年が改まると「必ず出てくるのは「今年はどんな年になるか?」といった根拠のない予想記事が出てくる。
中には、十分な根拠に基づいたこんな記事もある。
「2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感 何起こるか、怖いもの見たさの大阪万博」
「2025年は万博イヤーになる」──。 正月明け1月3日は大阪・関西万博の開催まで100日の節目。準備を進める大阪府の吉村知事は機運醸成に期待を寄せるが、盛り上がるどころか、盛り下がるばかりだ。 三菱総合研究所が12月末に公表した万博に関する意識調査によると、万博に「行きたい」と答えた人は10月時点で24%。前回4月から3ポイント減少した。一方、認知度は93%と高水準。「知ってはいるが、行かない」が大多数を占めている。 この結果に、吉村は「万博の中身をより具体的に発信していきたい」と意欲を見せたが、そもそも開催から半年で更地になるイベントに国費だけで1649億円がつぎ込まれること自体、バカバカしい。中身や広報の充実以前の問題だ。 廃棄物の最終処分場である万博会場の地下からは、いまだにメタンガスが噴出している。国や万博協会はガス抜き管の設置など安全対策はバッチリと強調するが、24年3月にガス爆発事故が発生して以降、8月にガス測定した19回のうち爆発基準値超えが16回、退避基準値超えが19回も検出された。 何が起きるか分からないのに、万博協会は約2820万人の来場を見込む能天気ぶり。怖いもの見たさの人がそんなにいるとは思えないが、その証拠に前売りチケットの販売状況は企業割り当て分の700万枚を超えてからサッパリ振るわない。目標1400万枚には程遠い状況だ。 万博関連の著作がある建築エコノミストの森山高至氏が言う。 「赤字の場合にどう補填するのかといった目の前の課題をウヤムヤにして、どうして未来社会の在り方を提示できるのでしょうか。現実から目を背け『きっとうまくいく』と唱えているだけです。問題を積み残して開催にヒタ走るあたり、『現実逃避万博』ですよ」 ドッチラケで当然である。 |
全く売れない万博チケットの販売促進の方策を聞かれた #吉村洋文
— Shoji Kaoru 💙💛NO吉村 NO斎藤 地方自治に維新は要らない‼️ (@Shoji_Kaoru) December 18, 2024
コンビニ販売が始まった今もなお売れないのは「買いにくい」ではなくて「買いたくない」からに他ならない。
空飛ぶクルマなど吉村が拡げた大風呂敷が次々破綻、目新しさも魅力もない万博に行くのは #日本維新の会 信者くらい。… pic.twitter.com/yeOqBjlVSB
昨年(2023年)末の会見では「万博(2024年は)いろんな国やパビリオンの発信が増え、大阪関西だけでなく日本全体に大きな効果というタームに」と豪語していた #吉村洋文
— Shoji Kaoru 💙💛NO吉村 NO斎藤 地方自治に維新は要らない‼️ (@Shoji_Kaoru) December 30, 2024
結果、運営費は爆増の一方でチケット一般販売はわずか47万枚という有様。
狼中年と化した吉村に大阪府民は騙されてはいけない💦 pic.twitter.com/kNl6Oegq9O
歴史に残る、無駄な公共工事だと思う。
— 🌵はーちゃん🌵 (@pretty_occho) December 29, 2024
マトモに売れた万博チケット、たったの47万枚だもの無駄リング代にもならないと思う。
https://t.co/26l826JZR9
今年、万博イヤー。ド派手に行くぜ!pic.twitter.com/r1479Gbadd
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) January 2, 2025
石破政権は
— 大石あきこ れいわ新選組 衆議院議員 大阪5区 (@oishiakiko) December 9, 2024
オワコンの大阪万博に
補正予算を538億円も
措置するという。
チケットはノルマ
1,400万枚の半分しか
売れていませんよ。
しかも大半は企業に
買わせたものです。
そんな中で
万博の警備費
いきなり55億円増額。
増額の理由はVIP、
政府要人が
たくさん来るから。
国民が生活苦しいのに… pic.twitter.com/yFKGUMJFzu
大阪万博会場で起きたメタンガス爆発事故現場に飲食店が入る予定なので「火気厳禁」で募集し、来場者不安解消のため「今日のメタン濃度」を公開する計画があると説明する整備局長。記者に「なぜそんな場所で万博を開催するのか」問われると「そこの答えに私たちの見解はない」と回答。安全より利権。 pic.twitter.com/p7TkV3uG1S
— あいひん (@BABYLONBU5TER) June 29, 2024
こんなリアルな指摘もある。
大阪万博は、憶測して見ると人っ子一人いない中、貧相なパビリオンが立ち並ぶだけの不気味なSFみたいな光景が広がるのではないか? 食事をしようにも、なんせごみ処理場だった場所なのでとにかく不潔。アスファルトやコンクリートで覆い隠したって汚染物質は出てくる。 食中毒が蔓延し、みんな恐れおののいて来場者増なんか望むべくもない。 史上まれに見るガラガラ万博の後に襲うのは、空前絶後の大赤字だ。 維新は例によって屁理屈の上に屁理屈を重ねたあげく、国税で処理しようとするのではないかといわれている。 しかし別の見方もある。恐ろしい話だが、大阪府市は金になるハコモノやら何やら資産を叩き売って金をつくり、負債に充てるのではないかといわれている。 美術館や博物館もすべて売却される。およそ文化都市とは呼べない灰色の町になる。 揚げ句の果ては、夕張の二の舞になって財政破綻するのではないか? しかし万博の責任者は石丸新党に逃げてもぬけの殻になっているかもしれない。 半グレチンピラのガキどもは逃げ足だけは早い。 |
ところで、すでに1年前になるのだが、こんな記事があったことを覚えているだろうか?。
「安倍元首相銃撃 2回目の『公判前整理手続き』山上被告も初出席」
2022年7月、奈良市で安倍元総理大臣が銃撃された事件で、殺人などの罪で起訴された山上徹也 被告の裁判を前に証拠や争点などを絞り込む2回目の「公判前整理手続き」が23日に行われ、被告本人も初めて出席しました。 2022年7月、奈良市で安倍元総理大臣が銃撃されて死亡した事件では、無職の山上徹也 被告(43)が殺人などの罪で起訴されています。 この事件は裁判員裁判で審理されるとみられ、23日午前10時すぎから奈良地方裁判所で裁判を前に証拠や争点などを絞り込む2回目の「公判前整理手続き」が行われ、被告本人も初めて出席しました。 関係者によりますと、裁判所と検察、弁護士の三者で証拠や争点に関するやりとりなどが行われ手続きは30分ほどで終わりました。 今後の手続きの日程などは決まっていないということです。 山上被告は捜査段階の調べに対し、母親が多額の献金をしていた旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述していたということで、裁判では被告の境遇などの情状面を踏まえた刑の重さなどが争点になるとみられます。 初めての手続きは急きょ中止に 山上被告の公判前整理手続きをめぐっては、去年6月12日、初めての手続きが始まる前に不審な段ボール箱が裁判所に届いて警察の爆発物処理班が出動する騒ぎとなり、手続きが急きょ中止となった経緯があります。 当日は本人が出席する意向を示していたことから、奈良地方裁判所は正面入り口にゲート式の金属探知機を設置したほか、警察も周辺で警戒に当たっていました。 裁判所に届いた段ボール箱の中身は被告の刑を軽くするよう求める署名でしたが、この騒ぎの影響で初めての手続きは去年10月に延期されました。 弁護団によりますと、被告はこの時「爆発物でなくてよかった」という趣旨の話をしたうえで、「自分が出席することでこのような騒ぎが起きた。手続きに出席するかどうかはよく考えたい」などと話していたということです。 そして、去年10月13日に改めて初めての手続きが行われましたが被告本人は出席せず、手続きへの出席は今回が初めてです。 2回目の手続き 奈良地裁では厳戒態勢 山上徹也被告の裁判に向けた2回目の公判前整理手続きが行われた奈良地方裁判所では、人の出入りを正面玄関の一か所に限定したほか、入り口に金属探知機を設置して出入りする一人一人の荷物をチェックする厳戒態勢がとられました。 23日は被告本人も出席し、午前9時半前に被告を乗せたとみられる車が裁判所に入りましたが、裁判所やその周辺で目立った混乱などはありませんでした。 |
裁判が開かれる様子もなく、山上容疑者は既2年半も勾留されている。ここまでくると裁判すると何か不都合なことでもあるのかとつい下衆の勘繰りも出てくる。
こうした状況は明らかにって、常軌を逸しているのだが、不思議なことにメディアはほとんど興味がない様子であたかもいずれ風化することを待っているようである。
確かに 公判になれば安倍晋三と旧統一教会の関係が微に入り細に入り掘り起こされることは当然なのだが、うがった見方によれば、山上徹也 被告が後ろからどのように安倍晋三の心臓に達したのかが明らかにされておらず、2発撃ったにもかかわらず、安倍晋三の体内からは1発の銃弾しか発見されなかったというような話も聞こえてきている。
憲法37条読んだ時に山上容疑者のこと思い浮かんだけど裁判やんないの違反してるよね。
— おも (@omo_peer) January 1, 2025
「迅速な」って何年以内なのかを調べたら2年以内だそうだ。#行政書士 https://t.co/JMn8Pd8uKR pic.twitter.com/WXlszf8J8Q
公判になれば山上容疑者は安倍元総理暗殺の動機とする「自民党と統一教会との癒着」を法廷で訴え、それはそのまま報道され、安倍氏を国葬にしたこと、統一教会の支援を受けた議員たちが今も自民党にいることなどが再び問題になるでしょう。 https://t.co/9Eg2J4OPGC
— 町山智浩 (@TomoMachi) January 2, 2025
ったく酷いな😠 事件からまだ2年半しか経っていないのに、山上徹也容疑者の裁判もまだ始まっていないのに、そして何よりも、統一教会に対する解散命令を文科省が東京地裁に請求して1年。非公開の審理が長期化の様相をみせる中、日本のテレビはもう歴史改ざんに前のめりなのか。#ザ昭和の99大ニュース https://t.co/OZdmW1ARLm
— 盛田隆二 🌐™ (@product1954) December 28, 2024
ずーーーっと裁判せず幽閉してみんなを事件情報から切り離し、みんなの記憶が薄れたくらいにこういう都合よく統一教会の影を消した嘘を流して、事実を上書きしようという魂胆、か。
— ケイ (@WorryWarrior_k0) December 28, 2024
手の込んだマネしてきましたね。https://t.co/zmHvUpgPzR
まあ下世話な話はこのくらいにして、東京外国語大学総合国際学研究院篠田 英朗教授が昨年の1年間をこう振り返っていた。
「『戦争の時代」となってしまった「2024年」を「地政学」の観点から振り返る」
2024年も数多くの戦争が世界中で続いた。過去数年の間に、世界の戦争の数は、急激に増えた。それを受けて、2024年にも、多くの戦争が続いた。 ヨーロッパにおけるロシア・ウクライナ戦争、中東におけるガザ危機やその他の複合的に重なり合う戦争、アフリカにおける東から西に貫くアフリカの角からサヘルにかけての一帯で多発している数々の戦争、などが甚大な被害を出している。もちろん、アジアではミャンマーの状況が深刻だ。凶悪犯罪の犠牲者数を考えると、ラテンアメリカ諸国の状況も深刻である。 10年ほど前までは、まだ国際的な平和活動も活発だった。戦争の数もなんとか抑え込まれていた。だが2010年代以降、戦争の数は増加し続け、国際的な平和活動の数のほうは減少し続けている。厳しい状況に、対応が追い付いていないだけでなく、追いつこうとする政策的意欲も萎えてしまっているような事態だ。 この現代の戦争の時代を、どう見ればいいだろうか。本稿では地政学の理論の観点を用いて、大局的な視点から、整理を試みてみたい。 ■英米系地政学理論に依拠した「海洋国家」連合と「リベラル国際秩序」 35年ほど前、冷戦が終わった時、「自由民主主義の勝利」を前提にした「新しい国際秩序」なるものが語られた。あれはいったい何だったのか。 冷戦終焉は、東欧の共産主義政権の崩壊と、ソ連の崩壊によって、引き起こされた。 自由主義陣営と共産主義陣営の対立が、冷戦だったとすると、一方の陣営の崩壊によって、それは終わった。そこで、国際社会が標榜する価値観は、自由民主主義の価値観に収斂していき、それによって各国の政治体制も、国際的な経済体制も、より普遍主義的で一元的なものに刷新されていく、と感じられるようになった。 もちろん、共産主義陣営が崩壊したからと言って、自由主義陣営が普遍的に万全で問題がないことが保証されたわけではない。だが当時は、「自由民主主義の勝利」の物語にそって、「新しい国際秩序」=「リベラル国際秩序」が、イデオロギー対立のない冷戦終焉後の世界にも広がっていく可能性が高い、と広範に信じられた。 確かに、旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国は、その後、NATO(北大西洋条約機構)の同盟網に加わり、自由主義陣営は、拡大した。だが、だからといって、世界全体が自由主義を標榜するようになったわけではなかった。まして全ての諸国が欧米諸国の同盟国になったわけでもなかった。 「リベラル国際秩序」とは、自由民主主義が普遍化した国際秩序というよりは、自由主義陣営諸国の影響力が高まった国際社会の秩序のことであった。それは、欧米諸国の介入主義的行動を強く要請して、成り立つものであった。 アメリカを中心とする自由主義陣営の諸国の結びつきは、地政学理論にそって言えば、「海洋国家」が結びついたネットワークのことだ。ハルフォード・マッキンダーに代表される「英米系地政学理論」の伝統にそって言えば、冷戦構造とは、ユーラシア大陸中央部の「ハートランド」に位置しつつ、海に向かって膨張政策をとってくる「陸上国家」を、「海洋国家」連合が封じ込めていく構造のことであった。冷戦終焉後の「リベラル国際秩序」とは、「陸上国家」の膨張が止まった後、「海洋国家」諸国がより自由にグローバルに影響力を行使するようになった時代の秩序のことであった。 ■大陸系地政学理論に依拠した「圏域(勢力圏)」思想の巻き返し 21世紀に入ると、介入主義が極まって、アメリカやその同盟諸国が、アフガニスタンやイラクで大々的な軍事介入を行い、結果として国力を疲弊させていくようになった。代わって「陸上国家」の代表であるロシアは、国力を立て直していった。加えて、中国が、超大国として台頭した。さらに、インド、ブラジル、インドネシア、トルコなどが国力を充実させ、それぞれの地域での存在感も高めていった。これらの国々の台頭は、アメリカが中心となった「海洋国家」連合が主導する国際秩序に、変化をもたらすものであった。 地政学理論の観点から、これらの諸国の台頭の意味を考えてみよう。これらの国々は、単純に「陸上国家」として、「海洋国家」連合の覇権に挑戦したわけではなかった。ただ、「陸上国家」と「海洋国家」の二元的対立関係を強調する「英米系地政学理論」の世界観を、相対化した。つまり、二元的なものではない、より「多元的」な世界観を求めた。 たとえば、ロシアで代表的な思想家であるアレクサンドル・ドゥーギンが標榜する「ユーラシア主義」の思想などを見ると、「英米系地政学理論」の特徴である「陸上国家」と「海洋国家」の二元的な対立とは異なる世界観が内包されていることがわかる。より「大陸系地政学理論」に近い「多元主義」を志向する内容だ。 ナチス時代のドイツで活躍した理論家のカール・ハウスホーファーに代表される「大陸系地政学理論」によれば、世界は、いくつかの主要な「圏域」に分かれる。そしてそれぞれの「圏域」に、覇権国というべき存在がある。たとえばユーラシア大陸中央部の「圏域」は、ロシアが君臨する地域だ。ドゥーギンが代表する「ユーラシア主義」の地政学理論は、明らかに「大陸系地政学理論」の系譜に属する。 このように大陸系地政学理論では、「圏域(勢力圏)」の存在が重視される。そして異なる「圏域」の有力国が、「勢力圏」の線引きの調整を通じて、共存を図っていく姿勢が模索される。 この考えの延長線上で、欧州と北米以外のそれぞれの地域から、代表的な有力国を集まってくる仕組みで、G20、そしてBRICSが形成された。特にBRICSは、「海洋国家」連合の構成国を含まないで形成され、「圏域」思想を重視する「大陸系地政学理論」を意識した「多元主義」を標榜する国際フォーラムとして存在感を高めた。 グローバリズムとも特徴づけられる「英米系地政学理論」にのっとった世界観を標榜するのが「海洋国家」連合のネットワークだとすると、非欧米諸国の有力国は、「圏域」思想に依拠した「多元主義」を標榜する。21世紀に入ってからの欧米諸国が形成する「リベラルな国際秩序」の減退は、他の有力国の台頭を通じた「多元主義」の国際秩序の世界観の広がりと、密接不可分な関係にある。 ■ロシア・ウクライナ戦争と二つの異なる地政学理論 現代世界を揺るがせ続けているロシア・ウクライナ戦争では、「英米系地政学理論」の世界観と、「大陸系地政学理論」の世界観が、ぶつかりあっている。「リベラル国際秩序」を推進する「英米系地政学理論」の見方では、ロシアの東欧への拡張政策に対して、封じ込め政策をとる必要性が強調される。これに対して「大陸系地政学理論」の見方では、ウクライナはロシアの「圏域(勢力圏)」であり、他の「圏域(勢力圏)」の浸食は、地域の安定を損なう。 NATO(西大西洋条約機構)の東方拡大が、ロシア・ウクライナ戦争の原因であるか否かについては、論争がある。欧米諸国は、否定しているが、ロシアのプーチン大統領は、NATOのほうが最初に挑発をしてきた、という見解を示している。国際法上は主権国家の独立は尊重されなければならない、という原則は当然である。ただ、それとは別に、脅威の認識は、いわば主観的な問題になる。また安定した安全保障の仕組みの構築も、国際法だけでは達成できない課題だ。 NATOは、劇的で急速な拡大にもかかわらず、これまで旧ソ連地域の国を加盟させたことはない。例外はバルト三国だが、NATO構成諸国は、バルト三国のソ連への併合を無効とみなし、冷戦期を通じても承認していなかった。またバルト三国は、ソ連崩壊前に独立を果たしたという点でも、ウクライナをはじめとする他の旧ソ連地域の諸国とは、位置づけが異なる。 大国間のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が秩序維持の原理であると信じられていた時代のヨーロッパで、大国に浸食されずに独立を維持できた国は、東欧には存在しなかった。第一次世界大戦までの時代の東欧は、ロシア、ドイツ、またはオーストリアによって分割支配されていた。第一次世界大戦後、国際連盟が設立され、集団安全保障の謳い文句で、東欧に数々の独立国が作られた。ウクライナは、その際に独立を宣言したが、すぐにソ連に吸収されてしまった地域である。その後、第二次世界大戦を経て、東欧の政治地図はたびたび変わったが、ソ連が縮小することはなかった。 1991年にソ連が崩壊してウクライナは独立国となったが、親ロシア派と親欧州派との間の政治闘争が繰り返された。2014年以降は、クリミアがロシアによって占領されただけでなく、東部のドネツク州とルハンスク州が、戦争に陥り、キーウの中央政府の実効支配から外れた。 「リベラル国際秩序」を標榜する欧米諸国は、主権国家の領土的統一性の原則を参照する。日本もそうである。だがロシアのプーチン大統領の主観では、欧米諸国の態度は、ロシアの封じ込め政策でしかなかった。NATOの歴史的な「圏域」を度外視した行動こそが、地域の安定を損なうものだ、という主張を、プーチン大統領は繰り返している。 地政学理論の二つの伝統から見れば、ロシアの主張は、「大陸系地政学理論」にそったものである。もちろんそれは現代の国際法の原則を尊重した理論ではない。だが欧米諸国の「二重基準」に不信感を持っているロシアから見れば、欧米諸国の指導者たちは機会主義的に都合よく国際法を解釈しているだけで、実態は、「英米系地政学理論」にもとづいたロシアの封じ込めを継続して行っているにすぎない、ということになる。 ロシア・ウクライナ戦争だけを見れば、国際法の観点から見て、ロシアの主張が弱い。しかし他の地域の事例を参照するならば、欧米諸国は恣意的に国際法を参照する「二重基準」に陥っている、という主張にも、妥当性があるように見えてくる。そのため、ロシアに対する国際的な非難は盛り上がりを欠く結果になっている。対ロシア経済制裁に参加しているのは、アメリカの軍事同盟国のみである。2022年2月の全面侵攻発生直後は、国連総会において141カ国がロシアの侵略を非難する決議に賛成した。 文言調整のうえで、翌年にも一応は同趣旨の決議が141カ国の賛成で採択された。だが、その後は、決議提出がなされなくなった。141カ国の賛同を得ることが不可能になっているからである。2024年6月に開催された「平和サミット」の共同宣言に署名した諸国の数は80カ国ほどにとどまった。サミット後しばらくの間、ウクライナ政府は、「グローバルサウス」諸国の賛同を取り付けて第二回サミットを開催する、と強調していた。だがそのような発言は、最近ではなされなくなっている。 ■中東における勢力圏思想のせめぎあい 2024年を通じて戦火が広がり続けたのが、中東だ。昨年から始まったイスラエルのガザでの軍事作戦は、終わりが見えない。それに加えて、イスラエルは周辺国の勢力との交戦を続け、レバノン、イエメン、シリア、イランで、軍事行動を行ってきている。 この状態を、大局的に、地政学理論の観点から見るならば、イスラエルは、「英米系地政学理論」における「海洋国家」連合の代理勢力として、中東における敵対者の勢力の拡大を防ぐ行動に出ている、と描写することができる。そのため明白な国際法違反行為が繰り返しているにもかかわらず、欧米諸国から、手厚い保護を受けている。 地政学理論の観点から言えば、イスラエルは、米国を中心とする勢力が、中東に打ち込んだくさびである。イスラエルの存在を通じて、アメリカは、敵対的な勢力が中東を支配下に置いてしまうことを防ぐことができる。国内事情に加えて、地政学的な計算の観点からも、アメリカはイスラエルを見放さない。 そしてシリア南部のドゥルーズ派を懐柔し、アメリカ軍の基地の存在も念頭に置きながら、北部のクルド人勢力と連携することを狙っている。これらの勢力の連携が果たせれば、シリア東部にイランの影響力の浸透を遮断する回廊を形成することができるからだ。 |
すでに「トランプは戦争を好まない」と言われており、あくまでも「ディール」の関係ですべてを解決していくのであろう、とオジサンは思う。