この前、本当に「失血死であったのか」ということを疑問に思い、ちょっと記事(福島産科死亡事件の裁判)に書いたりしたのですが、推測とは全く違っていました。事件の概要について詳しく載っていた本物の産科医の方のブログを読みました。
ある産婦人科医のひとりごと 大野病院事件
これで見ると、出血量は約12000mℓとなっており、本当に大量出血であったようです(朝日の記事の検察側冒頭陳述要旨)。これでも、確かに出血が多くて失血死と言う可能性は皆無とは言い切れませんが、もっと重要な証言がありました。それは、子宮摘出後に「心室細動」を生じたという点です。ここに重要なカギがあるのではなかろうか、と思われました。
心室細動というのは、心臓から血液が送り出されなくなるという致死的状態で、突然死の原因として最も多いと考えられています。一刻も早く除細動を実施し、言うなれば「再起動」に成功しないと死亡します。せいぜい猶予は数分間しかありません。術中であったことから、心マッサージをすぐできたにせよ、除細動が奏功するかは何とも言えません。心臓が拍動を再開するかどうかは、不明なのです。この事件での、直接死因は心室細動であった、というのはほぼ間違いないのではないでしょうか。
ここに一つの可能性が思い浮かびます。
それは次のようなものです。
・出血量が極めて多かったので、大量輸血を必要とした
・大量輸血による、高カリウム血症の可能性
・高カリウム血症が背景にあるとすれば、心室細動発生リスクは高まるのではないか
ということです。出血自体は多ければ勿論生体にとっては良くないことが圧倒的に多いのですが、それでも致死的状況とはなり難いと思うのですよね。前の記事にも書きましたが、出血量が1万超えというのは、他の手術でも有り得る話だからです。しかし、心室細動が惹起されたのであれば、これが致死的となってしまったというのは判る気がするのです。
通常の輸血用の血液というのは保存血であり、内容液に保存液が含まれています。この保存血は保存期間が延長すれば、カリウム濃度が高まることが知られており、普通用いられる保存血は全部照射血(GVHDを防ぐ目的で照射されている、それでも完全には防げないが)だし、保存日数が経っているものほどカリウム濃度は上昇するのです。
本件の輸血用血液は足りなくなって、あちこちから緊急でかき集められて持ってきたのだろうと思いますが、その量が何十パックにも及ぶものであったと推測されます。その中には、保存日数がある程度以上経過しているようなものも恐らく含まれていたでしょう。そうして、輸血をポンピングで急速に入れなければ間に合わないような量の出血だったのでしょう。それでも、循環は何とか維持されていたのだと思われます。しかし、相当量の輸血をした後であった為に、血液中のカリウム濃度は次第に上昇を続けていった可能性があったのではないでしょうか。以前に少し触れた(参考記事)ことがありますが、細胞外のカリウムというのは、人体にとっては危険な物質なのです。なので通常は血液中のカリウム濃度というのは、極めて厳密に狭いレンジで維持されているのです。しかし、血液中のカリウム濃度よりも高濃度になっているかもしれない(ひょっとして1.5~2倍くらい?)保存血を大量に輸血していけば、高カリウム血症の状況が起こりえるかもしれないかな、と思います。ただ、大量に出血もしていたので、入れても入れてもどんどん出て行っていくのですから、他のリンゲル液などが一緒に入ってるだろうし、必ずしも血中のカリウム濃度が高かったかどうかは不明なのですけれども。データを見ない限りは、判定のしようがないですし。
しかし、置かれていた状況だけ考えると、有り得ない話ではないのではなかろうか、とも思ったりしましたもので。
なので、まとめると、
・大量の輸血が必要
・保存血中の保存液には、生体の血液よりも多いカリウムが含まれていた可能性
・高カリウム血症か、もしくはそれに近い状況があった可能性
・その為、心室細動が惹起されやすい状態にあった
・直接死因は失血ではなく、心室細動
ということです。
素人考えなので、何とも言えない訳ですが。
追加だけど、またTBが全く届かないな。何でだろう?
ひょっとして、何処にも送れないのかな?拙ブログの場合には(笑)。
まあ、仕方がないか。届かないような設定とかってあるのかな?
ある産婦人科医のひとりごと 大野病院事件
これで見ると、出血量は約12000mℓとなっており、本当に大量出血であったようです(朝日の記事の検察側冒頭陳述要旨)。これでも、確かに出血が多くて失血死と言う可能性は皆無とは言い切れませんが、もっと重要な証言がありました。それは、子宮摘出後に「心室細動」を生じたという点です。ここに重要なカギがあるのではなかろうか、と思われました。
心室細動というのは、心臓から血液が送り出されなくなるという致死的状態で、突然死の原因として最も多いと考えられています。一刻も早く除細動を実施し、言うなれば「再起動」に成功しないと死亡します。せいぜい猶予は数分間しかありません。術中であったことから、心マッサージをすぐできたにせよ、除細動が奏功するかは何とも言えません。心臓が拍動を再開するかどうかは、不明なのです。この事件での、直接死因は心室細動であった、というのはほぼ間違いないのではないでしょうか。
ここに一つの可能性が思い浮かびます。
それは次のようなものです。
・出血量が極めて多かったので、大量輸血を必要とした
・大量輸血による、高カリウム血症の可能性
・高カリウム血症が背景にあるとすれば、心室細動発生リスクは高まるのではないか
ということです。出血自体は多ければ勿論生体にとっては良くないことが圧倒的に多いのですが、それでも致死的状況とはなり難いと思うのですよね。前の記事にも書きましたが、出血量が1万超えというのは、他の手術でも有り得る話だからです。しかし、心室細動が惹起されたのであれば、これが致死的となってしまったというのは判る気がするのです。
通常の輸血用の血液というのは保存血であり、内容液に保存液が含まれています。この保存血は保存期間が延長すれば、カリウム濃度が高まることが知られており、普通用いられる保存血は全部照射血(GVHDを防ぐ目的で照射されている、それでも完全には防げないが)だし、保存日数が経っているものほどカリウム濃度は上昇するのです。
本件の輸血用血液は足りなくなって、あちこちから緊急でかき集められて持ってきたのだろうと思いますが、その量が何十パックにも及ぶものであったと推測されます。その中には、保存日数がある程度以上経過しているようなものも恐らく含まれていたでしょう。そうして、輸血をポンピングで急速に入れなければ間に合わないような量の出血だったのでしょう。それでも、循環は何とか維持されていたのだと思われます。しかし、相当量の輸血をした後であった為に、血液中のカリウム濃度は次第に上昇を続けていった可能性があったのではないでしょうか。以前に少し触れた(参考記事)ことがありますが、細胞外のカリウムというのは、人体にとっては危険な物質なのです。なので通常は血液中のカリウム濃度というのは、極めて厳密に狭いレンジで維持されているのです。しかし、血液中のカリウム濃度よりも高濃度になっているかもしれない(ひょっとして1.5~2倍くらい?)保存血を大量に輸血していけば、高カリウム血症の状況が起こりえるかもしれないかな、と思います。ただ、大量に出血もしていたので、入れても入れてもどんどん出て行っていくのですから、他のリンゲル液などが一緒に入ってるだろうし、必ずしも血中のカリウム濃度が高かったかどうかは不明なのですけれども。データを見ない限りは、判定のしようがないですし。
しかし、置かれていた状況だけ考えると、有り得ない話ではないのではなかろうか、とも思ったりしましたもので。
なので、まとめると、
・大量の輸血が必要
・保存血中の保存液には、生体の血液よりも多いカリウムが含まれていた可能性
・高カリウム血症か、もしくはそれに近い状況があった可能性
・その為、心室細動が惹起されやすい状態にあった
・直接死因は失血ではなく、心室細動
ということです。
素人考えなので、何とも言えない訳ですが。
追加だけど、またTBが全く届かないな。何でだろう?
ひょっとして、何処にも送れないのかな?拙ブログの場合には(笑)。
まあ、仕方がないか。届かないような設定とかってあるのかな?