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格差社会9(ちょっと追加)

2007年01月23日 20時57分15秒 | 社会全般
日本はこれまでのところ、「諸外国に比べて格差が著しいということは言えない(=それほど酷い格差社会とはなってこなかったであろう)」ということだったと思いますね。でも、今後どうなるかは判りません。今20歳の男性が将来80歳で死ぬ時点で見れば、この男性にとっては「酷い格差社会だったな」という感想も十分有り得るかもしれない、ということです。今までの実績に基づいた国際比較が、今後の社会(でもそうだ、ということ)を「約束」している訳ではない、ということは覚えておいた方がよさそうです。十分注意が必要でしょう。それは後ほど触れたいと思います。


またまた古びたシリーズ復活です(笑、近頃の傾向?なのかな)ので、これまでのおさらいをしておきましょう。


格差社会1

格差社会2

格差社会3

格差社会4

格差社会5

格差社会6

格差社会7

格差社会8


で、シリーズにはなっていないが、こちらも。

階層意識って、本当に変わったのか?

格差拡大論争

格差拡大論争~その2

かなり無駄に長いのですが、お気の向いた方はどうぞお読みくださいまし。メディアの「ウソ」みたいな事例も具体的に登場していたりしますので、メディア批判の参考にはなるかもしれません(違うか)。


で、今回のネタは、内閣府がとても頑張ってくれて(とは言っても、ESRI 内部じゃなく委託先である外部の民間研究機関の人だと思う)、「日本の格差はそうでもないよ!!」ということを、以前の月例報告みたいな「さみしい」感じじゃなく、もっと大々的に報告しようよ、ということにしたんだろうと思う。昨年末にチョロっと報じられてたが、イマイチ誰の関心も得られず(これぞ行政情報の「待ち組」決定、笑)、かなりガッカリした様子だった(って、見たわけじゃないけど、多分そうかな、と)。でも、「もっと頑張って政府広報やろうよ、内閣府」というような内部的ハッスル(死語?)部隊が登場したんでしょう、きっと(笑)。

そういう流れで、今回のナイスなESRI のペーパーを出させて頂きます。これは私も、ナルホド、いい報告だな、と思いましたよ。勉強になるし。これからの方向性を考える上でも、示唆に富んでいます。


必ず本文をお読み頂きたいのですが、私の非常に乱暴なまとめをしますと、次のようなことになります。

1)日本の所得再分配―国際比較で見たその特徴

①再分配機能は弱い
②中間層に有利で貧困層には厳しい
③社会保障の再分配機能は富裕層で全然効いてない
④現役世代への給付が少ない

どちらかと言うと、中間層よりも上の人たちには有利に働きそうですよね。高額所得者の税率が低いというのはあるかもしれないですが、基本的に財源としての所得税の比率が低いというのはあると思います。社会保障負担ですけれども、これも随分と前に書いたことですが、高額所得者たちというのは保険料の等級上限がある「リミット制」になっている為に、所得額に比例しない負担で済むことになっているので、所得が高額なほど有利になります(相対的に保険料負担比率が下がる)。これを是正するべきです。更に、現役世代への給付が少なすぎるので、これも何か考えるべきでしょうね。フランス並みに手厚くしてくれ、とまでは申せませんが。それから、最も多数派である中間層のサラリーマンが文句を言うかもしれませんが、「再分配効果」をこの最大多数派が得ることによって、それより下層の「貧困層」への再分配を奪っているであろう、ということは推測できるのです。以前、山口氏も書いていたと思うが(H-Yamaguchinet 賃上げより前にやるべきこと)、多数派が実は得しているのですから、その一部を低所得層に回してあげてもいいんじゃないか、ということですよね。

なので、対応策としては、
・高額所得者への課税強化、社会保障負担強化
・中間層から下層へ再分配比重を高める
・現役世代への給付を増やす
・課税を多くして、再分配余力を増やす

というような感じでしょうか。

2)日本の賃金格差は小さいのか

①賃金格差は大きくない(真ん中辺のやや下)
②生涯賃金格差は最少グループかも
③相対的に下位層での格差はやや大

こちらは、下手をすると「日本に格差はないんだ」という誤った勝利宣言(笑)に利用されるかもしれませんのでご注意を。

<ちょっと寄り道:
朝日新聞あたりは、OECD報告から日本は「相対的貧困率が上位(3番目)だ、”ず抜けて”いた」ということを力説(格差拡大を海外からも心配される日本)していた訳ですが(笑)、それもイマイチ説得力が弱くなってくるかもしれませんね(冗談です)。けれど、朝日新聞風な論調を用いるとすれば、例えば「日本はG7の中で、”ず抜けて”生涯賃金格差が少なく、最も格差が小さい国だったことが裏付けられた」という具合になり(「裏付けられた」が好きなのは日経さんだったか?)、これを読む記者氏はどう思いますか?ってことなんですよ(笑)。ムカムカしてきますか?でしょ?ならば、いつも「そうならないような表現」を心掛けるべきなんですよ。「G7中では生涯賃金格差が最も小さいと考えられたが、相対的貧困率では上位3番目で、特に下位層での格差拡大の懸念がないとは言えない」とか、淡々と書けばよろしいと思いますけど。なのに、記者自身が優位的であるというような心理を自覚する場合、それをモロに記事の文中にちりばめてしまってると思いますよ。「ホレ、見たことか」とは書いてなくても、記事を書いてる記者の得意満面の顔とか心情が文中に出ちゃってるもの(笑)。それが伝わってきてしまうのですよ、マジで。>


ええっと、元に戻りますが、問題は下位層での格差拡大というで、多くは若年層が該当してきそうだというのは普通に推測できますよね。若年層ではフリーター等の非正規雇用者の割合が高い為であり、結果として下位層に多く若年者が存在するであろう、ということです。これは初めから内閣府が言ってたように、「若年層で今後格差拡大の恐れがあるので、要注意」ということです。これは上の参考記事(格差拡大論争)に書いた通りです。

今回調査結果での賃金格差、生涯賃金格差というのは、一応今までの人生モデルであれば、「あまり大きな格差はないかもね」ということであって、現状フリーターとかニートの道に進んでしまった若年者たちが40年後とかになったような時点では、その道を選択しなかった同年齢の人と比べるとかなり大きな差になったりする可能性もあるんじゃないの、という心配があるんですよね。なので、現時点(というか少し過去の時点だけど)では、日本はそんなに格差社会じゃない、ということは言えるかもしれない、というだけなんですよね。今後20年くらいした時点では、50歳前後の人たちの何割かは日雇いのままとか、短期雇用のままであるとか、過去の50歳くらいの人に占めていた非正規雇用者の割合に比べてもっと高くなっているかもしれない、というような危惧です。

1)の項目で見たように、賃金格差を是正する方向としては、労働政策面以外に再分配政策を見直すということが必要なんじゃないのかな、と。税制も社会保障負担も一体で見直すべき、と何度も言っていますが、今回も同じくそう言っておきたいと思います。



ちょと追加アルね。中国のアンバランスは酷いアルね。男多すぎアルね。
コレ>finalventの日記 - 今日のtypo 「のたらさない」

前にも書いたアルね。
中国の非モテは日本よりも非モテ(笑)

これって、他人事だけど深刻だよね~ホントに。だって、野郎ばかり余るから、勢い、ストレス発散できず犯罪なんかも多発しそう、とか書くと、突撃されるかもしれんが。「私ちゅこくの人でーす」みたいに、日本にたくさんやって来てたら、中国も女性の逆輸入でもしないと供給が間に合わないわな。となれば、ふっふっふ…人類史上空前の少子高齢化に見舞われるのが中国なんですよ(前から言ってるが)。

栄耀栄華は長続きしないものなんじゃない?……(←『ダメな議論』)



個人消費のこと

2007年01月23日 17時04分23秒 | 経済関連
これは特に個人批判とかそういう積もりではありませんので、予めお断りしておきます。

小売の業績を見るとき、デパート、スーパーやコンビニなんかの売上高というのが確かに参考にされるけれども、ネット経由での売上高や通販なんかだと追跡が十分でないことは考えられる。そりゃ、そうだね。なので、ネット経由での販売に移行する割合が増大すれば、既存の小売業界の売上高が減少するかもしれない、というのは判るね。


まあ、そういう一面はあるかもしれないが、統計上の数値というのは―必ずしも信頼が置けないということは有り得るが―何も小売の売上実績だけ見てるワケではない、ということを申し上げておきます。この前、こちらの記事で、『家計調査では、勤労者世帯の消費はマイナスが依然として続いているのですよ。それは、所得が伸びていないということもあるだろう。』という風に書いたわけですが、これは小売業界の売上高なんかとは別な統計資料ですので、売り手側から見た数字ではなくて、買い手側(一般の消費者ですね)から見た数字、ということになるかと思います。メディアの報道などの時には、こうした「裏取り」みたいな作業をしないというのは確かに多いと思いますけれども、「いくつかの数字、データ」を見た結果、「消費は停滞」と考えている、ということを書きました。報道する側こそ、その信頼性は私のような個人の妄想ブログなんかと同じ水準ではなくて、もっと「高い水準」が要求されることは当然ですよね。

雇用者賃金の伸び、といった数字でもいいと思いますけれども、「給料が確実に上がっている」、(ちょっと意味が違うけど)「労働分配率が堅調に上がってきている」、「ULCがマイナスから大幅にプラスになってきた」、というような指標なんかでも景気拡大が個人レベルに波及していることが確認できれば、それは明るい未来という見通しでいいと思いますね。でも、定率減税がなくなるのは「確実」ですので、そのマイナスを上回る賃金上昇がなければ、所得低下は避けられないわけですよね。今の名目賃金上昇率が果たしてどれくらいでしょうか?

例えば、厚生労働省が04年時点の年金改革で、将来推計に用いていた名目賃金上昇率は2.1%です(爆)。毎年これだけの「高い賃金上昇」があってはじめて「厚生年金の保険料」が集められる予定なのですよ(タヌキも獲れんクセに皮算用だけは一丁前で…大衆の目先だけ誤魔化すのは朝飯前だ罠)。05年、06年の上昇率はどうだったのでしょう?せいぜい1~2%未満といった程度の伸びでしかないでしょう。しかも、所定内賃金に関しては06年度上期はマイナスです。所定外賃金やボーナスが伸びただけでですね。雇用者所得は伸びていますが、労働市場に新たに参入してきた人たちが数十万人規模で増えた(=失業率低下、雇用者数の純増)のであれば、数的寄与度が大きくなるだけで、一人当たり・時間当たり賃金で見ればほとんど上がってないと推測しています。つまり、今までよりも長く働かされたから、その分賃金は増えただけで、実質的には全然増えてないというのが本音でしょうね。逆に、社会保障費の負担(年金、介護保険料はアップ)や定率減税の段階的廃止によって、手元で使える実際のお金は増えてない(逆に大きく減っているだろう)というのが実感なのではないかな、と。

「97年ショック」はあったが、駆け込み需要なんかもあって経済指標が最悪になる前だったので、97年が名目上で可処分所得が最も多かった(翌年の98年以降坂道を転げ落ちていった)と思う。この年と05年の名目賃金を比べると、約93%程度でしかない。デフレで物価が低下したこともあるから、実質所得としてはそれほど落ちてないかもしれないが、個人のバランスシート上では、97年以前から抱えていた負債なんかがあると返済負担が重くなっているし、資産価値の下落なんかもあるかもしれない。つまり、相対的に負債は大きくなり、資産は劣化したということで、その上給料は減らされ社会保険料負担や医療費の自己負担を増やされた、というようなものです。

福井総裁は05年末には「物価だけじゃなく、ULCは先行きプラスに転ずる、だから量的緩和解除→利上げというシナリオでいいんだ」というようなことを言っていた(雇用改善とULC)わけです。その見通しが実際どうなっていますか?というのは、検証されてないんですよね。メディアも見てない。いいんですか?こんなんで。ULCは依然としてマイナスであるかもしれないのですよね。本当にプラスになってきたのであれば、正式に日銀が発表してみて欲しいもんだ(笑)。

まさか、「日経消費予測指数」だと06年に入ってからもグングン「うなぎ上り」だから、「本当は05年よりももっと消費は強いんだ」とかいう解釈をしてるのかな?(笑)そんな理由で「消費は強いし、家計にも波及しているんだ」とか言ってるワケではない、とは思いますけど。

何れにせよ、メディアの報道の仕方は抜けが多いし、ウソも多いし、一断面だけを取り上げがちだし、過去を振り返って評価することもまずしないし、信頼性を高めるような努力もない、という傾向はあると思いますので、「メディア自身は正しい判断ができてない」ということに大いに同意できます。それができるのであれば、もうちょっと違った報道になると思いますよね。