新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

やはりトランプの常識は世界の非常識だった

2025年02月08日 11時45分21秒 | トランプ外交

日本国憲法では「9条」により基本的には専守防衛であった。
 
それが安倍晋三によって形骸化され、2023年版の防衛白書で敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を初めて明記し、岸田文雄によって必要な武器等が調達されたのだが、最近では「ネット・通信」の世界にまでその考えが拡大してきた。
 
政府がネット上の通信を「監視」…能動的サイバー防衛法案が閣議決定 攻撃を察知したら警察・自衛隊が行動
 

政府は7日、電気や鉄道など重要インフラへのサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を導入するための関連法案を閣議決定した。政府が平時からサイバー空間を監視し、当事者の許可がなくても幅広い情報を取得できるようになる。サイバー攻撃の兆候があれば、相手側の機能を停止させるなどして無害化する。サイバー攻撃への防御能力を高める狙いだが、憲法が定める「通信の秘密」との整合性が問われるとともに、監視強化に対する不安の払拭が課題となる。(大野暢子)
◆サイバー攻撃の兆しがあれば「反撃」
 法案では、通信情報のうち、
(1)国内を経由した外国間
(2)外国から国内
(3)国内から外国
で送受信される3種類を監視対象とする。個人の意思が読み取れるメールの本文や添付ファイルなどは監視の対象外となる。
 政府は集めた情報の中からサイバー攻撃に関するものを選別。攻撃の兆しが見つかれば、警察や自衛隊が相手のサーバーに侵入し、攻撃に使われるプログラムの停止や削除を行う。
◆憲法は「通信の秘密」を保障…政府が「監視」していいのか
 政府による通信情報の取得が適正かどうかは、専門家らによる独立機関「サイバー通信情報監理委員会」が審査・承認する。サイバー攻撃を無害化する際は、監理委員会の事前承認が必要で、緊急時には事後通知も認められる。
 憲法21条は1項で表現の自由を保障し、2項で検閲の禁止と並んで「通信の秘密」の保障を規定する。
 当事者の同意なしに情報を取得することと通信の秘密との整合性について、内閣官房は「監理委員会が運用を監視することで逸脱を防ぐ」と説明している。
◆政府「通信の秘密との整合性は図られている」
 管理者に無断でサーバーに侵入することは、従来は不正アクセス禁止法で禁じられてきたが、法成立後は一定の条件下で警察や自衛隊による侵入が認められる。情報法制の転換となる。
 法案に関し、林芳正官房長官は7日の会見で「通信の秘密との整合性は図られている」と説明した。石破茂首相は1月31日の衆院予算委員会で「表現の自由に抵触しないか配慮する」と答弁した。
 能動的サイバー防御 サイバー攻撃を防ぐため、先手を打って相手側のサーバーに侵入し、ウイルスなどを使い無力化を図る対応。2022年に策定された国家安全保障戦略に導入方針が明記された。2024年11月に政府の有識者会議が法制化を提言し、憲法上の通信の秘密も「公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を受ける」と整理した。

 
その昔、初めて登場した「監視カメラ」はあくまでも「防犯用」と言われていたことを思い出す。
 
ところで、今朝の週末のニュース番組では昨日行われた日米首脳会談の結果が報告され、会談前に心配された石破茂に関する不安は一層されたらしい。
 
もっとも初顔合わせであったため、トランプも石破茂をある程度は持ち上げていたらしいのだが、今後の対日貿易に関しては不透明な部分があるという。
 
そのトランプの本性むき出しの発言が大きな波紋を呼んでいる。
 
トランプ氏の「ガザ所有」は国際法違反の可能性…ジュネーブ条約で強制移住を禁止
 
ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領は4日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを「長期所有」し、米国が再建を主導する構想を唐突に表明した。ガザ住民の域外移住は国際法に違反する可能性があり、実現のハードルが極めて高い構想が打ち出された背景としてトランプ氏への進言役の不在が指摘されている。
 トランプ氏が1月の復帰後、初めてホワイトハウスに外国首脳を招いて開いた共同記者会見。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の横で、トランプ氏は「私が話をした誰もが、米国がガザを所有する考えを支持している」と根拠を示さずに主張した。
 世界を驚かせたトランプ氏の構想は2段構えとなっている。がれきに埋もれたガザを整地し、ガザの全住民を域外に移住させる。その後、住宅を建てて世界中から人を呼び寄せ、地中海の保養地「リビエラ」のような観光地にするとトランプ氏は熱っぽく説明した。
 ニューヨークを拠点に「不動産王」に上り詰めたトランプ氏は、ガザに不動産としての価値を見いだしたとみられる。就任初日、ガザについて「海に面した最高の天候の素晴らしい場所だ」と記者団に語っていた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、ガザ所有構想はトランプ氏と少数の側近らの間で秘密裏に検討された。直前には中東担当特使のスティーブン・ウィトコフ氏がガザを訪問し、トランプ氏に状況を報告した。ウィトコフ氏はトランプ氏のゴルフ仲間で不動産開発を本業とするビジネスマンだ。
 しかし、構想を慎重に考え抜いた形跡は乏しい。米国とイスラエルが共に批准しているジュネーブ条約は住民の強制移住を禁じており、実行に移せば条約違反に当たる可能性がある。
 米国がガザの直接管理に乗り出した場合、治安維持のため米軍の長期派遣が必要になると想定される。米軍がハマスのテロの標的となり、テロ掃討を目的に米軍が駐留を続ければ、イラク戦争後に中東紛争から抜け出せなくなった過去の失敗を繰り返すことになりかねない。世界の紛争への関与を避けるトランプ氏の外交方針にも反する。
 イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」との整合性も問われる。ガザ住民を移住させず、中東和平を目指す考え方は米国で超党派の支持がある。トランプ氏の構想はこれに大きく逆らうものだ。
 トランプ氏はそれでも共同記者会見で構想に関し、不発弾に囲まれたガザに住み続けるのは不可能で、住民の域外移住は人道的配慮だとの持論を展開した。「何か月もかけてこのことを詳細に調べてきた」と強い信念をのぞかせた。
 トランプ政権の1期目は、政治経験の長いペンス副大統領や軍出身のマティス国防長官らが「政治の素人」だったトランプ氏を支え、暴走を食い止める役目を果たした。一方、2期目は閣僚らを自らに忠実なイエスマンで固めており、ガードレール役がいない。こうした事情もあり、専門家が実現可能性を疑うような構想をトランプ氏が打ち出したとの見方が出ている。
 米国はこれまで中東和平の仲介者を務め、停戦の合意や監視といった形で地域に関与してきたが、米国がパレスチナ自治区の一部を直接所有するという発言は前代未聞だ。ガザからパレスチナ人を無理やり追い出せば「民族浄化」にあたり、国際法に違反する。
高橋和夫・放送大名誉教授「米国第一」とも矛盾
高橋和夫氏
ガザから最終的にパレスチナ人がいなくなるということは、イスラエルが成し遂げられていないイスラム主義組織ハマスの壊滅を意味する。米軍をガザに送ればハマスと戦闘になり、米兵に犠牲が出る。全く合理的でなく、現実味に乏しい構想だ。
 今回の発言は、これまでの米国の中東和平外交から逸脱しているだけではなく、トランプ氏が掲げる「米国第一主義」という考え方とも矛盾している。具体性がない突然の発言で、どれだけ本気なのか分からない。
 イスラエルのネタニヤフ政権が連立を組む極右政党は、停戦に反発を示してきた。パレスチナ人の強制移住を行うというトランプ氏の発言は、停戦交渉で第1段階から第2段階に進めるために、極右を説得する材料をネタニヤフ氏に提供したことになる。
 ガザからパレスチナ人が強制移住させられるなら、サウジアラビアはイスラエルと握手できない。期待されていたイスラエルとサウジの国交正常化は今回の発言を受け、遠のくだろう。(聞き手・国際部 村上愛衣)

 



 
どうやらこの話は水面下でかなり進んでいるようである。
 
ガザ地区を『ビーチリゾート』に…イスラエルびいきのトランプ陣営が目論む「驚愕の企み
 
2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃に対するイスラエルの報復としてはじまった「ガザ戦争」は、約4万7000人以上と推定される、ガザ地区の多くの民間人に犠牲者を出しながら2024年1月19日に、6週間の停戦期間に入った。
ただし、イスラエルの閣僚から停戦への反発の声が上がったり、トランプ大統領がガザ地区住民の「移住」を要請するなど、今後の見通しが不透明な情勢が続いている。
パレスチナとイスラエルを巡る混沌とした世界情勢を見通す一冊として話題となっている『イスラエルの自滅』(宮田律)より、一部を抜粋してお届けする。
■イスラエルの政治・社会を右傾化させたネタニヤフ
2024年11月、米国大統領選挙でのトランプ当選が決まった。
このニュースに満面の笑みを浮かべたのはイスラエルのネタニヤフ首相だった。トランプが大統領ならネタニヤフ政権のガザやレバノンなど周辺諸国への拡張主義的戦争に干渉せず、またイランとの戦争についてもトランプ政権なら米国がパートナーとなり得るからだ。
米国大統領選挙の当日の11月5日には、ネタニヤフ首相はガラント国防相を解任している。ガラント国防相は、ガザの将来についてイスラエルが占領を継続することに懐疑的で、ガザへのイスラエルの再入植を考えるネタニヤフ首相や、政権内部の極右閣僚であるベングビール国家治安相やスモトリッチ財務相と対立していた。
イスラエル人がビーチに家をもつことも夢ではないなどのスローガンが2023年12月末の右派勢力の集会では唱えられており、この「ビーチ」とはガザのビーチのことを示している。トランプの娘婿のジャレッド・クシュナーはこのアイデアに飛びつき、「大変貴重な水辺の不動産」などと発言するなど、ガザの不動産開発を考えている。
■ガザを徹底的に破壊する“新都市創造計画”
2024年5月にイスラエルの「エルサレム・ポスト」紙はネタニヤフ首相の戦後ガザ地区に関する構想「ガザ2035」を発表した。
その構想を表すガザの未来図の中には緑地の中に立つ高層ビル群、ガザ沖合には貿易に使用される船舶が停泊している。2000年代に頭角を現し、世界の貿易、交通のハブとなったアラブ首長国連邦のドバイを彷彿とさせるものだった。
その構想が書かれた文書には「ゼロからの再建」が強調されている。その言葉にはネタニヤフ首相のガザに関する目標、つまりガザを徹底的に破壊し、その後に新しい都市をゼロから設計するという目標が公然と述べられていた。
スモトリッチ財務相は、米国大統領選挙でトランプが当選したことを受けて、ヨルダン川西岸併合を準備するようにイスラエル財務省に命じた。スモトリッチ財務相は、「宗教シオニズム」の集会でスピーチを行い、トランプの勝利は「重要な機会」を提供し、ヨルダン川西岸に「イスラエルの主権を適用する時が来た」と述べた。スモトリッチは、ヨルダン川西岸を併合するために必要なインフラを準備する仕事を始めるように指示を出した。
大統領選挙当選後、トランプは元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーを駐イスラエル大使に指名している。ハッカビーは「パレスチナ人は存在しない」と発言してきたエキセントリックなキリスト教福音派の指導者だ。1996年から2007年までアーカンソー州知事を務め、2008年と2016年に共和党の大統領候補の指名争いに出馬したことがある。アーカンソー州知事になる前は福音派の牧師だった。
ハッカビーはヨルダン川西岸とガザのイスラエルへの併合を長年にわたって訴えてきた人物だ。「ヨルダン川西岸」のことをヘブライ語の「ユダヤ・サマリア」と呼ぶように訴え、パレスチナ全域でユダヤ人が少数派にならないように、ユダヤ人を「祖国」に呼び寄せるべきだと語っている。
■トランプの視野に「パレスチナ人」は存在しない
トランプは「マイクは長年にわたり、偉大な公務員、知事、そして信仰の指導者だった。彼はイスラエルとイスラエルの人々を愛しており、同様にイスラエルの人々も彼を愛している。マイクは中東に平和をもたらすためにたゆまぬ努力をしてくれるだろう」とハッカビーについて語った。
トランプの視野にはパレスチナ人は存在せず、イスラエルしか見ていないようだ。それで中東和平など実現するはずがない。
ハッカビーはハマスと停戦する理由はないと2024年6月に述べ、2023年10月にガザ戦争が始まると、パレスチナ人をガザから追放することを主張してきた。彼は「いわゆる『パレスチナ人』がイスラム諸国から愛されているのならば、イスラム諸国はなぜ彼らに一時的な避難場所を与えないのか」と述べたこともある。
ハッカビーは米国の福音派教徒がイスラエルに旅行するツアーを組織してきたが、そのツアーのパンフレットには「聖書と歴史の両方の観点からイスラエルの伝統について学びます。イスラエルの高官から、イスラエルが現在占めている戦略的地位や、なぜ米国がイスラエルにとって貴重な同盟国であるのかについて聞きます」と書かれている。
トランプ政権が推進したイスラエルとアラブ首長国連邦との国交正常化「アブラハム合意」に対する反発が2023年10月7日のハマスの奇襲攻撃の一つの背景になったように、イスラエル一辺倒のトランプ政権の方針はパレスチナ社会をいっそう過激化する危険性を孕んでいる。トランプの親イスラエル政策は、パレスチナ情勢をいっそう不安定なものにし、さらなるテロや軍事攻撃の応酬など結局イスラエルの安全保障にとってプラスになることはないだろう

 
さらに世界を驚かせたようなトランプのこんな発言も非難の的である。
 
これほどまでとは…トランプ政権の『“多様性”への攻撃』、その凄まじすぎる実態
 
■航空機事故会見の衝撃〜衝突はDEIのせい
トランプ政権が誕生して10日目の1月29日、首都ワシントン上空で旅客機と軍のヘリコプターが空中衝突し、67人が亡くなるという悲劇が起こった。

直後の会見でトランプ大統領は犠牲者の冥福を祈った後、急に話題を変えた。それは集まった報道陣も、生放送を見ていた私たち視聴者もまったく予想しないものだった。
トランプは「衝突事故の原因は連邦政府のDEI(Diversity, Equity & Inclusion≒多様性)プログラムにあると考えている」と発言したのである。
彼は就任当日の大統領令の中でも、連邦政府のDEI(多様性)プログラム廃止を打ち出していた。とはいえ、犠牲者の身元すらわかっていない段階でこの物言いには、多くが眉をひそめた。
しかしトランプにははっきりとした意図があったと考えられている。それは多くのアメリカ人がテレビに釘付けになっているこのタイミングで、DEI を完全に葬り去ることだ。同時に、アメリカが自国のあるべき姿として過去60年にわたって強く信じて来た「多様で素晴らしいアメリカ」という価値観からの、脱却宣言でもあった。
それにしてもなぜトランプはここまでDEIを攻撃するのか? その背景には彼を担ぎ上げた共和党の、長きにわたる戦いがある。
■DEIとは何か
DEIはDiversity(多様性), Equity(公平性), Inclusion(包括性)の頭文字をとった言葉だ。企業や教育機関、政府機関などで、多様な人々が公平に扱われ、すべての人が活躍できる環境を整える取り組みを指す。
1964年の公民権法で、人種や民族、宗教、出身国などによる差別は禁止となった。しかし、政治や経済の分野でまだまだ平等が実現しているとは言い難い。制度的人種差別は根強く残り、今も白人家庭の世帯収入の平均は黒人の1.6倍と大きな格差がある。
80年代以降はヒスパニックやアジア系移民が急激に流入したために、アメリカは人種的に急速に多様化した。
差別も問題だが、本当に能力がある多様な人を雇用しなければ、社会にとっても不利益だということになり、2010年代に入るとDEIを経営理念に取り入れる企業が増え始めた。多様性がある企業はそうでない企業に比べ、収益が高いという数字もその後押しになった。
しかしこの時点でも、DEIについて一般にはほとんど知られていなかった。
さらに多くの企業がDEIに注目したきっかけは、2020年の白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドの殺害事件だ。ブラックライブスマター運動が燃え上がり、世間の批判をかわすためにDEIを取り入れる企業も激増した。その直後に誕生したバイデン政権は、人種の面でもジェンダーの面でも史上最も多様なメンバーを登用した政権となった。
多様化が進むアメリカは、今や若いZ世代(13~27歳)のほぼ半数が白人以外の人種で占められている。またジェンダーの面では、彼らの2〜3割がLGBTQを自認するという数字もあるほどだ。彼らの多くがDEIを支持している。
一方国勢調査は、2045年にはアメリカ全人口で白人が過半数を割ると予測している。そんな多様性の時代に、全ての人が公平な機会を得るために、DEIの推進は不可欠に見えていた。
しかしそれに強い反発や危機感を感じる層もいた。
■トランプ陣営のDEIへの総攻撃
保守共和党の支持者は8割が白人、しかも年長者が多い。このまま非白人が増え、いずれ白人がマイノリティになれば党の存続自体が厳しくなる。
そこでまず共和党が注目したのは、ふだんあまり投票しない労働者階級の白人層だった。2016年の大統領選で、共和党が、中西部ラストベルトの白人労働者の不満や怒りを喚起し、票につなげたことはよく知られている。
ところがその後ジョージ・フロイド事件が起こり、多くの若いZ世代の白人が自分たちは人種的な意味で「特権」をもっているという事実に目覚めた。黒人とともにブラックライブスマター運動を推し進めた彼らは、自らを「ウォーク(目覚めた者)」と呼んだ。その年トランプはバイデンに敗れた。
しかし共和党はその「ウォーク」を逆に利用した。ウォークが白人に対する逆差別で、社会を分断させているというメッセージを強く打ち出して大反撃に転じたのだ。フロリダなど共和党州は、「白人に罪悪感を与える」という理由で奴隷制など黒人の歴史教育を制限したり、「子供に悪影響を与える」として、LGBTQに関する本を図書館から撤去するなどした。トランスジェンダーに関しては、未成年者への治療の制限や禁止などを次々に進めていった。
2023年に長く続いたアファーマティブ・アクション(人種を意識した入学プログラム)が最高裁判所により違憲と判断されると、企業のDEIも「ウォーク資本主義」としてターゲットになった。
保守派は何か問題が起きると、その原因をDEIに求める論調を煽るようになった。2024年1月、アラスカ航空機のドアが上空で吹き飛んだ事故では、女性機長の責任というデマが広がった。同年7月のトランプ暗殺未遂では、シークレットサービスのDEIプログラムがやり玉に上がった。先日のロサンゼルスの山火事で、女性の消防署長が攻撃の的になったのは記憶に新しい。
そして大統領選ではカマラ・ハリスに対し「DEI候補」のレッテルを貼り、女性でマイノリティだから候補になれた「弱い候補」というイメージを作り出した。
この戦略は、多くが白人男性であるトランプ支持者に見事に刺さり、マイノリティの不法移民排斥の政策とも連動して、共和党に対する高い投票意欲につながったと考えられている。
■歴史の大転換、1964年の大統領令の撤廃
トランプ大統領は就任と同時に、連邦政府の雇用におけるDEIを禁止した。特定の層を優遇することで、それ以外の層を逆差別し、社会の分断を促進するというのがその理由だ。今後は肌の色や性別にかかわらず実力主義で採用する「カラーブラインド」社会を目指すという。
実はこれは1965年にジョンソン元大統領が発令した、雇用機会均等の撤廃でもある。連邦政府とその下請け業者は、労働者を人種や性別で差別することはできないという、公民権運動時代の大統領令の廃止は、60年間続いた政府の方針の歴史的な大転換となった。
同時にトランプは、各省庁でダイバーシティ雇用に携わる人々を軒並み解雇または自宅待機にした。また職員に対し、同じようなDEIらしきプログラムを行っている同僚を知っていたら、密告するよう命じた。
DEIやダイバーシティという言葉は、政府の公式ウェブサイトや文書から次々に削除されている。LGBTQはLGBに変更された。性別は男女2つだけというトランプの主張通り、(男性でも女性でもない)性別「X」も廃止された。パスポートの性別が「X」となっている者は、そのパスポートを使えなくなった。
■問われる企業の対応
DEI撤廃を発表する大企業も出ている。しかし実は、その多くはトランプ就任以前にすでに動き始めていた。
大統領選と同時進行で、企業に対するDEI廃止運動が行われていたのだ。それをリードしたのは、政治活動家でインフルエンサーのロビー・スターバックだ。特に保守的な顧客を持つ企業、マクドナルドやウォルマート、農業機械のジョン・ディアなどをターゲットに、SNSでの批判や販売ボイコットなどを組み合わせた強力な圧力をかけ、DEI廃止や一部撤廃に追い込むことに成功している。
彼はあくまで独立したアクティビストでトランプとの関係は直接ないとされている。しかし、現政権の次席補佐官で最もトランプに近い場所にいるスティーブン・ミラーが設立した、アメリカ・ファースト・リーガルとは深い関係があるようだ。
一方、アップル、マイクロソフト、コストコなど、今後もこれまで通りDEIを遵守するとは宣言した企業もある。その多くはDEIの歴史が長く、顧客もグローバルに幅広い。そこから得たメリットと社会的影響の大きさを自覚しているのだろう。
今後さらに多様化するアメリカ、そして世界の中で、DEIにどう対応するかで企業の持つ価値観が評価され、その立ち位置が問われることになるのは間違いない。
■「私には常識がある」発言の意味
前に述べたように、DEI禁止の理由は、肌の色や性別にかかわらず実力がある者を優先的に採用するため……ということになっている。
しかしトランプ大統領の発言から、それが建前にすぎないことがはっきりわかるという指摘があった。
彼は飛行機事故での発言に対しレポーターに「DEIが原因という根拠はあるのか?」と聞かれ、「自分には常識があるから」と答えた。
その答えには「白人男性が優れているのは常識だろう」というニュアンスが含まれている。他人種や女性に対する明らかな差別意識を嗅ぎ取った者も多い。
実際共和党の中には「少数の優れた白人がアメリカを支配すべきだ」という、非主流派の過激な意見が根強く残っている。白人が少数派になる未来が現実に近づいてくるにつれて、それが現実味を帯びてきているという論調もある。
民主主義というのは多数派の意見が優先されながらも、少数派の意見も保護される政治体制だ。それがもし少数派による支配になれば、かつてのアパルトヘイト時代の南アフリカのような独裁に近づき、アメリカの民主主義は危機に瀕する事になる。
ちなみにトランプ政権の閣僚(候補含む)は2人を除き全員白人だ(ルビオ国務長官はヒスパニック系白人)。
■ダイバーシティの未来はどうなる
ロイター/イプソスの新しい世論調査では、DEI廃止の動きに回答者の59%(共和党の30%を含む)が反対している。
さらにモーニング・コンサルトの記事によれば、企業の6割がDEIプログラムは多くの企業の成功にとって非常に、またはある程度重要であると答えている。
確かにこれまでのDEIは完全なものではない。白人やストレート男性が冷遇されたと感じる場面も確かにあっただろう。企業は消費者や株主に批判されないために、義務的にやっているという批判も少なくなかった。
しかし、いくら不法移民を強制送還しても、DEIを否定しても、アメリカの多様性がなくなることはない。問題は高度に多様なアメリカがどう協力してやっていくのかなのだ。
トランプ政権の動きは、自分たちにとって不都合な未来に抗う保守白人による揺り戻しなのか、それとも本当に少数の白人による支配のための先ぶれなのか。それとも全く別の意図があるのか、注意深く見守る必要がある。


 
まさに唯我独尊のトランプが、自分には常識があるから」と強弁したところで、そんな常識は世界では通用しないということが分かっていないところが、トランプの最大の弱点で、悲劇であるかもしれない、とオジサンは思う。 

 

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