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朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ③韓国では、「北韓」の語が定着するまで何と言っていた?

2018-06-02 10:22:47 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 → 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ①「北朝鮮」と「韓国」以外にあるの?
 → 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ②ホントに厄介な「北」の呼び方

 韓国では北朝鮮のことを「북한(プッカン.北韓)」といいます。韓国語学習者の間では常識だとや思いますが、一般的にはどうでしょうか?
 Google翻訳の[日本語→韓国語]でも、「北朝鮮」と入力すると「북한」と変換され、逆に[韓国語→日本語]だと「북한」は「北朝鮮」に自動翻訳されます。(場合によっては誤解・誤読を生む。)
 しかし、だからといって韓国内で「朝鮮という言葉が禁じられているわけではありません。ただ、この言葉はふつう過去の朝鮮王朝を指します。また朝鮮日報、ウェスティン朝鮮ホテル、朝鮮大学校(光州にある)等の固有名詞にも用いられています。ただ、日本人が韓国人のことを「チョーセン人」と言うのは禁物。差別語ととられるし、実際差別意識が込められている場合が多いのではないでしょうか?

 さて、この北韓という言葉ですが、ふつうに使われるようになったのは、1972年の7∙4南北共同声明が契機でした。南北関係がたまたま少しよくなった時です。では、それ以前は何と呼んでいたかというと「북괴(プッケ.北傀)」でした。つまり北の傀儡(かいらい)国家という意味の侮蔑語です。「傀儡」は、本来は「操り人形」のことですが、「人の手先となって思いのままに使われる者」という2番目の意味の方がよく使われていますね。(「くぐつ」という読み方もあります。) 具体的には「ソ連の操り人形」という意味です。逆に北朝鮮の方も韓国を「アメリカ帝国主義の傀儡」と言ってました。

 共同声明が採択された次の日、文化公報部は「従来「北傀」と呼んでいたのを「北朝鮮」と呼称し、金日成に対する中傷・誹謗を見合わせること」を指示しました。これにより、すべてのメディアと政府の公式広報から「北傀」は消え、「北韓」に替わりました。
 ところがほどなく会話の時間が終わり、対決が再開されると、「北傀」が戻ってきました。

 1980年代の全斗煥、盧泰愚政権当時は、70年代にマスコミで使われ始めた「북한 공산집단(北韓共産集団)」という表現が広く使われたりもしました。
 あの尹東柱と少年時代同窓だった文益煥(ムン・イックァン)牧師(1918~94)は1989年3月訪北して金日成主席と会った人ですが、同年正月「たわごとではないたわごと」という詩で「私は彼らを傀儡とは呼ばない」と叫びましたが、87年6月の民主化宣言後も依然としてそう呼ぶ人は少なくなかったのですね。
 画期となったのは1991年9月、南北の国連同時加盟でした。その後間もない12月13日、南北朝鮮は公式合意書で正式国号(大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国)を使用することを取り決めました。(「南北間の和解と不可侵および交流協力に関する合意書」)
 以後、メディアや政府の公式広報物から「北傀」の語は消えましたが、まだ軍の文書には残っていました。この言葉を放棄すれば「将兵の士気が落ちる」という主張が強かったからです。その軍でも消えたのは、2000年6月の南北首脳会談以降のことでした。「傀儡」という言葉も同月末になくなり、国防部の記事からも2001年8月完全に消えました。
 (※ここまでの記事は→コチラを参考にしました。)

 ・・・以上のような経緯でようやく現在に至ったわけですが、今でもブログ記事等で「北傀」の語はしばしば見受けられます。あるいは、ニュース記事に対する読者のカキコミ。とくに代表的な保守紙・朝鮮日報の北朝鮮関係ニュースの読者評<100字評>欄を見るとごくふつうに目に入ってきます。(下画像)

 [訳] 北傀の手法は、これまで数十年、対南詐欺劇をまことしやかにやってのけても、平然としている。だからこれに一喜一憂してはならない。(以下略)

 このように、保守派の一部で「北傀」の使用者が残る一方で、近年、主に進歩陣営の側から「北韓」という呼称に対する異論も登場してきました。
 それについては次回で。

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