ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [3月3日(金)~3月5日(日)]

2017-03-07 23:54:22 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 「みかんの丘」「とうもろこしの島」の2本立て(キネカ大森)は観に行ってホントによかった! グルジア(今はジョージアと表記)とかアルメニアという国名を最初に知ったのは、子供の頃読んだ「世界むかしばなし宝玉集」だったと思います。巌谷小波編だったかな? いや、私ヌルボ、大正の子供ではなく戦後生まれなんですけどね。(笑) 少し前ロシアとの紛争がニュースで報道されたチェチェンも含めて、アチラ方面の地理は疎く、もちろん歴史や政治にも知識がないので、アブハジア紛争というのも実は初めて知りました。しかし、当事者の人たちにとっては民族的自尊心や宗教等にかかわる命をかけた戦いなんですね。しかし、これらの作品はそれを超えた普遍性があるということで日本人であるヌルボの心にも響くものがありました。もしかしたら、遠い国々から見れば日・中・韓・北朝鮮のせめぎあいも同じように見える(orそれ以前に「見えない」)かもしれません。何かのために自ら命を棄てた英雄の物語も、賞味期限を過ぎれば虚しさが残るばかりです。

 4日の公開初日に川崎で観た「お嬢さん」は、サラ・ウォーターズの原作(「荊の城」)とここまで離れているかとビックリ。前半こそ物語の基本設定をふまえているものの、後半はまさに独自の世界を展開。色調や変体趣味(?)等々、まさにこの監督(パク・チャヌク)らしさが充満した作品。感動というのではないですが、十分楽しめた作品でした。
 「アシュラ」は、およそ★3つ程度という評価をいくつか見ていたのであまり期待度は高くはなかったですが、観てみると主人公の置かれた立場も精神状態もいくつもの流血シーンも、「修羅場」のてんこ盛りで、★3.5か4.0にはなりそう。相当に「過激」な分、リアリティが損なわれたというのが減点理由でしょうね。ラスト10分くらい前、私ヌルボは心中で「この映画をどう収拾するのだろう?」と思っていた矢先に、劇中でも「この状況をどう収拾するか?」というセリフが出てきたのはおかしかったです。映画の冒頭そして後の方でも数回、物語の舞台の安南(アンナム)市という架空の町の全景が映し出されますが、それがなかなか印象的。腐敗と嘘の町といった雰囲気が漂っています。この町の名が外国人労働者が多い安山市と、大規模な土地造成で人口が急増した新興のベッドタウン城南市の合成ということは韓国人にはふつうにわかるとおもいますが、両市の関係者は気分を害したかもしれませんね。

         ★★★ NAVERの人気順位(3月7日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(2) ミス・サイゴン:25周年記念公演 in ロンドン  9.45(203)
②(1) Le Tour:私の生涯最高の49日(韓国)  9.37(324)
③(-) 自白(韓国)  9.35(2,970)
④(3) ハクソー・リッジ  9.33(1,790)
⑤(5) わたしは、ダニエル・ブレイク  9.25(1,385)
⑥(4) ウィークエンド(韓国)  9.22(157)
⑦(6) 影たちの島(韓国)  9.23(99)
⑧(-) LOGAN/ローガン  9.18(6,479)
⑨(8) モアナと伝説の海  9.14(9,923)
⑩(9) LION/ライオン ~25年目のただいま~  9.14(562)

 今回の新登場は⑧「LOGAN/ローガン」だけですが、この作品については後述します。
 
     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) わたしは、ダニエル・ブレイク  8.40(15)
②(2) ラ・ラ・ランド  8.34(14)
③(5) ムーンライト  7.83(6)
④(3) マンチェスター・バイ・ザ・シー  7.75(8)
⑤(-) 自白(韓国)  7.67(10)
⑥(4) ジョン・ウィック チャプター2  7.67(3)
⑦(6) はじまりへの旅  7.50(9)
⑧(-) LOGAN/ローガン  7.43(7)
⑨(7) メッセージ  7.29(7)
⑩(8) わが孫、ベスト(韓国)  7.25(9)

 こちらのランキングも今回の新登場は⑧「LOGAN/ローガン」だけですが、説明等は後述します。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績3月3日(金)~3月5日(日) ★★★

         アメリカのSFアクション「LOGAN/ローガン」が1位に 日本公開は6月

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・・上映館数
1(52)・・LOGAN/ローガン・・・・・・・・・3/01・・・・・・・・・・・632,995 ・・・・・・・・・・1,079,913・・・・・・・・・9,405・・・・・・・・・954
2(35)・・解氷(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・3/01・・・・・・・・・・・433,185・・・・・・・・・・・・909,691・・・・・・・・・7,574・・・・・・・・・914
3(1)・・スプリット ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/22・・・・・・・・・・・179,125 ・・・・・・・・・・1,527,399・・・・・・・・12,405・・・・・・・・・539
4(2)・・再審(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/15・・・・・・・・・・・133,658 ・・・・・・・・・・2,266,965・・・・・・・・18,079・・・・・・・・・535
5(5)・・トロール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/16・・・・・・・・・・・・48,030 ・・・・・・・・・・・・642,719・・・・・・・・・4,756・・・・・・・・・395
6(新)・・雪道(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・3/01・・・・・・・・・・・・39,391 ・・・・・・・・・・・・・89,462・・・・・・・・・・・691 ・・・・・・・・449
7(15)・・ラ・ラ・ランド ・・・・・・・・・・・・・・・12/07・・・・・・・・・・・・29,841 ・・・・・・・・・・3,362,135・・・・・・・・28,124・・・・・・・・・165
8(3)・・捏造された都市(韓国) ・・・・・・・2/09・・・・・・・・・・・・29,823 ・・・・・・・・・・2,492,530・・・・・・・・19,980・・・・・・・・・264
9(12)・・ムーンライト・・・・・・・・・・・・・・・・2/22・・・・・・・・・・・・28,873 ・・・・・・・・・・・・105,285・・・・・・・・・・・855・・・・・・・・・180
10(31)・・沈黙-サイレンス- ・・・・・・・2/28・・・・・・・・・・・・23,849 ・・・・・・・・・・・・・50,962・・・・・・・・・・・399・・・・・・・・・342
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回1位の「LOGAN/ローガン」は日本ではちょうど3ヵ月遅れの公開。まあ「いつものこと」です。
 2~3週間前の記事でちょっとふれた<慰安婦映画>の「雪道」は6位に入りましたが、昨年の「鬼郷」には遠く及ばない数字。まあ以前に放映されたTVドラマをそのまま上映ということもあるのでしょう。
 今回の新登場は1・2・6・10位の4作品です。
 1位「LOGAN/ローガン」は、「X-MEN」シリーズに続く「ウルヴァリン」シリーズ第3作。ウルヴァリンはかつての名前ローガンを名乗り、メキシコの国境に近い隠れ家で病気のプロフェッサーXを世話しながら暮らしています。世間から身を隠して生きようとしたローガンでしたが、正体不明の集団に追われるミュータント最後の希望である少女ローラに出会い、彼女を守るためにすべてをかけて最後のミッションに挑みます・・・。韓国題は「로건」。日本公開は6月1日です。
 2位「解氷」は韓国のスリラー。舞台はかつて未解決連続殺人事件で騒がれていた京畿道の新都市。病院が倒産して妻とも離婚し、現在は先輩の病院に勤務している内科医のスンフン(チョ・ジヌン)は、認知症を患っている父を看ながら精肉食堂を経営しているソングン(キム・デミョン)が所有するワンルームに住んでいる。ある日、ソングンの父のチョン老人が睡眠内視鏡を受けている際、仮眠状態で殺人に対する告白のような言葉をもらすのをスンフンは聞き、父子に対して疑いを抱きます。その後再び連続殺人事件が起こり、スンフンは恐怖にとらわれますが、そんな中、彼に会いに来ていた前妻が行方不明になったと警察がやって来て告げます・・・。原題は「해빙」です。
 6位「雪道」は、同じ村生まれの2人の少女を通じて描いた慰安婦の物語。1944年日本植民地時代末、貧しいがしっかり者の少女チョンブン(キム・ヒャンギ)と金持ちの家の末娘で勉強もできるヨンエ(キム・セロン)の2人は、同じ村で生まれ全然違う運命を持って生まれました。その後ヨンエは日本に行くことになりますが、彼女を羨望していたチョンブンも同様に日本行きをせがみます。ある日、母が留守で弟と2人きりで家にいたチョンブンは、突然押し入ってきた日本兵に引き出され、わけも分からないまま列車に乗せられて連れて行かれます。自分と同じような子供たちがいっぱいの列車の中で恐怖に震えていたチョンブンは、日本に留学したと思っていたヨンエが列車に投げ混まれるように乗せられるのを目撃します。地獄のような戦争が繰り広げられる中、「必ず家に帰る」と決意するチョンブンをあざ笑うかのように、ヨンエは恐ろしい現実を終わらせるために危険な決心をします・・・。原題は「눈길」です。しかし、こういう人さらいのような「強制連行」を日本軍兵士がやっていたという事実の裏付けはあるの??
 10位「沈黙-サイレンス-」は日本では1月から公開されていますね。ヌルボは観ていませんが、<映画生活>の平均評点は79点。韓国のネチズン(観覧客)の平均も8.89という高ポイントです。韓国題は「사일런스」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・雪道(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/01 ・・・・・・・・・・・39,391・・・・・・・・・・・・89,462・・・・・・・・・・・・・691 ・・・・・・・・449
2(1)・・ムーンライト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/22 ・・・・・・・・・・・28,873・・・・・・・・・・・105,285・・・・・・・・・・・・・855 ・・・・・・・・180
3(6)・・沈黙-サイレンス-・・・・・・・・・・・・・2/28 ・・・・・・・・・・・23,849・・・・・・・・・・・・50,962・・・・・・・・・・・・・399 ・・・・・・・・342
4(3)・・マンチェスター・バイ・ザ・シー・・・・・2/16 ・・・・・・・・・・・・3,281・・・・・・・・・・・・48,123・・・・・・・・・・・・・387 ・・・・・・・・・43
5(2)・・マイ・ベット・オジー ・・・・・・・・・・・・・・2/16 ・・・・・・・・・・・・2,156・・・・・・・・・・・122,274・・・・・・・・・・・・・899 ・・・・・・・・・37

 1位「雪道」と、3位「沈黙-サイレンス-」が新登場ですが、いずれについても上述しました。
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韓国の大ロングセラー「こびとが打ち上げた小さなボール」の映画化作品のこと

2017-03-07 16:56:40 | 韓国映画(&その他の映画)
 韓国で約40年もの長い間ステディセラー(長期にわたるベストセラー)として読まれてきた趙世熙(チョ・セヒ)の小説『こびとが打ち上げた小さなボール』は昨年12月刊行されましたが、2月28日夜神保町のチェッコリでその翻訳者・斎藤真理子さんのお話がありました。私ヌルボ、これは聞きに行って良かったです! 多角的な視点からいろんなことを熱を籠めて話されましが、とてもおもしろくためになる内容で、大収穫でした。この映画化作品(1981年)のことも画像資料とともに説明されました。(いつもの)→<輝国山人の韓国映画>に詳述されています。下左は最初の公開時のポスター。右はその一場面です。

       

 →斎藤さんのtwitterにあるようにポスターが「やたらと扇情的な作りになっているのは、目くらましのためだった」と言われています。
 公開当時(1981年)は全斗煥による軍事独裁政権下で、70年代の朴正熙時代に続いて小説や音楽等とともに映画に対しても厳しい統制が続いた時代でした。とくにこの原作小説の場合、都市のタルトンネ(月の街)、サントンネ(山の街)と呼ばれた貧民街を舞台に、当時の住民無視の都市再開発の問題や、過酷な労働者の問題を直接的に描いた内容でした。映画化に際してそのような政治・社会問題をまともに描くと検閲に引っかかるので、「扇情的な作りだとまだパスしやすい」という読みがあったようです。(視覚的にファンの興味を引くという意図もあったかもしれませんが・・・。)
 この映画に出演したアン・ソンギ氏は「検閲と改変のすさまじさでは一番だった」と言っているそうです。
 そして原作ではソウルの都市労働者の物語だったのが映画では西海地方の塩田地帯の物語にすりかえさせられたとのことです。


 上はその映画の一場面。今この作品はYouTubeで観られます。(→コチラ。) 大きな難点は日本語字幕ナシということなんですけどね。(笑)
 なお、この上のボスターの女優は当時18歳だったクム・ボラ。(下左)
        

 弦の切れたギターをもっているのは原作通りです。そして上右は30年ちょっと後「大長今」に出演していたクム・ボラです。いやあその、何というか・・・。

 そういえば、最近観た「奴隷の島 消えた人々」も塩田で非人間的な扱いを受けている労働者の話でした。そのモチーフも2014年に大きく報道された新安塩田奴隷労働事件という実際の事件でした。(→ウィキペディア。) ただ、その事件自体を掘り下げるというのではなく、ミステリーの素材として描かれているに留まっているのは残念。その点は、相当改変されているとはいえ、「小さなボール」の方が勝っていると思います。

 それでも、一般的に言って映画作品とその原作小説を比較した場合10中8、9は原作の勝ち。「風と共に去りぬ」も「ベン・ハー」も、ごく最近では韓国映画「お嬢さん」も・・・。例外は「2001年宇宙の旅」と、「私が棄てた女」くらい?・・・、あとすぐには思いつきません。
 この「こびとが打ち上げた小さなボール」も、まずは小説を読んでほしいと思います。
コメント (2)
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