まるで国内には報道すべき重要なニュースが無いようなエイプリルフールの1日であった。
テレビメディアは新元号の発表前から生中継し、発表後の安倍晋三首相の会見はまるで平成時代の自分の成果発表会のような異常さを感じさせてくれた。
「首相の元号会見 保守色濃く、ネット世論を意識」というタイトルがぴったりであった。
今朝の朝日新聞では、「『日本が困難な時、万葉集がはやる』 令和は歴史的転換」と題して、国文学者の辰巳正明、中国哲学者の水上雅晴、歴史学者の磯田道史の3人が語り合った内容を掲載していた。
以下のツイッターがこれを読んだネット読者の反応。
「日本が困難な時、万葉集がはやる」 令和は歴史的転換:朝日新聞デジタル https://t.co/Crg1wlhqee
— 茨木シンフォニーさん (@ibasym) 2019年4月1日
まず見出しが正気ではないのはいいとして、
わりとマジに新元号「タピオカ」ぐらいでないと納得しないのではないかこの方たち。 pic.twitter.com/5ps6Rezw1e
論より証拠????60周年記念??中華航空
— 田中康夫 (@loveyassy) 2019年4月1日
台湾の国花??梅の花弁がCI??
日本国花は桜??日本国章は菊??
新元号「令和」考案??中西進ちゃまの深謀遠慮は半端ないって??
元号は中国伝来の制度????
国文学・中国哲学・歴史学者鼎談https://t.co/DoBt4RtlWP
デーブ・スペクターも看破??https://t.co/TolVeB6HVK pic.twitter.com/a89EqyWJxJ
この記事、本文である対談も素晴らしいが文末の「元号に使われた漢字一覧」が面白い。多い順に表記してあり、漢字をタップするとその漢字が入った元号一覧が出てくる!
— 伊丹和弘@マリサポ兼記者 (@itami_k) 2019年4月1日
→ 「日本が困難な時、万葉集がはやる」 令和は歴史的転換https://t.co/dcDhLoLmxO #令和 pic.twitter.com/t6BrRVUabF
「令和は「平和にならしめよ」という言葉にも読みうる。「上からの」政治に持っていきたいという(安倍首相の)姿勢を読み込む余地がある」と研究者。元号にもアベ首相が野望を潜ませる。
— 武天老師 (@MutenRooshi) 2019年4月1日
「日本の困難、万葉集がはやる」令和の出典は歴史的転換:朝日新聞デジタル https://t.co/jVoAVWaBX1 #令和
安倍政権はこの新元号発表会をかなり時間かけて用意周到にセレモニーを仕掛けてきた。
しかしこんな冷静な批判の声を無視してはならない。
【東京新聞より】
いっぽう、反安倍政権の筆頭でもある日刊ゲンダイは、「露骨な新元号、新天皇の政治利用『令和』幕開けの異様」という特集を組んでいた。
サブタイトルだけ見てもその内容が手に取るように分かるほどである。
■正午に「首相談話」、ほぼ全局が生中継という異様な時代の幕開け
■露骨すぎる安倍首相、官邸の元号セレモニー
■このセレモニー、トランプ国賓でわかるように次の天皇を政治に徹底的に利用していくだろう
■今上天皇の退位を恐らくほくそ笑んでいる安倍首相
■国家元首を気取る首相のセレモニーに全面協力する大メディア
同記事中の識者の声を紹介しておく。
「これまで安倍首相は、モリカケ疑惑など、政治を私物化していると散々批判されてきました。とうとう、新元号の発表まで私物化している。新元号の発表は、官房長官が事務的に行えば済むことです。なのに、事前に日程まで公表し、一大セレモニーのようにショーアップしている。一番の問題は、皇室を政治利用していることです。新元号に便乗しているのは明らかでしょう。象徴天皇制では、天皇を政治利用しないということは大原則のはずです」
「これまで安倍政権は、支持率が下がると北朝鮮の危機をあおっては、国民の関心を失政からそらしてきましたが、米朝が接近したため北朝鮮の危機は使えなくなった。そこで新元号と御代替わりを最大限に利用するつもりなのでしょう。実際、ここ数日、大手メディアの報道は、新元号一色になっています」
(法大名誉教授・五十嵐仁=政治学)
「新元号発表についても、支持者の意向を最優先したように見えます。金融機関などのシステム改修が大変になってしまうため、なるべく早期に発表すべきとの指摘がありました。ところが、『退位当日に発表すべき』という保守系勢力の意思に押される形で、安倍首相は1カ月前というタイミングでの発表を決めたのです。狙いは、安倍首相の支持層への求心力維持と、自らを権威付けるためでしょう。今後も自分の利益のために皇室を政治利用するのではないか」
「過去の大戦に至る経緯では、軍部が天皇の名を利用して突き進んでいった側面があります。その反省から、憲法は、天皇は国政に関する機能を持たないと規定したのです。ところが、安倍首相はそんな規定を飛び越え、今回の改元セレモニーで皇室を政治的に利用している。これは、国民に同じ方向を向かせる全体主義的な社会に進む第一歩となり得るのではないでしょうか。私たち国民は、こうした動きをしっかりと注視し、『許さない』と声を上げ続けるべきです」
(高千穂大教授の五野井郁夫=国際政治学)
「新元号の発表をカウントダウンイベントのように捉え、連日、予想を報じるメディアの姿勢は異様でした。トランプ大統領と新天皇の会談についても、6月の大阪サミットに訪日する前になぜ、わざわざ行う必要があるのか。しかも、5月の国会開会中にです。これまでなら、大手メディアから『政治利用ではないか』と疑問の声が上がったはずですが、ほとんどない。批判精神を全く失ったかのようです」
(聖学院大教授の石川裕一郎=憲法)
民主党政権下の2009年12月に行われた天皇と中国・習近平国家副主席(当時)をめぐる特例会見では、自民党が「天皇の政治利用」と猛バッシングしており、安倍晋三も自身のメルマガに〈天皇の政治利用は、好きにやらしてもらうとの宣言といえる(略)君、国売りたもうことなかれ〉と書き込んでいたことを、本人はすっかり忘れているようである。
昨夜のNHKニュースでは、「『令和』選定手続き公開には『30年程度必要』安倍首相」と話していたらしい。
さらに昨日の官房長官の会見では、他の候補については明らかにしないということだったにもかかわらず、どうやら新元号「令和」に対する批判を封じるためなのか政府側がリークし始めていた。
「新元号案 残る1つは「久化」 6案すべて判明」
【NHKニュースより】
日本会議の意を汲んで国書から新元号を選んだまでは筋書き通りだったのだが、今後どのように国民に浸透していくのかは定かではないが、「和暦やめ西暦の原則使用、外務省が検討 読み替え煩雑で」といった動きがあることは歓迎すべきことである。
それにしても、安倍政権のしたたかな思惑の通り、善良な国民は当分の間は、新元号祭に踊らされ、そして5月1日の新天皇即位の日までどころか通常国会が終了するまで、皇室利用の壮大な政治ショーに翻弄され続けるのではないだろうか、とオジサンは思う。