昨年(2016年)は夏目漱石の没後100年ということで朝日新聞では「夏目漱石「吾輩は猫である」を連載したり、12月21日には漱石自身が・・・じゃなくて漱石アンドロイドが100年ぶりに出社したりしました。(→コチラ参照。)。
夏目漱石(ハングル表記は나쓰메 소세키)の作品は韓国でも当然翻訳され読まれていて、やはり昨年には玄岩社(ヒョンアムサ)が<没後100周年記念>と銘打って韓国最初の長編小説全集(全14巻)を翻訳出版しました。(上画像)
→ウィキペディアによると夏目漱石の中・長編小説は計15編あります。
玄岩社の全集の内訳を見ると、その15編中の「二百十日」以外のすべてが収められています。
本ブログはこのところ長すぎる記事が続いているという反省もあり、今回は単純にこの玄岩社の全集にある漱石の小説作品の「韓国語書名から原題を当てる!」というクイズをやります。
最初はノーヒントです。 ※1~14の小説は発行年は関係ナシ。アットランダムに並べたものです。
1. 그 후
2. 마음
3. 우미인초
4. 풀베개
5. 나는 고양이로소이다
6. 산시로
7. 명암
8. 도련님
9. 문
10. 갱부
11. 한눈팔기
12. 행인
13. 태풍
14. 춘분 지나고까지
韓国語初級レベル、そして漱石文学にあまり詳しくない人でもたぶんすぐわかるのは2・6・9の3つでしょうか? 5も고양이でわかりますね。
では、次にヒント。14編の日本語書名をこれも順不同で並べます。
薄い黄色の字なので、はっきりと見たい方は範囲指定をしてください。
三四郎・坑夫・吾輩は猫である・野分・こゝろ・明暗・坊っちゃん・行人・草枕・それから・門・道草・虞美人草・彼岸過迄
すると残る難物が8・11・13・14の4つ。
まあ、残った書名を照らし合わせると韓国語中級レベルの皆さんも正解に行き着くと思います。
11のヒント(??)は右画像。日本語で「世の中に片付くなんてものは殆ほとんどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。」と書かれています。(・・・って、全然ヒントになってないですね。)
この4つや、4などは翻訳者も思案投げ首したことでしょう。
正解は次の通りです。
1. それから 2. こゝろ 3. 虞美人草 4. 草枕 5. 吾輩は猫である
6. 三四郎 7. 明暗 8. 坊っちゃん 9. 門 10. 坑夫
11. 道草 12. 行人 13. 野分 14. 彼岸過迄
《付け足し》
・「~로소이다」という語法はNAVER辞典等によると「~ㅂ니다」の옛말(昔の言葉)」。これについては→コチラの過去記事で書きました。
・それにしても、「野分」は「台風」と訳すしかないのか・・・。語感まで伝えるというのはその外国語の語彙の問題があるのでしかたないんだろうなー。「彼岸過迄」は「春分過ぎまで」となるのもやむをえないところ、かな? 「坊っちゃん」なんかはむしろ意味が明確になっているかも・・・。「道草」についてはヌルボお手上げ。しかしこの韓国語は<道草>じゃなくて<よそ見>でしょ? そもそも韓国語には<道草>に相当する適当な名詞がなさそうだから意味的に近い言葉にしたのか? いや、「気持ちが脇道に逸れる」という意味があるので内容に即してそう訳したのかな? ヌルボは読んでないのでわかりません。
・上記14編中、私ヌルボが読んだ作品を数えてみると9編。まあ標準以上ってとこ?
一番心を打たれたのは最後の未完作品「明暗」です。(水村美苗の「續明暗」も続けて読むといいです。)
「草枕」は例の「山路を登りながら、こう考えた。知に働けば角が立つ。・・・」という冒頭部分がよく知られていますが、ヌルボとしては最後の場面の「余」が那美さんに言った言葉を読んで唸ったというかなんというか、とにかくすごく印象に残ってます。(・・・ボキャ貧だなー。)
小説以外で覚えているのは、1911年の講演「現代日本の開化」中の一節。
「現代日本の開化は皮相上滑りの開化であると云う事に帰着するのである。・・・しかしそれが悪いからお止しなさいと云うのではない。事実やむをえない、涙を呑んで上滑りに滑って行かなければならないと云うのです。」
ああ、ここまで時代状況を見通してしまうのもインテリの悲劇だなー。これでは胃を患うのも当然というものか・・・。
講演の記録では「私の個人主義」にも注目。「国家的道徳というものは個人的道徳に比べると、ずっと段の低いもののように見える」といった時代を超えるようなことを述べています。今に通ずる内容で、とくに政治家の皆さんに読んでほしいものです。
あ、タラタラ書き足していたら、また長ったらしくなってきたゾ・・・ということでオシマイにします。
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