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控訴断念~福島産科死亡事件裁判後

2008年08月29日 19時44分41秒 | 社会全般
産科医の無罪確定へ=帝王切開死、検察が控訴断念-「今後は慎重に捜査」・福島(時事通信) - Yahooニュース

(一部引用)

同地検の村上満男次席検事は「裁判所が要求したほとんどのものが従っているという一般性のある医学的準則も一つの考え方。過失と(医師の)注意義務をどうとらえるかで、検察と異なっていた」と説明。控訴しても、裁判所の判断を覆すことは困難とした。
 加藤被告の逮捕、起訴について「法律と証拠に基づいてやった。判断としては間違っていない」としたが、「今後はより慎重、適切な捜査をしたい」と述べた。 

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とりあえず、一報。


追加です。

最高検との協議の結果だろうと思われますが、勇気ある決断だったと思います。控訴断念によって、検察に対する見方(医療者たちやその他法曹)は信頼が保たれたのではないかと思います。

たぶん、地裁の出した判決文が、「ある水準」に到達していた為であると思います。法的な考え方という点で、検察側が認めざるを得ないというものであったから、ということが最大の理由であろうと思います。

更に言えば、医療界ばかりではなく、国民にも関心を持たれた事件となり、一定の成果を挙げたということもあるかと思います。医療側に法を意識させ、学ばせる機会を提供してくれました。医療の窮状を、広く社会に知らしめるきっかけともなりました。今後の医療行政にも大きな影響を与えたものとなったでありましょう。

逮捕、起訴された医師にとっては多大な負担となり、人生を大きく変えるものであったことは間違いないでしょう。そうではあっても、……生きているのです。

過酷な言い方になってしまいますが、患者さんは死亡されました。
医師は、大変な裁判を背負わされましたが、生きているのです。これから、再出発することはできるのです。しかし、亡くなられた患者さんは、もう二度とやり直すことはできません。亡くなられた患者さんも、起訴された医師も、非常に大きな犠牲を払ったのです。
だからこそ、本件から、できるだけ大勢の人たちが、できるだけ多くのことを学び取らねばならない、と思うのですよ。

そうでなければ、亡くなられた患者さんも、起訴された医師の失われた時間やその他のものも、消えていってしまうことになってしまいます。

医療を受ける一般国民、医療者、警察、検察、裁判所、弁護士、等々、それぞれに今後活かすべきことを考えてやっていくことが大事なのだろうと思います。私はとても多くのことを学ばせてもらったと思っています。



高カリウム血症に関して気になること

2008年08月29日 18時57分04秒 | 法と医療
以前、大野病院事件の死亡理由について、「高カリウム血症」の疑いについて書いたことがある。

福島産科死亡事件の裁判・その2


これと似た症例が報告されていたようで、天漢日乗さんの所で見ることができました(有難うございます)。

天漢日乗 産科崩壊 昨年大病院で延べ人数にして産科医4人心臓外科医1人救命センターの外科医1人麻酔科医8人麻酔科研修医5-6人、看護師15-20人、臨床工学技師2-3人を動員して術中心停止をなんとか救命できた癒着胎盤子宮全摘の症例→追記あり


中身が濃いので、私のような人間からは何とも言い難いわけですが、「自己血1200ml」ですか。結構驚きました。そういう時代になっているんですね(因みに、いくら貯血の為とはいえ、そんなに度々採血されたら、私ならフラフラになってしまいそう。←ウソだけど。でも、血を抜かれるのは怖くて、実を言うと、今まで人生で一度(400)しかしたことない……母は強し、ということなんですね)。

この高カリウム血症は腸骨動脈阻血後の再還流によるものだろう、という考察かと思います。大量輸血(保存血)による高カリウム血症ということではないだろうと思います(MAPは4単位でしかないですし)。が、阻血時間が多くても30分程度(※注意!!ここの記述は誤りでした。申し訳ありません。今―といっても2日後なんですが―見たら、気付きました。阻血時間は約60分だったようです)であったにも関わらず、それほどの高カリウム血症が惹起されるものなのか、ということはかなり意外でありました。子宮摘出までに6500の出血があり、還流再開後に急速に心停止に陥ったということのようです。GI では改善されなかった為、CHDF実施となった、と。ECG上では、高カリウム血症が疑われる所見があったようなので、そこにも注意するべき点があったかも、と。

それにしても、よくぞ頑張ったな(患者さんも医療者も)と思います。



手術とは関係ないのですが、こうした阻血?が理由で「突然死」のような状況に至るのではないかと、内心疑っていることがあるのです。まるでクラッシュ・シンドロームのような例ではないか、と疑っているのです。

それはどういった場合かと言いますと、「逮捕」などの場合です。
警官が暴れる犯人を暫く押さえつけていたら、連行しようとすると「いきなり死亡に至る」というケースがよくあるのです。

押さえつける側は必ずしも警察官ばかりということではなく、万引き犯を捕らえた店員などの一般人もあったりするようです。

例えばこんなの>
現行犯逮捕直後に死亡 - 元検弁護士のつぶやき

エンタメ!一般!ときどき脱線? 万引き犯が死亡…取り押さえた店員2人逮捕…

その他もいろいろあるみたい
押さえつけ 逮捕 死亡  - Google 検索


これらが全部同一の死因かどうかは判りません。中には頭部外傷によるものとか、高血圧性脳症のようなものとか、そういうのがあるのかもしれませんが、割と健康そうな人が暴れたりして複数で取り押さえられ、暫くその姿勢を取っているうちに死亡している、ということがあるのです。
私が勝手に想像している理由を書きます。
この原因としては、やはり高カリウム血症による致死的不整脈の発生なのではなかろうか、ということです。

機序としては、
・激しく暴れる→筋組織挫滅や破壊→カリウムが血中に出る
・取り押さえた後に同一姿勢で押さえつけ→何らかの還流障害(阻血?)
・偶然還流再開とか阻血が解除される
・再還流後高カリウム血症様の症状を呈する
・致死的不整脈発生

通常は、不整脈が発生した時点では気付かず、その後に急速なポンプ機能低下を生じて、脳虚血となった状態になってはじめて「グッタリした状態」に気付く、ということになるのではないかな、と。僅か数十分前まで、あれ程元気に暴れていたのに、場合によっては「人一倍」とか「これ程暴れている人間を見たことがない」というくらいに暴れていると思ったのに、いきなり死んでしまうとは通常考えられないのです。それが発見を遅らせる要因でもあると思うのです。

これと似た状態で事故が発生しているケースはあります。
例えば、歯科治療を行う際に、強度の抑制を行っている場合です。幼児や知的障害者の治療で抑制具を用いていることはあり、そうした器具が危険ということではないかもしれませんが、偶然にも上記犯人を押さえつけたのと同じような状態に陥る可能性はあると考えています。そうなれば、少し前までは激しく暴れていたのに、いきなりグッタリする、ということになります。実際に治療中の死亡例があり、死因としては薬物によるアナフィラキシーショックとか、そういうのが疑われたのではないかと思いますが、本当に薬物によるショックだったのかどうか、というのは疑問の余地があるのではなかろうか、と思ったりします。


そういうわけで、逮捕などの場合に同一姿勢をとり続けるのは避け、例えば5分程度毎に膝で押さえている場所を変えるとか、うつぶせに押さえているなら、腰の当たりにばかり体重をかけずに、時折頭部を股にして両肩に均等に体重をかけるとか、何らかの工夫をするべきではないか、と。
あと、応援を待つ時間の中で、数分おきに犯人の呼吸(胸が上がるので判る)とか、意識レベル(声を出すか、とか)を確認するように注意した方がよいかもしれません(実行可能であれば、ですが)。一般人が逮捕した場合にも同じで、警察に通報があったなら、犯人を確保しているかどうかを聞くと思いますので、押さえつけの注意について電話で指示した方がよいのではないかと思います。

とは言うものの、実際にこうした抑制と高カリウム血症の関連性が確認されたわけではありませんので、全く別な死因であれば、こうした注意は役立たないかもしれません。全くの見当ハズレかもしれませんし。

が、よく似ていると思っていたのですよ、こういう事例が。
激しく暴れていたこと、無理矢理押さえつけたこと、抑制下で数十分程度の時間経過があること、急に死亡に至ってしまうこと、そういった共通性が見られていることから、「何かあるのではないか」とこれまで感じてきたので。

できれば、専門家の方々によく研究していただければ、と思います。