ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

心に響く映画「冬の小鳥」 海外養子の子どもの孤独な内面を描く

2010-10-11 20:06:07 | 韓国映画(&その他の映画)
 「冬の小鳥」を観ようと朝11時頃岩波ホールに着いたら、30分前なのにチケット売場に人の列。結局私ヌルボの数人前で次回(14:30~)回しに。連休最後の日で、天気もいいし、ということで大勢やってきたのか、それとも作品自体の人気か?

 さて、この「冬の小鳥」の感想ですが、思っていたよりもはるかに良かったです。

 1970年代。父親に詳しい説明もなく捨てられてカトリックの児童養護施設に入れられ、養子の受け入れ先を待つ女の子ジニの姿は、ウニー・ルコント監督自身の実体験とのことです。具体的な展開のほとんどは創作とのことですが、「9歳だった時の心のままに書いた」という監督の思いがストレートに伝わってくる感じで、子どもの孤独や不安感、悲しみといったものがなんとも痛切に感じられます。(ヌルボのような第三者でも、大人の1人として罪責感のようなものに捉われてしまいます。かつてわが子を養子に出した親はこの映画を観続けることができるでしょうか?)

 韓国では、以前から海外への養子が多いことは知っていました。
 ホ・ヨンマンの漫画「食客」第1巻にも、<入養(입양.イビャン)>してアメリカに渡った子どもが成人後<思い出の米>を探し求める話がありました。

 パンフレットに、石坂浩一先生が「韓国の海外養子の歴史」という一文を寄せています。それによると、韓国から海外に渡った養子は1953~2004年に15万6242人。実際は20万人に上るともいわれるそうです。海外養子の契機は朝鮮戦争中の米軍兵士と韓国女性との間に生まれた戦争孤児。その後も貧困児童を対象に、主にアメリカへの入養が続いたとのことです。
 また、56年に設立されたキリスト教原理主義のホルト児童福祉会がこれまでの海外養子の半分を送りだしている、ということも初めて知りました。

 ドラマ関係はくわしくないのですが、ソ・ジソプがオーストラリアへの<入養児(입양아.イビャンア)>だった青年を演じた「ごめん、愛してる」や、アイルランドに入養したがアイルランド紛争で家族を失い韓国を訪れた女性をイ・ナヨンが演じた「アイルランド」も90年代以降の海外養子問題への関心の高まりのあらわれといえるようです。

 ウニー・ルコント監督は渡仏後初めて1990年に韓国を訪れ、実母にも会っているそうです。子どもがちゃんと成長して幸せになっているならいいですが、たとえば「韓国 養子」でネット検索するとその反対の事例・事件がいろいろあって、考えさせられます。

 映画の中でも、「食母(식모.シンモ.家政婦)にさせられてしまう!」と養女に行きたくないと泣き出す少女がいます。十分以上にありうるケースなのでしょう。

 この映画の原題は「旅行者(여행자)」ですが、日本題の「冬の小鳥」の方が(めずらしく)いいように思います。

 ジニ役のキム・セロンの、ほとんど笑い顔を見せない表情が印象的です。韓国の今年の大ヒット作「アジョシ」でウォンビンと共演しているのが彼女なんですね。ソチラの方も観てみたいです。

    
  【「冬の小鳥(原題「旅行者」)韓国版のポスター。】
コメント (3)
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富川1日観光(1) しくじってもそれなりに・・・・

2010-10-11 17:08:54 | 韓国旅行の記録
 9月16日は冨川市に行ってきました。
 目的は①韓国漫画映像振興院(ミュージアム漫画奎章閣) ②ファンタスティックスタジオ この2ヵ所は市街地西方に隣接しているので好都合。 ③教育博物館は逆に市街地の東端なので、どうしようかな、といったところ。

 ソウルの中心部から地下鉄の1号線で松内(송내.ソンネ)駅へ。
 地下鉄7号線の延長工事は2011年完成予定。すると上記①&②も、③も駅から歩いて行けるようになるはずです。

 事前に富川市のウェブサイト(→同日本語版)を見ると、非常に詳細な地図があったのでプリントアウトして持っていきました。

 また、ソンネ)駅からのバスについては、<ソウルナビ>中のファンタスティックスタジオの記事や、<ドラマロケ地を行く>中の記事等に記されています。

 これだけ事前準備をしておけば万全! ・・・と思うでしょうが、私ヌルボ、ぬかりましたねー。ツメが甘かった・・・。
 ソンネ駅前から5-2のバスに乗ったものの、まもなくパスが違う方向に進んでいることに気づきました。(恥&笑)
 同じ番号でも、逆方向のバスに乗ってしまったようで、やはり乗る時に一言「野人時代セットに行きますか?」と聞いておけばよかったですねー。下りて引き返そうかとも思いましたが、予定を変更して上記③教育博物館から行くことにしました。

 教育博物館は丘の中腹の総合運動場内(!)にあるのですが、バスはそちらには行かないので、丘の下の遠美洞(원미동.ウォンミドン)辺りで下車。この地名は、梁貴子(양귀자.ヤン・グィジャ)の小説「遠美洞の人々」の舞台です。三枝寿勝先生の「韓国文学を味わう」というサイトの中で、「時代(1980年代)を代表する2人の小説家として李文烈とともにあげられていた作家・作品なので(読んではいないが)記憶にありました。

 「遠美洞の人々」は翻訳されていませんが、ふつうの町のふつうの人々を描いた小説のようで、たしかに、とりたててどうということのないふつうの町でした。

      
【<「遠美洞の人々」の街>という表示がありますが、とくに関係の説明板とかは見つかりませんでした。】

   
   
【遠美洞総合市場。平日の午前中なのでまだ人は多くはありませんが、活気のあるようす。】

 遠美洞から意外に長い登り坂をたらたら歩いて教育博物館等々の博物館がある総合運動場にたどりついたのですが、教育博物館については別記事にします。

 ※梁貴子の作品で翻訳されているのは「ソウル・スケッチブック」だけのようです。帰ってから読んでみましたが、短編集というより、身近にいる人たちを共感を持って文字通り<スケッチ>したエッセイという感じで、あまり文学臭のない、「チョウンセンガク」風の読み物といった印象を受けました。

 → 富川1日観光(2) 教育博物館
 → 富川1日観光(3) ミュージアム漫画奎章閣(漫画博物館)
 → ソウル近郊・富川市内で延伸工事中の地下鉄7号線と、「野人時代スタジオ」のこと
コメント
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