ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国の「今」の作家たち

2011-04-21 23:45:54 | 韓国の小説・詩・エッセイ
「毎日新聞」で、4月4日から木曜日連載の「新世紀 世界文学ナビ」というシリーズがスタートしました。「世界の“今”の文学を紹介していく」とのことで、まずは韓国編から。今日がその3回目になります。
 その韓国編は翻訳家のきむ ふなさんがナビゲーター。 1回目が金愛爛(キム・エラン)、2回目が金英夏(キム・ヨンハ)で、今日の3回目が金衍洙(キム・ヨンス)と続いています。
 韓国編がさらに続くかどうかわかりませんが、続いた場合には後でつけたしておきます。
[※4月28日の付記 さらに続いてますねー。申京淑ですよ。詳しくは1週間後の記事を参照されたし。]

 私ヌルボ、1980年生まれの女性作家・金愛爛は知りませんでした。金衍洙は、以前韓国のベストセラーを紹介した記事を書いた時に出てきた名前ですが、作品は未読。
 金英夏は、以前阿娘(アラン)はなぜという小説を図書館で借りて読んだことがあります。
 各書籍通販サイトでは「奇想天外な歴史ミステリー、貞操を疑われ、怨みを残して死んだ朝鮮王朝時代の地方官の娘阿娘。その地に赴任する長官はみな不審な死を遂げる―韓国で広く知られている阿娘伝説に大胆な再解釈を試みる奇想天外な小説」とありますが、現代と過去が交錯し、文学史的考察の中にインチキ(?)の古典も混じっていたり、「薔薇の名前」だのガリバルディだの、ポロックにパット・メセニー(ヌルボも好きなジャズ・ギタリスト)までなぜか入っていたりするメタ・ミステリー(?)で、感動したというよりも、韓国にもこんな意識面だけでなく、小説技法の面でもこれまでの伝統を越えた作品が生み出されるようになったか、とちょっと驚いた記憶があります。

    

 「毎日新聞」がこのような企画を立てて韓国の(&世界の)新しい文学の潮流を紹介するというのは大変けっこうなことだと思います。が、それ以前に、韓国で評価が確立し、今も活躍している作家をもっと紹介してくれなくっちゃ・・・。李文烈(イ・ムニョル)とか申京淑(シン・キョンスク)とか・・・。

 ・・・とここまで書いて、このブログ2009年8月22日の記事で紹介した、韓国の代表的ネット書店YES24が実施している「ネチズン推薦 韓国の代表作家・若手作家」を、昨年紹介していなかったことを思い出しました。
 遅ればせながら紹介します。
 まず、これまでの選定作家は以下の通り。

     [代表作家]          [代表的若手作家]
2004年 朴景利(パク・キョンニ)     金薫(キム・フン)
2005年 趙廷来(チョ・チョンネ)     孔枝泳(コン・ジヨン)
2006年 朴婉緒(パク・ワンソ )      申京淑(シン・キョンスク)
2007年 黄皙暎(ファン・ソギョン)     殷熙耕(ウン・ヒギョン)
2008年 趙世熙(チョ・セヒ)        鄭梨賢(チョン・イヒョン)
2009年 孔枝泳(コン・ジヨン)       朴賢煜(パク・ヒョヌク)

 そして2010年の結果です。
[代表作家]
1位=李外秀(イ・ウェス)13,041票・・・作品は未訳。すごく詳しい紹介は→コチラのブログ。
2位=申京淑(シン・キョンスク)12,129票・・・「離れ部屋」、読んでみて!
3位=高銀(コ・ウン)8,186票・・・高名な詩人。

[代表的若手作家]
1位=金英夏(キム・ヨンハ)7,217票・・・新作小説集「무슨 일이 일어났는지는 아무도(何が起こったかは誰も)」(2010)を刊行。前年3位だった。
2位=朴玟奎 (パク・ミンギュ)6,939票・・・2010年「朝の門」で李箱文学賞を受賞した。
3位=キム・ピョラ5,875票・・・前年2位だった。

[2010年韓国人必読書]
1位=申京淑「어디선가 나를 찾는 전화벨이 울리고(どこからか私をよぶ電話が鳴って)」11,408票・・・本ブログで紹介しました。(上述の「朝の門」といい、ヌルボの目のつけどころイイ線いってる、と自賛・・・というより、ほぼ本命が来てるだけか?) 2009年他を圧倒した「オンマをお願い」に続いて2年連続の1位。
2位=金薫(キム・フン)「공무도하(公無渡河)」11,151票・・・蓮池薫さん訳の「孤将」の作家。
3位=「석양을 등에 지고 그림자를 밟다(夕日を背にして影を踏む)」6,360票・・・朴婉緒(パク・ワンソ)、李東河(イ・トンハ)、尹厚明(ユン・フミョン)、金采原(キム・チェウォン)、梁貴子(ヤン・クィジャ)、崔秀哲(チェ・スチョル)、金仁淑(キム・インスク)、朴晟源(パク・ソンウォン)、趙京蘭(チョ・キョンラン)の各作家の自伝的短編集。

 なお、「代表作家」選定の前提としてYES24が候補として挙げた24人は以下の作家です。

*高銀(コ・ウン)、金承鈺(キムスンオク)、*金龍澤(キムヨンテク)、金仁淑(キム・インスク)、金周栄(キム・ジュヨン)、*金芝河(キム・ジハ)、金薫(キム・フン)、朴範信(パク・ボムシン)、朴常隆(パク・サンニュン)、成碩済(ソン・ソクチェ)、*申庚林(シン・キョンリム)、申京淑(シンキョンスク)、呉貞姫(オ・ジョンヒ)、尹大寧(ユン・デニョン)、尹厚明(ユン・フミョン)、尹興吉(ユンフンギル)、李文烈(イ・ムニョル)、*李晟馥(イ・ソンボク)、李承雨(イ・スンウ)、李外秀(イ・ウェス)、*鄭玄宗(チョン・ヒョンジョン)、崔仁勲(チェ・インフン)、*黄東奎(ファン・ドンギュ)、*黄芝雨(ファン・ジウ)

 一見して目につくのは、詩人が多く含まれていること。*印の8人が詩人です。
過去、文学史的に大きな足跡を残している作家よりも、現役で注目作を出している作家の方が多くの票を集めているようです。高銀は、ノーベル賞受賞の期待度が高いのかな?

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3 コメント

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予習なしで受ける授業! (のんき)
2013-07-02 04:21:56
あはは、まさにその通りですね^^!
私なんてもっと読めてなくて、今必死に「一夜漬け」しているところです。
でも、去年までは指を食わえて見ているしかなかった東京国際ブックフェア。参加できる距離に越してきた年にテーマ国が「韓国」だなんて、これはもう行かない手はない!と思って無謀にも参加します^^
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東京国際ブックフェア (ヌルボ)
2013-06-30 21:19:54
お久しぶりです!(1年ぶり以上?)

東京国際ブックフェア、まだまだ先となんとなく思っていたら、もうすぐなんですね。

東京ビックサイトで連日開かれる「韓国の文学は今」と題したイベント参加者の顔ぶれを見ると、ずいぶん大勢の作家の名が・・・。考えてみれば、崔勝鎬詩人以外は去年から今年にかけて作品を読んだ作家ばかりです。

李承雨・・・最近「真昼の視線」を読みました。(後で読書感想文コンテストの課題作だったということを知りました。)
具孝書・・・去年「長崎パパ」を読みました。なかなか新鮮な印象を受けました。
朴晟源・・・去年ブログにちょっと書きました。
金衍洙・・・「散歩する者の5つの楽しみ」をめずらしく原文で読んで、感想を書こうと思いつつ延び延びになっています。
金愛爛・・・短編で「走れ、父ちゃん」を読みました。李箱文学賞受賞作の「沈黙の未来」を先々週の韓国旅行で買ってきましたが、まだページも開いていません。
(呉貞姫「金色の鯉の夢」はずっと以前に翻訳で読みました。)
※このところ、文学関係の記事を書いてないことに気づきました。

日本側の先生方も、皆さん(私にとって)名前はおなじみでも、直接話を聞いたことがあるのは川村湊先生だけ。(10年以上前。)

・・・ということで、内容が濃い、というか濃すぎるため、逆に気が重い感じで(予習をしてない状態で授業に出る学生のような気分)、6日の韓国文化院も含めて行くかどうか決めかねています。
(送られてきたはずの招待券、どこに行ったかな~?)
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東京国際ブックフェアにはいらっしゃいますか? (のんき)
2013-06-29 20:42:19
ヌルボさん、
 ずいぶんご無沙汰してしまいました。
 実は3月末に千葉に引っ越して参りまして、前後なかなか落ち着かず、コメントも書けずに過ごして参りました。ヌルボさんのお元気そうなご様子は、常々ブログを拝見しておりましたが^^
 来週水曜日から始まる、東京国際ブックフェアの今年のテーマ国は「韓国」とのことですが、お出かけになりますか?
 私は、これまで参加できなかった、これら関東方面でのイベントに、積極的に参加したいと思い、金曜日は会社に休暇届を出しました。
 6日(土)には、韓国文化院で

「韓国文学は今」韓国文学の夕べ ~文学朗読会~
 
が開かれ、作家 呉貞姫(オ・ジョンヒ)、李承雨(イ・スンウ) 詩人 崔勝鎬(チェ・スンホ)氏がいらっしゃるとのこと。現代の韓国文学について語られるというので、ぜひこちらにも参加したいと思っています。
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