新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

デールで迫るトランプへの対抗は「「米国債売却」だろう

2025年01月05日 11時58分00秒 | 石破外交

年が改まると「必ず出てくるのは「今年はどんな年になるか?」といった根拠のない予想記事が出てくる。
 
中には、十分な根拠に基づいたこんな記事もある。
 
2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感 何起こるか、怖いもの見たさの大阪万博
 

「2025年は万博イヤーになる」──。
 正月明け1月3日は大阪・関西万博の開催まで100日の節目。準備を進める大阪府の吉村知事は機運醸成に期待を寄せるが、盛り上がるどころか、盛り下がるばかりだ。
 三菱総合研究所が12月末に公表した万博に関する意識調査によると、万博に「行きたい」と答えた人は10月時点で24%。前回4月から3ポイント減少した。一方、認知度は93%と高水準。「知ってはいるが、行かない」が大多数を占めている。
 この結果に、吉村は「万博の中身をより具体的に発信していきたい」と意欲を見せたが、そもそも開催から半年で更地になるイベントに国費だけで1649億円がつぎ込まれること自体、バカバカしい。中身や広報の充実以前の問題だ。
 廃棄物の最終処分場である万博会場の地下からは、いまだにメタンガスが噴出している。国や万博協会はガス抜き管の設置など安全対策はバッチリと強調するが、24年3月にガス爆発事故が発生して以降、8月にガス測定した19回のうち爆発基準値超えが16回、退避基準値超えが19回も検出された。
 何が起きるか分からないのに、万博協会は約2820万人の来場を見込む能天気ぶり。怖いもの見たさの人がそんなにいるとは思えないが、その証拠に前売りチケットの販売状況は企業割り当て分の700万枚を超えてからサッパリ振るわない。目標1400万枚には程遠い状況だ。
 万博関連の著作がある建築エコノミストの森山高至氏が言う。
「赤字の場合にどう補填するのかといった目の前の課題をウヤムヤにして、どうして未来社会の在り方を提示できるのでしょうか。現実から目を背け『きっとうまくいく』と唱えているだけです。問題を積み残して開催にヒタ走るあたり、『現実逃避万博』ですよ」
 ドッチラケで当然である。

 






 
こんなリアルな指摘もある。
 
大阪万博は、憶測して見ると人っ子一人いない中、貧相なパビリオンが立ち並ぶだけの不気味なSFみたいな光景が広がるのではないか?
食事をしようにも、なんせごみ処理場だった場所なのでとにかく不潔。アスファルトやコンクリートで覆い隠したって汚染物質は出てくる。
食中毒が蔓延し、みんな恐れおののいて来場者増なんか望むべくもない。
史上まれに見るガラガラ万博の後に襲うのは、空前絶後の大赤字だ。
維新は例によって屁理屈の上に屁理屈を重ねたあげく、国税で処理しようとするのではないかといわれている。
しかし別の見方もある。恐ろしい話だが、大阪府市は金になるハコモノやら何やら資産を叩き売って金をつくり、負債に充てるのではないかといわれている。
美術館や博物館もすべて売却される。およそ文化都市とは呼べない灰色の町になる。
揚げ句の果ては、夕張の二の舞になって財政破綻するのではないか?
しかし万博の責任者は石丸新党に逃げてもぬけの殻になっているかもしれない。

半グレチンピラのガキどもは逃げ足だけは早い。


 
ところで、すでに1年前になるのだが、こんな記事があったことを覚えているだろうか?。
 
安倍元首相銃撃 2回目の『公判前整理手続き』山上被告も初出席
 
2022年7月、奈良市で安倍元総理大臣が銃撃された事件で、殺人などの罪で起訴された山上徹也 被告の裁判を前に証拠や争点などを絞り込む2回目の「公判前整理手続き」が23日に行われ、被告本人も初めて出席しました。
2022年7月、奈良市で安倍元総理大臣が銃撃されて死亡した事件では、無職の山上徹也 被告(43)が殺人などの罪で起訴されています。
この事件は裁判員裁判で審理されるとみられ、23日午前10時すぎから奈良地方裁判所で裁判を前に証拠や争点などを絞り込む2回目の「公判前整理手続き」が行われ、被告本人も初めて出席しました。
関係者によりますと、裁判所と検察、弁護士の三者で証拠や争点に関するやりとりなどが行われ手続きは30分ほどで終わりました。
今後の手続きの日程などは決まっていないということです。
山上被告は捜査段階の調べに対し、母親が多額の献金をしていた旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述していたということで、裁判では被告の境遇などの情状面を踏まえた刑の重さなどが争点になるとみられます。
初めての手続きは急きょ中止に
山上被告の公判前整理手続きをめぐっては、去年6月12日、初めての手続きが始まる前に不審な段ボール箱が裁判所に届いて警察の爆発物処理班が出動する騒ぎとなり、手続きが急きょ中止となった経緯があります。
当日は本人が出席する意向を示していたことから、奈良地方裁判所は正面入り口にゲート式の金属探知機を設置したほか、警察も周辺で警戒に当たっていました。
裁判所に届いた段ボール箱の中身は被告の刑を軽くするよう求める署名でしたが、この騒ぎの影響で初めての手続きは去年10月に延期されました。
弁護団によりますと、被告はこの時「爆発物でなくてよかった」という趣旨の話をしたうえで、「自分が出席することでこのような騒ぎが起きた。手続きに出席するかどうかはよく考えたい」などと話していたということです。
そして、去年10月13日に改めて初めての手続きが行われましたが被告本人は出席せず、手続きへの出席は今回が初めてです。
2回目の手続き 奈良地裁では厳戒態勢
山上徹也被告の裁判に向けた2回目の公判前整理手続きが行われた奈良地方裁判所では、人の出入りを正面玄関の一か所に限定したほか、入り口に金属探知機を設置して出入りする一人一人の荷物をチェックする厳戒態勢がとられました。
23日は被告本人も出席し、午前9時半前に被告を乗せたとみられる車が裁判所に入りましたが、裁判所やその周辺で目立った混乱などはありませんでした。

 
裁判が開かれる様子もなく、山上容疑者は既2年半も勾留されている。ここまでくると裁判すると何か不都合なことでもあるのかとつい下衆の勘繰りも出てくる。
 
こうした状況は明らかにって、常軌を逸しているのだが、不思議なことにメディアはほとんど興味がない様子であたかもいずれ風化することを待っているようである。
 
確かに 公判になれば安倍晋三と旧統一教会の関係が微に入り細に入り掘り起こされることは当然なのだが、うがった見方によれば、山上徹也 被告が後ろからどのように安倍晋三の心臓に達したのかが明らかにされておらず、2発撃ったにもかかわらず、安倍晋三の体内からは1発の銃弾しか発見されなかったというような話も聞こえてきている。
 




 
まあ下世話な話はこのくらいにして、東京外国語大学総合国際学研究院篠田 英朗教授が昨年の1年間をこう振り返っていた。
 
『戦争の時代」となってしまった「2024年」を「地政学」の観点から振り返る」  
 
2024年も数多くの戦争が世界中で続いた。過去数年の間に、世界の戦争の数は、急激に増えた。それを受けて、2024年にも、多くの戦争が続いた。
ヨーロッパにおけるロシア・ウクライナ戦争、中東におけるガザ危機やその他の複合的に重なり合う戦争、アフリカにおける東から西に貫くアフリカの角からサヘルにかけての一帯で多発している数々の戦争、などが甚大な被害を出している。もちろん、アジアではミャンマーの状況が深刻だ。凶悪犯罪の犠牲者数を考えると、ラテンアメリカ諸国の状況も深刻である。
10年ほど前までは、まだ国際的な平和活動も活発だった。戦争の数もなんとか抑え込まれていた。だが2010年代以降、戦争の数は増加し続け、国際的な平和活動の数のほうは減少し続けている。厳しい状況に、対応が追い付いていないだけでなく、追いつこうとする政策的意欲も萎えてしまっているような事態だ。
この現代の戦争の時代を、どう見ればいいだろうか。本稿では地政学の理論の観点を用いて、大局的な視点から、整理を試みてみたい。
■英米系地政学理論に依拠した「海洋国家」連合と「リベラル国際秩序」
35年ほど前、冷戦が終わった時、「自由民主主義の勝利」を前提にした「新しい国際秩序」なるものが語られた。あれはいったい何だったのか。
冷戦終焉は、東欧の共産主義政権の崩壊と、ソ連の崩壊によって、引き起こされた。
自由主義陣営と共産主義陣営の対立が、冷戦だったとすると、一方の陣営の崩壊によって、それは終わった。そこで、国際社会が標榜する価値観は、自由民主主義の価値観に収斂していき、それによって各国の政治体制も、国際的な経済体制も、より普遍主義的で一元的なものに刷新されていく、と感じられるようになった。
もちろん、共産主義陣営が崩壊したからと言って、自由主義陣営が普遍的に万全で問題がないことが保証されたわけではない。だが当時は、「自由民主主義の勝利」の物語にそって、「新しい国際秩序」=「リベラル国際秩序」が、イデオロギー対立のない冷戦終焉後の世界にも広がっていく可能性が高い、と広範に信じられた。
確かに、旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国は、その後、NATO(北大西洋条約機構)の同盟網に加わり、自由主義陣営は、拡大した。だが、だからといって、世界全体が自由主義を標榜するようになったわけではなかった。まして全ての諸国が欧米諸国の同盟国になったわけでもなかった。
「リベラル国際秩序」とは、自由民主主義が普遍化した国際秩序というよりは、自由主義陣営諸国の影響力が高まった国際社会の秩序のことであった。それは、欧米諸国の介入主義的行動を強く要請して、成り立つものであった。
アメリカを中心とする自由主義陣営の諸国の結びつきは、地政学理論にそって言えば、「海洋国家」が結びついたネットワークのことだ。ハルフォード・マッキンダーに代表される「英米系地政学理論」の伝統にそって言えば、冷戦構造とは、ユーラシア大陸中央部の「ハートランド」に位置しつつ、海に向かって膨張政策をとってくる「陸上国家」を、「海洋国家」連合が封じ込めていく構造のことであった。冷戦終焉後の「リベラル国際秩序」とは、「陸上国家」の膨張が止まった後、「海洋国家」諸国がより自由にグローバルに影響力を行使するようになった時代の秩序のことであった。
■大陸系地政学理論に依拠した「圏域(勢力圏)」思想の巻き返し
21世紀に入ると、介入主義が極まって、アメリカやその同盟諸国が、アフガニスタンやイラクで大々的な軍事介入を行い、結果として国力を疲弊させていくようになった。代わって「陸上国家」の代表であるロシアは、国力を立て直していった。加えて、中国が、超大国として台頭した。さらに、インド、ブラジル、インドネシア、トルコなどが国力を充実させ、それぞれの地域での存在感も高めていった。これらの国々の台頭は、アメリカが中心となった「海洋国家」連合が主導する国際秩序に、変化をもたらすものであった。
地政学理論の観点から、これらの諸国の台頭の意味を考えてみよう。これらの国々は、単純に「陸上国家」として、「海洋国家」連合の覇権に挑戦したわけではなかった。ただ、「陸上国家」と「海洋国家」の二元的対立関係を強調する「英米系地政学理論」の世界観を、相対化した。つまり、二元的なものではない、より「多元的」な世界観を求めた。
たとえば、ロシアで代表的な思想家であるアレクサンドル・ドゥーギンが標榜する「ユーラシア主義」の思想などを見ると、「英米系地政学理論」の特徴である「陸上国家」と「海洋国家」の二元的な対立とは異なる世界観が内包されていることがわかる。より「大陸系地政学理論」に近い「多元主義」を志向する内容だ。
ナチス時代のドイツで活躍した理論家のカール・ハウスホーファーに代表される「大陸系地政学理論」によれば、世界は、いくつかの主要な「圏域」に分かれる。そしてそれぞれの「圏域」に、覇権国というべき存在がある。たとえばユーラシア大陸中央部の「圏域」は、ロシアが君臨する地域だ。ドゥーギンが代表する「ユーラシア主義」の地政学理論は、明らかに「大陸系地政学理論」の系譜に属する。
このように大陸系地政学理論では、「圏域(勢力圏)」の存在が重視される。そして異なる「圏域」の有力国が、「勢力圏」の線引きの調整を通じて、共存を図っていく姿勢が模索される。
この考えの延長線上で、欧州と北米以外のそれぞれの地域から、代表的な有力国を集まってくる仕組みで、G20、そしてBRICSが形成された。特にBRICSは、「海洋国家」連合の構成国を含まないで形成され、「圏域」思想を重視する「大陸系地政学理論」を意識した「多元主義」を標榜する国際フォーラムとして存在感を高めた。
グローバリズムとも特徴づけられる「英米系地政学理論」にのっとった世界観を標榜するのが「海洋国家」連合のネットワークだとすると、非欧米諸国の有力国は、「圏域」思想に依拠した「多元主義」を標榜する。21世紀に入ってからの欧米諸国が形成する「リベラルな国際秩序」の減退は、他の有力国の台頭を通じた「多元主義」の国際秩序の世界観の広がりと、密接不可分な関係にある。
■ロシア・ウクライナ戦争と二つの異なる地政学理論  
現代世界を揺るがせ続けているロシア・ウクライナ戦争では、「英米系地政学理論」の世界観と、「大陸系地政学理論」の世界観が、ぶつかりあっている。「リベラル国際秩序」を推進する「英米系地政学理論」の見方では、ロシアの東欧への拡張政策に対して、封じ込め政策をとる必要性が強調される。これに対して「大陸系地政学理論」の見方では、ウクライナはロシアの「圏域(勢力圏)」であり、他の「圏域(勢力圏)」の浸食は、地域の安定を損なう。
NATO(西大西洋条約機構)の東方拡大が、ロシア・ウクライナ戦争の原因であるか否かについては、論争がある。欧米諸国は、否定しているが、ロシアのプーチン大統領は、NATOのほうが最初に挑発をしてきた、という見解を示している。国際法上は主権国家の独立は尊重されなければならない、という原則は当然である。ただ、それとは別に、脅威の認識は、いわば主観的な問題になる。また安定した安全保障の仕組みの構築も、国際法だけでは達成できない課題だ。
NATOは、劇的で急速な拡大にもかかわらず、これまで旧ソ連地域の国を加盟させたことはない。例外はバルト三国だが、NATO構成諸国は、バルト三国のソ連への併合を無効とみなし、冷戦期を通じても承認していなかった。またバルト三国は、ソ連崩壊前に独立を果たしたという点でも、ウクライナをはじめとする他の旧ソ連地域の諸国とは、位置づけが異なる。
大国間のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が秩序維持の原理であると信じられていた時代のヨーロッパで、大国に浸食されずに独立を維持できた国は、東欧には存在しなかった。第一次世界大戦までの時代の東欧は、ロシア、ドイツ、またはオーストリアによって分割支配されていた。第一次世界大戦後、国際連盟が設立され、集団安全保障の謳い文句で、東欧に数々の独立国が作られた。ウクライナは、その際に独立を宣言したが、すぐにソ連に吸収されてしまった地域である。その後、第二次世界大戦を経て、東欧の政治地図はたびたび変わったが、ソ連が縮小することはなかった。
1991年にソ連が崩壊してウクライナは独立国となったが、親ロシア派と親欧州派との間の政治闘争が繰り返された。2014年以降は、クリミアがロシアによって占領されただけでなく、東部のドネツク州とルハンスク州が、戦争に陥り、キーウの中央政府の実効支配から外れた。
「リベラル国際秩序」を標榜する欧米諸国は、主権国家の領土的統一性の原則を参照する。日本もそうである。だがロシアのプーチン大統領の主観では、欧米諸国の態度は、ロシアの封じ込め政策でしかなかった。NATOの歴史的な「圏域」を度外視した行動こそが、地域の安定を損なうものだ、という主張を、プーチン大統領は繰り返している。
地政学理論の二つの伝統から見れば、ロシアの主張は、「大陸系地政学理論」にそったものである。もちろんそれは現代の国際法の原則を尊重した理論ではない。だが欧米諸国の「二重基準」に不信感を持っているロシアから見れば、欧米諸国の指導者たちは機会主義的に都合よく国際法を解釈しているだけで、実態は、「英米系地政学理論」にもとづいたロシアの封じ込めを継続して行っているにすぎない、ということになる。
ロシア・ウクライナ戦争だけを見れば、国際法の観点から見て、ロシアの主張が弱い。しかし他の地域の事例を参照するならば、欧米諸国は恣意的に国際法を参照する「二重基準」に陥っている、という主張にも、妥当性があるように見えてくる。そのため、ロシアに対する国際的な非難は盛り上がりを欠く結果になっている。対ロシア経済制裁に参加しているのは、アメリカの軍事同盟国のみである。2022年2月の全面侵攻発生直後は、国連総会において141カ国がロシアの侵略を非難する決議に賛成した。
文言調整のうえで、翌年にも一応は同趣旨の決議が141カ国の賛成で採択された。だが、その後は、決議提出がなされなくなった。141カ国の賛同を得ることが不可能になっているからである。2024年6月に開催された「平和サミット」の共同宣言に署名した諸国の数は80カ国ほどにとどまった。サミット後しばらくの間、ウクライナ政府は、「グローバルサウス」諸国の賛同を取り付けて第二回サミットを開催する、と強調していた。だがそのような発言は、最近ではなされなくなっている。
■中東における勢力圏思想のせめぎあい
2024年を通じて戦火が広がり続けたのが、中東だ。昨年から始まったイスラエルのガザでの軍事作戦は、終わりが見えない。それに加えて、イスラエルは周辺国の勢力との交戦を続け、レバノン、イエメン、シリア、イランで、軍事行動を行ってきている。
この状態を、大局的に、地政学理論の観点から見るならば、イスラエルは、「英米系地政学理論」における「海洋国家」連合の代理勢力として、中東における敵対者の勢力の拡大を防ぐ行動に出ている、と描写することができる。そのため明白な国際法違反行為が繰り返しているにもかかわらず、欧米諸国から、手厚い保護を受けている。

地政学理論の観点から言えば、イスラエルは、米国を中心とする勢力が、中東に打ち込んだくさびである。イスラエルの存在を通じて、アメリカは、敵対的な勢力が中東を支配下に置いてしまうことを防ぐことができる。国内事情に加えて、地政学的な計算の観点からも、アメリカはイスラエルを見放さない。
この事情の余波が新たな展開を見せたのが、2024年末のシリア情勢の急変であった。アサド政権崩壊の流れの中で、側面支援を、シリア駐留のアメリカと、アサド政権軍に空爆を繰り返したイスラエルが、遂行した。アサド政権崩壊後、間髪を入れず、イスラエルはゴラン高原に侵攻して、一帯を占領下に置いた。

そしてシリア南部のドゥルーズ派を懐柔し、アメリカ軍の基地の存在も念頭に置きながら、北部のクルド人勢力と連携することを狙っている。これらの勢力の連携が果たせれば、シリア東部にイランの影響力の浸透を遮断する回廊を形成することができるからだ。
イスラエルにとって最大の脅威はイランであり、あらゆる行動は、イランの脅威の除去に向かって進んでいる。同じ目標を持ってイスラエルを支援しているのは、アメリカやイギリスを中心とする欧米諸国である。それらの諸国は、イランと連携の度合いを深めるロシアも敵国とみなして、中東における影響力の拡大を封じ込めようとしている。イランとロシアが支援していたシリアにおけるアサド政権の崩壊は、そのような政策的態度がもたらした成果の一つだと言えるだろう。
ロシアは「ユーラシア主義」を標榜し、自らの「圏域(勢力圏)」を固めつつ、中東を経由してアフリカにまで影響力を伸ばす政策をとっている。アラビア半島の付け根に位置する地域の交通の要であるシリアを友好国とすることも、ロシアの利益に資する。その観点から、ソ連時代から続くシリアとの友好関係を維持し、アサド政権を支援して、軍事基地をシリア領内に維持していた。
ただし「ユーラシア主義」の地政学理論から見れば、より重要で強い関心の対象となるのは、イランとの歴史的な蜜月関係を維持し、冷戦時代にアフガニスタンに侵攻までしながら、果たせなかったインド洋に通じる「南北輸送回廊」を発展させることだ。また黒海から地中海を経由して伸びるロシアの影響力は、トルコとの関係さえ良好であれば、直接的にアフリカに通じさせることができる。
■ロシアとトルコの緊張関係
ロシアとトルコは、これまで、三つの地域で、敵対しあう代理勢力を支援する緊張関係に置かれてきた。ナゴルノ・カラバフ紛争をめぐるアルメニアとアゼルバイジャン、シリアにおけるアサド政権と反アサド勢力のジハード主義勢力、そしてリビアにおけるハフタル将軍のLNAとトリポリの暫定政府GNUである。
これら三つの戦争のうち、ナゴルノ・カラバフとシリアの二つの戦争は、トルコが支援する勢力が勝利を収める形で、収斂をしてきた。ロシアは、いずれの場合でも、トルコと「圏域」を調整する動きを続けつつ、最後は自らが支援してきた現地勢力を見放す形で、トルコの勢力圏の拡大を黙認する態度をとった。それはロシアが、トルコの「圏域」に配慮をしてトルコとの関係維持に努めつつ、優先順位の見定めをしているからだろう。オスマン帝国の復活を目指しているとまで言われるエルドアン大統領は、コーカサスから中東にかけて、影響力を広げている。
トルコは、最近のエチオピアとソマリア連邦政府の関係改善合意の調停者となったことで、アフリカの角地域にも大きな関心を持っていることを示した。ロシアは、イランの「圏域」とともに、トルコの「圏域」を認める「大陸系地政学理論」を応用した「多元的」な世界観にもとづく調整を模索するはずである。
トルコにとって、支援してきたHTS中心の暫定政権ができたことは、大きな成果である。アサド政権が崩壊していく時期にも、ロシアやイランとの調整を欠かさず、成し遂げた。今後も「圏域」の調整を図っていくだろう。
トルコのシリアにおける最大の目標は、クルド勢力の封じ込めである。この目標の達成の障害になるのは、ロシアやイランではなく、アメリカやイスラエルである。アメリカにとってクルド人勢力は中東における有力な代理勢力であり、イスラエルにとっては反イスラエル勢力の影響力の拡大を食い止める障壁である。そこでトルコは、優勢になった立場を活かして、アメリカやイスラエルとの「勢力圏」の調整を図りたいだろう。
「リベラル国際秩序」の普遍主義を掲げていたバイデン政権であれば、調整はより難しかったと思われる。ただしトランプ政権は異なる姿勢をとっていく可能性もある。もっともイスラエルは、妥協的な調整を嫌うだろう。異なる地政学理論がもたらす確執は、シリア情勢の混沌を示唆する。
■アフリカにおける橋頭堡と砂漠の海の沿岸部
アフリカでは、東部アフリカの角のソマリアから、西アフリカのサヘル地域に至るまでの帯状の地域で、戦争が多発している。アデン湾や紅海をはさんで中東に向き合うソマリアなどのアフリカの角地域は、地政学理論でいう「橋頭堡(bridgehead)」としての性格を持っている。大陸から海洋に突き出した半島部が、港の埠頭のように機能する、というイメージである。アフリカ大陸がインド洋に突き出たアフリカの角の地域は、アフリカ大陸有数の「橋頭堡」である。
こうした地域では、様々な勢力がぶつかり合う。「英米系地政学理論」にそって言えば、「陸上国家」と「海洋国家」の確執が、先鋭化する地域だ。実際に、ソマリアは、冷戦期から今日に至るまで、戦争の連続の歴史をへてきている。その背後には様々な外国勢力の暗躍もある。
砂漠は海のようなものである。そう考えると、サヘルは、沿岸部に似た地理的性格を持っている。サハラ砂漠を、東西に伸びる海と同じだと考えて、地図を見てみよう。そうすると、砂漠の海の南側の「沿岸部」で、戦争が連なり合って発生していることがわかる。砂漠の海の対岸にあう北アフリカ・中東の騒乱の影響を、正面から受け止めなければならないのが、サハラ砂漠の南側に帯状に広がるサヘルだ。サブサハラ・アフリカの「沿岸部」としてのサヘルは、地政学理論から見れば、様々な勢力の浸透が、確執を引き起こしやすい。
この地理的事情を反映して発生していると言える目に見えた現象の一つが、中東を起源とするテロ組織ネットワークのアフリカへの浸透だ。東のソマリアで長年にわたる戦争を引き起こしているのは、アルカイダ系のアルシャバブである。西のマリで活発な反政府軍事活動を行っているのは、やはりアルカイダ系のJNIMである。もっともナイジェリア北部を中心としたチャド湖周辺地帯で勢力を誇っているのは、イスラム国(IS)系のボコハラムやISWAPである。
アフリカの特徴の一つは、大陸内に覇権的な影響力を持つ土着の有力国が少ないことだ。南部の南アフリカ、西部のナイジェリアが、例外的な存在だろう。しかしサヘルの騒乱のため、西アフリカにおけるナイジェリアの覇権は揺らいでいる。相次いでクーデターが起こったマリ、ブルキナファソ、ニジェールは、フランス軍と米軍及び国連PKOを追い出し、ロシアのワグネルを招き入れて、テロ組織との戦争を遂行している。ナイジェリアを盟主とする準地域機構のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)からは脱退する。「大陸系地政学理論」と「英米系地政学理論」の世界観の確執は、アフリカ独特の混沌を伴って、大陸内の各準地域で、展開している。
■トランプ大統領とモンロー・ドクトリン 
こうした2024年の現実を見たうえで、2025年の世界情勢を展望すると、アメリカのトランプ政権がどのような政策をとってくるかが、やはり一番の着目点になる。地政学理論の観点からの最大の焦点は、アメリカが「英米系地政学理論」にそった「海洋国家」連合の盟主として、どこまで本当に行動していくか、であろう。
すでにトランプ大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の停戦を果たして、ヨーロッパでのロシアの封じ込め政策に終止符を打ちたい姿勢を明確にしている。中東でのイスラエル擁護の立場は強いものであり続けるだろうが、和平を達成したいという意図の発言もしており、他の「圏域」確保を志向する国家群と調整の可能性もあるだろう。
トランプ次期大統領は、中国との超大国間競争関係に注力していく意図を表明している。パナマ運河の運営が中国有利で米国不利になっているという理由で、パナマ政府に運河の返還を求める可能性があるとトランプ氏が示唆したことが、最近でも話題となった。
特に警戒しているのが、経済的権益にも直結している中国の東アジアの外での影響力の高まりだ。ただしバイデン政権とは異なり、「民主主義vs権威主義」のようなイデオロギー的な装いで政策を説明する姿勢をとっていくことはないだろう。トランプ氏は高関税政策を多用する意図を表明しているが、政治的に中国を敵対視したいわけでもないだろう。
実はアメリカは、第一次世界大戦までの時代は、ヨーロッパ列強との間の「相互錯綜関係回避」の原則を固めていた。いわゆる「モンロー・ドクトリン」の外交政策である。トランプ氏の政策が、単純な19世紀の「モンロー・ドクトリン」への回帰だけに終わることはないだろう。しかし、グローバリズムを標榜する普遍主義的な「英米系地政学理論」の伝統から離れて、「大陸系地政学理論」に近づく「圏域」間の調整を一定程度は認める方向に、アメリカの外交政策を転換させていく可能性はあるかもしれない。もしそのような転換が図られるならば、世界の戦争の状況にも、少なからぬ影響が及んでいくだろう。


 
すでに「トランプは戦争を好まない」と言われており、あくまでも「ディール」の関係ですべてを解決していくのであろう、とオジサンは思う。 

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