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名目成長率と長期金利・2

2006年03月24日 21時45分39秒 | 社会全般
昨日の続きですけれども、追加すると言っていたのに実行できませんでした。眠くかったもので・・・失礼しました。


前回での主旨を大体まとめると次のようなことです。
・「日本21世紀ビジョン」をもう一度読め(大体書いてある、笑)
・名目成長率の水準というのは、あくまで平均である
・現時点での低水準からスタートなので、後半は高い水準が必要になる
・「長期金利=名目成長率」の関係で書かれているのが基本パターン

前回は名目成長率の話を中心に書きました。今度は長期金利について書いてみます。


以前にも記事に書いたのですが、「フィッシャー恒等式」を再掲しますと

名目金利=自然利子率+期待インフレ率

です。自然利子率は長期的には「潜在成長率」とほぼ同じです。従って、この潜在成長率の読みがどの程度なのか、ということから見てみましょう。今までの吉川先生と平ちゃんとの論争などから窺えるのは、「諮問会議水準」では約1.7%という認識ですね(日銀はもっと低いのですが)。平ちゃんは2%で、というスタンスです。ここに割り込んできたのが、経済産業省でして、恐らく「チーム+0.5%」でも結成されたんでしょう(笑)。


<ちょっと寄り道:環境省は「チーム・マイナス6%」ですけど(CO2削減の目標が6%だから)。これのパクリでしょう。って、パクッたのは私ですね。因みに「会員ナンバー100番 渡辺満里奈」ですよ、環境省の方は。おにゃんこ時代の番号は知らんけど。恒三さん御贔屓の由美かおるさんは41番ですと。微妙な番号です。切り番でも何でもないけどね。環境省のHPに出てた。>


経済産業省は潜在成長率を2.2%に押し上げよう、って作戦だそうですよ。米国(テイラールール)の2.2%に触発されたとか?急に成長戦略とか言い出すのって、何だかクサイんだよなー。まあ、いい。1.7と2.2%の中間くらいなのが、ライジングチームの2%程度ってことだね。潜在成長率が2%程度であるとした場合には、フィッシャーの式に書くと次のようになります。

名目金利=2+期待インフレ率


日銀が先日量的緩和策を解除した訳ですが、この時の注釈としては大雑把に言うと
)日本では諸外国に比べ、長期的に物価上昇が弱い(=期待インフレ率も小さい)
)長期的な消費者物価上昇率は1%台
)審議委員の想定する安定的なCPI (≒インフレ率)は中心値で約1%

ということが挙げられていました。つまり、過去の長期的な傾向を見れば、期待インフレ率が2%程度に収まる確率が高く、金融政策担当である日銀が「CPI で1%」程度を示しているのですから、ヘタすりゃ「期待インフレ率が1%を超えて行きそうだ」ってな見通しである時には躊躇なく「引き締め」に走る可能性も否定できないわけです。となれば、期待インフレ率が2%を大幅に超えていくことは想定しにくいのではないでしょうか。レンジとして考えてみれば、現時点では右辺の2+2=4というのを大幅に上回る事態というのは想定しにくい、ということです。


<ちょっと寄り道:しつこいようで申し訳ありませんが、本当に日銀のHPがリニューアルされてしまっていた。被害は広範囲に及んでいる(特に日銀批判派?)ようですけれども、私も例に漏れず、「お気に入り」に入れておいたペーパー(心の底から決して「お気に入り」なんかではないのに!)などがマジでネットの闇空間に”逝って”しまって、「大変申し訳ございません」と。怒。何で前と同じURLで残さないの!それとも、ワザと何処かに逝かせたんではないですか?過去のマズイ記事などは、見つからない場所に置いておけ、ってなことで(笑、そりゃ違うか、さすがに)。でもね、「金融政策の枠組み」を新たにするのと、「HPの枠組み」を新たにするのは全然意味が違います、ってば!ああ、恐らく今までは非常にマイナーであった『教えて!にちぎん』コーナーは、少なくとも一部の人々には知名度がアップしたかもしれないですね。良かったですね、にちぎん様。笑>


元の話に戻りますけれども、今の日銀の姿勢からすると期待インフレ率を2%以上に跳ね上げるというのは、これは中々困難であろうな、ということですね。つまり、名目金利は「4%の壁」というのが概ね出てきそうです。国債金利は必ずしも長期金利と同一ではないですし、リスクプレミアムも上乗せされてくるであろう。なので、市場での判断というのが「4%の壁」を楽勝で越えて行ってしまうかもしれないです。この可能性だけはあります。ただ、市場というのは、非常に複雑でして、金利は国内の状況だけを見ている訳でもないですよね。


現在最も大きな影響力を持つのは、日米の金利と為替でありましょう。量的緩和解除前には、「日米金利差が縮小」との思惑から大幅に円高(115円台をつけた)となりました。短期金利を中心に急速な金利上昇が見られたことがキッカケであったかもしれません。いずれにしても、現在の日米長期金利の金利差というのは、日本の約1.6%に対して米国では約4.6%です(ともに10年債指標金利)。つまり金利差は約3%程度となっていて現在の為替水準なのですね。米国の長期金利の長期的トレンドは低下傾向であり、昔は10%超とかもあったのですが、段々落ち着いてきました。大抵の先進国で長期金利は一定水準まで低下してきており、要するに経済発展と長期金利は似ているのですね。発展していけば、概ね長期金利は低下する傾向だということです(勿論色んな影響を受けるので一概には言えませんけれども)。なので、米国長期金利が今後8%とか10%ということは想定しずらく、今後5~10年程度の変動範囲で考えても、5%程度が上限ではないかと思われます。従って、上の制限(米国長期金利)としては5%というのがあって、日本の長期金利が仮に4%となりますと、金利差が1%となってしまいますので、その分の円高が促進される、ということになります。為替は色々な要因で変動しますので、金利水準だけで比較することはできませんが、それでも現在の金利差の3分の1になる、というのは結構なインパクトがあるのではないかと思えます。ですので、日本の金利水準だけがどんどん上がっていく、ということはあまり考えられず、特に現在のようにグローバル化が進展していれば、多国間の影響度というのはそれなりに出てくるはずだろう、と思われます。


これらの要因をまとめると

)期待インフレ率が2%を大幅に超えていくことは、当面難しい
・日銀の姿勢が、すごく厳しいから
・日本の過去からの長期的傾向

)金利差と為替の関係上、日本の金利だけが大幅に上昇するということは想定しにくい
・特にドル円為替が円高となるため、輸出産業の収益減少等が経済成長を減速する


ということです。なので、「期待インフレ率」の部分での論争というのは、あまり意味がないと思いますね。そもそも期待インフレ率での話ではなくて、潜在成長率の部分での話しでありましょうけれども。であれば、潜在成長率を2.2%に引き上げましょう、という二階さんの御提案というのは、他の与謝野さんをはじめ、吉川先生等民間議員たちも「猛反発」するべきですけどね。期待インフレ率が同じであるとしたら、残るは潜在成長率の部分だけなんですから。この数字を1.7と見るか、2と見るか、二階さんの言う2.2と見るかで、違いがある、ということなんですから。


普通に書けば、長期的には

名目成長率=潜在(実質)成長率+物価上昇率

で、物価上昇率は概ね期待インフレ率に近似するでしょう。まあ、CPI とGDPデフレーターを用いると違う数字ではあるかもしれないけれども。長期金利水準の3%と4%の違いを何処に求めているんでしょうか?与謝野さんや吉川先生は。例えば、吉川先生は名目金利を4%と仰っていますので、4=潜在成長率1.7+期待インフレ率?%ということですから、期待インフレ率は何と「2.3%」という数字になってしまうんですけど。これでいいの?日銀派の方は。
でも、名目成長率は3%ですから、3=潜在成長率1.7+物価上昇率1.3%ということなんですよね?物価上昇率と期待インフレ率が常に1%違っていなければならない、ってことですよね?これってかなり難しくないですか?長期金利(国債指標金利)と名目金利は同じではない、ということなのかもしれない(どうなんでしょうか?)。


因みに、経済産業省は、物価上昇率を0.9~1.4という数字にしているようですが、一体全体どういった根拠でこの物価上昇率を出してきたんでしょうね。経済産業省の資料を勉強していないので、分らんけど。潜在成長率を2.2%まで引き上げるという、言ってみれば「強気」の見通しの割りには、物価上昇率のレンジは「弱気」だね(笑)。なんでだろ?これはまあいい。経産省は「名目成長率を道具にすんな」とか、ぬかしているみたいだが、インフレ率は大事なんですよ、ボケカス。これは国民の「誰が犠牲になるべきか」ということでもある。ひどい言い方なんだが。日銀だって、やり方次第でこの犠牲者の層を決められるんですよ。なので、名目成長率、ひいてはインフレ率のレンジには大きな意味があるんですよ。