オバマ政権の新たな方針は明確になってはいないが、就任前の考え方としては、イラク撤退を進めるとともにアフガンに重点を置く、ということであった。この基本方針を果たして貫けるのか、という疑問はあるのである。それを阻害する要因はいくつか考えられるであろう。
1)予算の問題
戦争とは、昔から「金」の戦いである、というのは変わっていないだろう。戦士の食糧調達から始まって、傭兵の給金(報酬)、装備品や兵器、病気…etc.色々とあったわけだ。戦費負担が続けられない王様や貴族や富豪は負けていた、というか、停戦合意を取りつけるか、参った降参となるとか逃げてゆくとか、破産するとかだった。現代においても、基本的には変わっていないであろう。
米軍のイラク撤退で若干の余裕が生まれるとしても、それがアフガンに向かうのであれば、戦費負担が重く圧し掛かることになるのは同じだ。米国自身がいつまでこうした戦費を出し続けられるのか、という問題がまず第一にある。昨今の経済情勢と国内経済問題を抱えながら、巨額の戦費を出すことについて疑問を生じることはあるだろう。アフガン戦争の長さについても、次第に厭戦気分を高めることになるだろう。5年以上も戦争をやっていると、多くの場合には「もう止めよう(止めたい)」という国内意見は強まることが予想されるからだ。
第二に、米国以外の国々がいつまで続けられるのか、という問題がある。
この危機に直面しているのは、恐らく英軍だろう。今の英国の経済危機は多分深刻なものだ。そうなれば、長々と戦争を続けるという思い負担には耐えられなくなっていく可能性が高いだろう。国内の財政事情でさえ「火の車」なのに、わざわざアジアの辺鄙な山奥に行って戦争を継続しなければならない、ということに苛立つ人々が増えてくることは容易に推測されるのだ。これは他のNATO諸国にも同じく言えることでもある。
欧州人の昔からの癖(笑)というわけではないかもしれないが、十字軍を思い出だすとよいだろう。
キリスト教徒の為に戦おう、聖地を奪還しよう、とか言っても、段々金に窮すると、賛同していた王様や貴族たちだって「もう参加しない」とか「今回はパスね、見送らせてもらう」とか言って、抜けてゆくケースというのはよく散見された。それとあまり大きな違いはない。抜ける国々が出てくると、主力となる国(今までは英米)にとっては負担が増大してゆくことになる。ラグビーで15人が揃わなくなり途中で3人抜けてしまうと、残った12人で15人分の働きをしなければならず、個々の負担は大幅に増えることになるのと同じだ。
つまり、戦争を継続する為の金がいつまで続けられるか、というのが大きな問題なのである。
2)中央アジア情勢の変化
これも以前から判っていたことだが、米国の置かれている状況は厳しくなっている。
以前に書いた通り、米軍はウズベキスタンのハナバード基地から撤退させられた。
>米軍基地問題についての補足
(因みに、この中で「仕掛けてきた連中」を叩き出すまでは許さん、と書いたのだけれども、これは本当になってしまったね(笑)。別に呪術でも預言でもないけれど、結果的に彼らは出て行くことになってしまったわけだ。人生って不思議でしょ?汚い手を使うから、こんなことになるんだよ。これ、ホント。)
そればかりか、マナス基地を失うことになったわけだ。
08年2月28日>世界は広いね
これも現実になったでしょ?
09年1月17日>オバマ政権のアフガン戦略に打撃、キルギスが米基地閉鎖へ 国際 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
要するに、米軍の拠点を次々と失っている、ということです。航空戦力が十分使えない、ということになってしまって、広い地域に人力で対応・展開せねばならず、カバーしきれていないということでしょうね。これは過去のアフガンでの戦争でも大体同じ。
>アフガニスタン問題に日本はどう対処するか
かつて英軍がアフガンを攻略するのは簡単だったが、その後に実効支配を維持するのが困難なのだ。まともに向かってくる敵に対しては、軍事力の差が歴然としている分だけ圧倒的に勝ってしまえるけれども、そのあとから続くのが「全土を支配下に置く」という困難な作業なのである。過去の英軍というのは、悉くこれに失敗したということに他ならない。だからこそ、軍隊を引き上げざるを得なくなるわけで。
旧ソ連の侵攻後にも、01年以降の戦いでも同じで、当初の戦闘には成果はあるものの、その後の支配体制確立までは程遠いのだ。
昔、家康が天下分け目の関が原で1600年に勝利して、幕府を開くまで3年、豊臣勢を排除するのに2度の大坂決戦(冬の陣、夏の陣)が15年かかっており、国内の安定化にはかなり時間を要するのが普通、と考えるべきだろう。島原の乱が1637年だから、国内戦争が消えてゆくように支配するのは、かなり大変なことなのだ。
また、明治維新時期には、1867年大政奉還、翌68年より明治の元号となり新政府が実効支配したものの、戊辰戦争は69年まで続き、国内反政府勢力排除までには長い時間を要した。77年には西南戦争が起こり、大日本帝国憲法発布の89年、帝国議会が90年と、混乱期から国内戦争が治まって政治基盤が整うまでには約20年かかっている。だから、そう簡単にはいかないだろう、というのが、普通の考え方なのではないだろうか。
オバマ政権のアフガン戦略は、こうした阻害要因を乗り越えないと成果を得ることは難しいだろう。日本にこれらの肩代わりとか一部責任を求められても、出来ることは限られているだろう。
1)予算の問題
戦争とは、昔から「金」の戦いである、というのは変わっていないだろう。戦士の食糧調達から始まって、傭兵の給金(報酬)、装備品や兵器、病気…etc.色々とあったわけだ。戦費負担が続けられない王様や貴族や富豪は負けていた、というか、停戦合意を取りつけるか、参った降参となるとか逃げてゆくとか、破産するとかだった。現代においても、基本的には変わっていないであろう。
米軍のイラク撤退で若干の余裕が生まれるとしても、それがアフガンに向かうのであれば、戦費負担が重く圧し掛かることになるのは同じだ。米国自身がいつまでこうした戦費を出し続けられるのか、という問題がまず第一にある。昨今の経済情勢と国内経済問題を抱えながら、巨額の戦費を出すことについて疑問を生じることはあるだろう。アフガン戦争の長さについても、次第に厭戦気分を高めることになるだろう。5年以上も戦争をやっていると、多くの場合には「もう止めよう(止めたい)」という国内意見は強まることが予想されるからだ。
第二に、米国以外の国々がいつまで続けられるのか、という問題がある。
この危機に直面しているのは、恐らく英軍だろう。今の英国の経済危機は多分深刻なものだ。そうなれば、長々と戦争を続けるという思い負担には耐えられなくなっていく可能性が高いだろう。国内の財政事情でさえ「火の車」なのに、わざわざアジアの辺鄙な山奥に行って戦争を継続しなければならない、ということに苛立つ人々が増えてくることは容易に推測されるのだ。これは他のNATO諸国にも同じく言えることでもある。
欧州人の昔からの癖(笑)というわけではないかもしれないが、十字軍を思い出だすとよいだろう。
キリスト教徒の為に戦おう、聖地を奪還しよう、とか言っても、段々金に窮すると、賛同していた王様や貴族たちだって「もう参加しない」とか「今回はパスね、見送らせてもらう」とか言って、抜けてゆくケースというのはよく散見された。それとあまり大きな違いはない。抜ける国々が出てくると、主力となる国(今までは英米)にとっては負担が増大してゆくことになる。ラグビーで15人が揃わなくなり途中で3人抜けてしまうと、残った12人で15人分の働きをしなければならず、個々の負担は大幅に増えることになるのと同じだ。
つまり、戦争を継続する為の金がいつまで続けられるか、というのが大きな問題なのである。
2)中央アジア情勢の変化
これも以前から判っていたことだが、米国の置かれている状況は厳しくなっている。
以前に書いた通り、米軍はウズベキスタンのハナバード基地から撤退させられた。
>米軍基地問題についての補足
(因みに、この中で「仕掛けてきた連中」を叩き出すまでは許さん、と書いたのだけれども、これは本当になってしまったね(笑)。別に呪術でも預言でもないけれど、結果的に彼らは出て行くことになってしまったわけだ。人生って不思議でしょ?汚い手を使うから、こんなことになるんだよ。これ、ホント。)
そればかりか、マナス基地を失うことになったわけだ。
08年2月28日>世界は広いね
これも現実になったでしょ?
09年1月17日>オバマ政権のアフガン戦略に打撃、キルギスが米基地閉鎖へ 国際 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
要するに、米軍の拠点を次々と失っている、ということです。航空戦力が十分使えない、ということになってしまって、広い地域に人力で対応・展開せねばならず、カバーしきれていないということでしょうね。これは過去のアフガンでの戦争でも大体同じ。
>アフガニスタン問題に日本はどう対処するか
かつて英軍がアフガンを攻略するのは簡単だったが、その後に実効支配を維持するのが困難なのだ。まともに向かってくる敵に対しては、軍事力の差が歴然としている分だけ圧倒的に勝ってしまえるけれども、そのあとから続くのが「全土を支配下に置く」という困難な作業なのである。過去の英軍というのは、悉くこれに失敗したということに他ならない。だからこそ、軍隊を引き上げざるを得なくなるわけで。
旧ソ連の侵攻後にも、01年以降の戦いでも同じで、当初の戦闘には成果はあるものの、その後の支配体制確立までは程遠いのだ。
昔、家康が天下分け目の関が原で1600年に勝利して、幕府を開くまで3年、豊臣勢を排除するのに2度の大坂決戦(冬の陣、夏の陣)が15年かかっており、国内の安定化にはかなり時間を要するのが普通、と考えるべきだろう。島原の乱が1637年だから、国内戦争が消えてゆくように支配するのは、かなり大変なことなのだ。
また、明治維新時期には、1867年大政奉還、翌68年より明治の元号となり新政府が実効支配したものの、戊辰戦争は69年まで続き、国内反政府勢力排除までには長い時間を要した。77年には西南戦争が起こり、大日本帝国憲法発布の89年、帝国議会が90年と、混乱期から国内戦争が治まって政治基盤が整うまでには約20年かかっている。だから、そう簡単にはいかないだろう、というのが、普通の考え方なのではないだろうか。
オバマ政権のアフガン戦略は、こうした阻害要因を乗り越えないと成果を得ることは難しいだろう。日本にこれらの肩代わりとか一部責任を求められても、出来ることは限られているだろう。