6月1日から、サッカーの試合でいえば「アディショナルタイム」みたいな、緊急事態宣言の延長に入った。
都内の繁華街では要請に応じない飲食店がポツポツ出始めており、それが延長、再延長とゴールポストを動かされるたびに増加しているようである。
先週の木曜日に都心での会議に出席したのだが、駅の周辺では「お酒あります」と書かれた紙が貼ってある居酒屋が目についた。
こんな裏技を披露する歌舞伎町のバー経営者の話がある雑誌に掲載されていた。
「LINEのタイムラインやSNSに〈換気のため店に出てます。用があったら連絡下さい〉って書き込むんです。一見、要請に従って休業をしながら、新型コロナ対策にも熱心に取り組んでいるみたいでしょう? 実は〈換気のために店に出て〉というのは店を開けています、という意味。飲みに来てよ、って呼び掛けているんです。アルコール持ち込みOKは宣言延長でNGにされちゃったし、こっちもやり方を考えないとね」
絶え間なく「緊急事態」が度重なる東京で、酒類を提供する飲食店が通常営業できたのは昨年11月27日までさかのぼる。
すでに半年以上もマトモに商売ができない上、都からの協力金の支給率は2月以降も5割に届かず、4月以降分は先月末にようやく申請受け付けが開始されたばかりという「自粛要請」にはもはや限界であろう。
なんで、飲食店ばかりが「悪者」にされ続けているのか。
「日本のコロナ対策「飲食店悪玉説」は本当に正しいのか」
コロナ流行が続き、飲食店への規制が続いている。妥当だろうか。 政府が根拠とするのは、昨年11月に米スタンフォード大学の研究チームが英「ネイチャー」誌で発表した論文だ。もっとも危険だったのは飲食店、ついでスポーツジム、カフェ、ホテルだったと結論づけている。 しかしながら、この研究は第1波を対象としたものだ。現状は違う。昨年12月、ニューヨーク州での新規感染の4分の3は私的な集まりが原因と報告されているし、飲食店は1.4%と報告され、4月27日のコロナ感染症対策アドバイザリーボードに提出された資料では、4月のクラスター発生463件中、飲食関係は82例に過ぎなかった。 多くの専門家が飲食店への規制について疑念を抱いている。2月26日、オランダの研究者は欧州での介入を検証した論文を「BMC公衆衛生」誌に発表し、「イベント禁止と学校閉鎖は有効だが、飲食店の閉鎖の効果は限定的」と結論づけている。3月30日「ネイチャー」は、「なぜ、屋内空間はいまだにコロナのホットスポットになるのだろう」という論文を掲載し、飲食店を特別視していない。 ところが、日本政府や専門家は「飲食店悪玉説」に固執する。尾身茂コロナ感染症対策分科会会長は「歓楽街や飲食を介しての感染拡大が原因であって、家族内や院内の感染はその結果として起こっている(昨年12月23日コロナ対策分科会)」と主張している。 現在、こんな主張をする専門家は世界にはいない。それはコロナが濃厚接触だけでなく、空気感染でうつることが分かってきたからだ。英「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」は4月14日に「コロナ空気感染の再定義」、英「ランセット」は5月1日に「コロナが空気感染することを示す10の理由」という「論考」を掲載している。 空気感染の主体はエアロゾルだ。咳やくしゃみで発生する飛沫と違い、最大で3時間程度、感染性を維持しながら空中を浮遊する。バスや航空機の中で遠く席が離れた人が感染するのは空気感染が原因と考えられている。コロナが空気感染するなら、濃厚接触者を対象としたクラスター対策でなく、広く無症状者を検査しなければならない。 このことに対しても政府は抵抗する。尾身会長はエアロゾルの中で粒子が大きいものをマイクロ飛沫と呼び、「(エアロゾルと比べて)短距離で起こる感染」で「実は3密のところで起きて(中略)いわゆる飛沫が飛ぶということで起こることは間違いない(衆院厚労委員会昨年12月9日)」と証言している。私が調べた範囲で「マイクロ飛沫」というコロナ関連の英文論文は、わずかに2つだ。こんなレベルの議論が国策になっている先進国はない。 これが日本の実態だ。飲食店が本当に危険なのか、科学的根拠に基づき見直す必要がある。 |
どうやら、尾身茂コロナ感染症対策分科会会長が「飲食店悪玉説」の張本人らしい。
その尾身会長も最近では政府の五輪関連の会議から締め出されており、専門家としての五輪開催 可否については政府に助言できなくなっていた。
そして、2日の衆院厚生労働委員会では、「五輪開催「今の状況でやるのは普通はない」と尾身氏、選手村への酒持ち込みも疑問視」との記事では、大会開催が国内の感染状況に与える影響を巡り「(専門家としての評価を)何らかの形で考えを伝えるのがプロフェッショナルの責務だ」と、専門家らしい矜持を示していた。
さらには、「何のために開催するのか明確なストーリー」が必要だという指摘に対しては、速攻で明快な答えが飛んでいた。
新型コロナ分科会・尾身会長:「今の状況でやるというのは、普通はない、このパンデミック(世界的大流行)で。」
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) June 2, 2021
「そもそも今回のオリンピック、こういう状況の中で、一体、何のためにやるのか。目的。」https://t.co/3dbEQ7Aztb
⇒金ダヨ、尾身さん。 pic.twitter.com/3i2UPolaAb
ところで、ワクチン接種に関してはオジサンの家にも接種券が届いた。
今週の土曜日(6月5日)から受付開始と書いてあったが、ネットで確認しようとしたら、なぜか6月20日までは予約がいっぱいであるという理解しがたいメッセージがあった。
昨年来、感染リスクのあるような外出は控えており、焦ってワクチンを接種する必要性も感じていない。
オジサンと同年齢のこの御仁はすでに1回目を接種したらしいのだが、五輪開催のためにワクチン接種を急がせるということには疑問を呈していた。
「内田樹『感染リスクを確実に増大させる東京五輪 開催に固執する真の理由とは』」
ワクチン接種の案内がうちにも届いた。かかりつけの病院に電話をしたら、予約に来てくださいと言われた。歩いて5分の病院の待合室で1時間ほど待って予約を済ませた。1回目の接種が7月19日、2回目が8月9日。「電話がつながらない。ネット予約がすぐに埋まる」という泣訴をネットで読んでいたので、心配していたのだけれど、予約までは簡単に済んだ。 私の2回目の接種日は東京五輪(が開催された場合)の全競技日程終了の翌日に当たる。 このペースだと、ワクチン接種が人口の6~7割に達して集団免疫の獲得が期待できるのは、早くても年末、遅ければ来年になるだろう。 日本にとって最優先の課題は感染の収束である。国民の健康と経済活動の再開を本気で配慮するなら、感染を拡大するような行為については最大限抑制的であるべきである。そんな理屈は子どもでもわかる。 五輪開催まで2カ月を切った今も日本各地は緊急事態宣言下にある。日本の感染状況を憂慮した米国政府は5月24日に日本を「渡航中止」国に指定した。米国のCDC(疾病対策センター)はワクチン接種済みでも変異ウイルスに感染するリスクがあることを重く見たのである。 緊急事態宣言は解除されず、米国から渡航中止国に指定されたにもかかわらず、この原稿を書いている時点(5月27日)ではIOC(国際オリンピック委員会)も政府も組織委も五輪中止を告げる気配がない。なぜ、感染リスクを確実に増大させるイベントの開催に当事者たちはこれほど固執するのか。誰か合理的な理由を教えて欲しい。 たしかに参加者がしばしば命を落とす危険な祭事は世界中に存在する。仮に祭事でいくたりかの死者が出ても、その儀礼によって集団が固く結びつけられるなら、算盤(そろばん)勘定は黒字になるということは経験的にはあるのかも知れない。よその祭事なら、私も口ははさまない。 しかし、五輪憲章は五輪を「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と定義している。「生き方の創造を探求する」イベントで死者を出した時にはどういう言い訳があり得るのだろう。 |
この記事に対して、読者からはこんなコメントが寄せられていた。
「内田樹氏、ワクチン接種してしまったのですね。
私は断固拒否派です。
長年インフルエンザワクチンを家族に強要されて受けていたら、1年中風邪が治らなくなって、数年前意を決して接種を止めたら、風邪が治るようになり、体調も劇的に改善しました。
インフルエンザワクチンは免疫系を確実に弱体化させると確信しました。」
ちなみにオジサンも一度もインフルエンザワクチンを打ったことはなく、今まで風邪もひいたことはない。
COVID-19のワクチンの効き目も未来永劫ではなく、毎年打たなくてはまらないことになる、と言う専門家も存在する。
最後に、ポスト「菅義偉」ともてはやされ、「ワクチン大臣」として存在感を示している河野太郎の“怪しい"資金処理について6月3日発売の週刊新潮で報じられていた。
「河野太郎大臣「後援会バス旅行」が不記載 政治資金規正法違反の疑い」
■専門家は「政治資金規正法上の不記載に問われる可能性も」 問題のバス旅行は、コロナで中止となった昨年を除き、ほぼ毎年1度のペースで開催されていた。後援会関係者らが200名ほど集まり、関東近郊に日帰り旅行に出かけるというもので、参加費は1万円前後。1回で200万円前後のイベントということになる。 この旅行の特徴は、河野大臣やその妻、事務所が総出で関わることだ。河野事務所の秘書が「世話役」としてバスに同乗し、 「行く先が都内の場合は、国会や霞が関に寄る。で、太郎さんが出てきて、挨拶をするんです」(バス旅行の参加経験者) サービスエリアなどで河野大臣の妻が待機し、参加者に挨拶をして回ることもあるという。つまり、この旅行は明確に河野大臣の「政治活動」と言える。 にもかかわらず、このバス旅行の収支は、この10年近くにわたって、一度も政治資金収支報告書に記載されていない。また、旅行を主催する河野太郎後援会は、これだけ大規模な政治活動を行っていながら、政治団体の届出もしていないのである。 政治資金に詳しい日大大学院の岩井奉信講師によると、 「河野太郎という政治家個人に関わるイベントの収支ですから、河野大臣の関係する政治団体のどこかに記載されていないとおかしい。後援会が政治団体を持たず、一方で議員も事務所も関与しているのですから、河野大臣の関係団体に記載するのが当然。政治資金規正法上の不記載に問われる可能性もあります」 河野太郎事務所に疑惑について質すと、 「関係政治団体からの収支がないことから計上を行っていません」 と、自らの団体とは関係なく、あくまで後援会の問題だ、と言いたいようだ。しかし、河野大臣の古参の地元後援者によると、 「実は10年程前まで『河野太郎後援会』は政治団体として登録されていました。それが『河野太郎事務所』と名前を変えた上に解散。代表は太郎さんの秘書でした」 というから、河野事務所と後援会が密接不可分な存在であることは明らかなのだ。 |
数年前にも、 「柴山文科相、公選法違反疑い バスツアー参加費記載せず」ということが発覚している。
どうやら、自民党の「政治とカネ」という奥深い宿痾はどんなワクチンを打っても効き目がないということであろう、とオジサンは思う。