですね。平ちゃんにとっては、事務方への不満というものがあって(総務省の大臣なんだから、内閣府へはあまり口出しできないのではないかと普通思うけれどね)、「(出す前に)オレにも見せろ」ということを要求するのですけれど、言うことを聞いてくれない(笑)から、勢い民間議員たちや与謝野さんとか(+谷垣くんも?かな)の財政一派への不満に置き換わってしまっているかもしれませんね。
諮問会議内での「経済学の授業」(by 小泉総理)を細かくやって対立することよりも、政治的な成功を目指すべきで、平ちゃんの戦術は悪いと言わねばならないでしょう。それは(長いので略して)「ライジング政策」をダーンとぶち上げて独り舞台を演出するよりも、共通の「目指すべき地点」というものを明確にしていくことの方が重要であろうと思いますね。それにコンセンサスが得られていれば、残るは政策手段とか優先順位の問題で、本質的な違いというものを減らせますよね。
例えば、
・絶対にデフレを終息させ、逆戻りさせない
・名目成長率は中期的には3.5%前後(±0.5くらい?)
・プライマリーバランスをゼロ近傍にする2012年前後以降には4%を基準にする
(「日本21世紀ビジョン」でも12年までは”3%台半ば”、13~20年では”4%以上”を想定している)
ということでもいいのではないかと思いますね。これらは、既に出来上がっているものですし、特別な反対論なんてある訳ないんですから。自らが決めたものですし。諮問会議にもこのビジョンは上がってきて、みんなで数字も見てたハズですね。一緒に答申したんですから、今更「前には知らなかった」とか「そんな積もりで同意したわけではない」なんて無責任なことが出てくることもない訳ですし。皆も大体同じ考えなんだ、ということを、もう一度確認した方がいいですよ。平ちゃんも、吉川・本間両先生も(笑)。
あとは、需要創出型の改革を考えていってもらえれば。雇用の問題についても、そういう意味合いですよね。
去年書いた記事ですけれども、挙げておきたいと思います。
経済学は難しい9
発散を防ぐ基本的な方法というのは、同じようなものですよね、きっと。
全く無関係ですが、yahooの新たなカテゴリーに「政治」というのが出来て、一般国民が行政の情報にアクセスしやすいページ(「みんなの政治」というタイトル)が出来ました。これはとても良い試みだと思います。議員検索とか、法案の情報なども出ていて、普通の人達が関心を持ちやすい感じになっています。今後、こうした「入り口」があることで、行政とか政治への理解が進むことを期待したいですね。