→ 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ①「北朝鮮」と「韓国」以外にあるの?
以前は、各テレビ局がニュース等で「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」と長ったらしい言い方をしていましたが、長い間よく続けていたものです。新聞の場合は「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という表記でした。→ウィキペディアによると、このような呼称は1972年札幌オリンピックの頃から今世紀の初め頃始まり、小泉首相訪朝後、北朝鮮の拉致問題や、核施設凍結解除・IAEA査察官の追放(翌年脱退)等の問題が沸騰していた2002~3年頃まで続いたとのことです。ということは、約30年間。
右の画像は、表記の変更についての2002年12月28日の朝日新聞の社告です。
なお、この直後の、灘本昌久京都産業大学助教授(当時)による関連記事(→コチラ)は、この呼称問題について詳しく記しつつ、自身の見解を提示しています。
これらの記事から、各紙が北朝鮮の呼称を簡略化した時期を順に並べると・・・。
・産経新聞・・・1996年から「北朝鮮」のみ。
・読売新聞・・・1999年から「北朝鮮」のみ。
・毎日新聞・・・2002年11月から、正式国名は全ページで1ヵ所。
・朝日新聞・・・2002年12月から、一部の記事をのぞいて「北朝鮮」に。
・日本経済新聞・・・2003年1月から、原則として「北朝鮮」に一本化。
・東京新聞・・・2003年1月から、正式国名は全ページで1ヵ所。
※フジテレビ・・・以前から「北朝鮮」のみ。
・・・と、ほぼ各紙の政治的立ち位置(北朝鮮に対する批判の強度の差)がこんなところにも表れていますね。
では、朝鮮総聯の機関紙「朝鮮新報」と、民団の機関紙「民団新聞」の日本語版ではどうなっているかというと、それぞれ北朝鮮と韓国での呼び方の通り。
つまり、「朝鮮新報」(→公式サイト)では、北朝鮮は「朝鮮」、韓国は「南朝鮮」。「祖国」という言葉も多く見受けられます。
ただ、4月27日の南北首脳会談は「北南首脳会談」ですが、「朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長と大韓民国の文在寅大統領は・・・」ときっちり書いています。(ほー、大韓民国と書いたか!)
「民団新聞」(→公式サイト)は、韓国がそのまま「韓国」で、北朝鮮は「北韓」と、本国と同じ表記。
また、統一志向の在日韓国人による新聞「統一日報」の→公式サイトをのぞいてみると、南北首脳会談についても「「板門店宣言」は自由民主国家の自殺」といったオオッと驚くような見出しの記事(→コチラ)が目を引きます。北朝鮮に批判的な論調を特色にしている新聞(統一教会とは無関係)で、「民団新聞」と同じく「韓国」と「北韓」の語を用いています。
ところで、上記の灘本昌久さんは記事の中で「記事の簡略化という点では、なぜ「朝鮮」では ないのかという疑問には答えられない。」として「北朝鮮」よりも「朝鮮」がよいとしているようですが、「朝鮮」だと南北全部を指すようにもとられそうだし、韓国での一般的な理解のように、過去の朝鮮王朝を指すと受け取られることも考えられます。「朝鮮の社会体制は、生まれながらの身分による差別が人生をほとんど決定づける」と書いたら、どちらのことなのかよくわかりません。またNHKの語学講座も「朝鮮語講座」とすべきだったとの主張ですが、先の平昌冬季五輪の南北合同チーム内でもなかなか言葉が通じにくかったと伝えられたように、南北間の言葉にはかなりの隔たりが生じています。そんな中、NHKでは当然日本人に身近な韓国語で講座をやっているわけで、それに「朝鮮語講座」というタイトルをつけるのは不自然だし、また多くの誤解を招き混乱の元になりそうです。ということで、この件についてヌルボはとりあえずは現状の「ハングル講座」でOK。(ただし<ハングル>は文字のことなのに、「ハングルで話す」という間違いに気づかない人を多数生んでいますが・・・。)もちろん半島の情勢が今後大きく変われば国や人や地理関係の呼称も変わる可能性はありますけどね。
北朝鮮に対する呼称がもう1つあるのを思い出しました。今も使われています。(一部の人たちですが。) と、これだけでわかる人がどれくらいいるでしょうか?
ヒント。私ヌルボが1991年団体で北朝鮮に行った時、現地で北朝鮮の人たちに対して国名をどう言えばいいか?という点について、案内員氏(だったかな?)が教えてくれました。
「○○○と言って下さい。」
漢字3文字です。正解はやコチラ → 共和国
これは固有名詞じゃなく普通名詞でしょ! ・・・と誰しも思うでしょうが、今も依然として使われているのですね。(「え、うそっ。みんな「王朝」って言ってるのに・・・。」という人もいるかも。)
下の画像は「世界」の2018年1月号の、まさのあつこ「「北朝鮮」と呼ばれる国交のない国・訪問記」より。
まさのあつこさん、必ずしも北朝鮮ベッタリということでもありませんが、現地で「共和国」と言っても、日本に戻ってもずっと「共和国」を用い続けるというのはどうなんでしょうか? コンゴ共和国とか南アフリカ共和国と誤解する人がいるかもしれないし・・・。
あ、そういえば立憲民主党の初鹿明博議員は→ウィキペディアによれば次のように述べているそうです。
「日本が朝鮮民主主義人民共和国から尊重してもらいたいなら、同じように相手の国を尊重しなくてはならないとして『北朝鮮』という呼称を使わない。『朝鮮』もしくは『共和国』と呼ぶように心がけている。これは、朝鮮の国民も自国に誇りを持っており、その誇りを傷つける行為を不用意にするべきではないと考えるからだ。」
私ヌルボ、これは傾聴に値する主張だと思います。が、上述のように「朝鮮」でも「共和国」でも誤解がありそうだし、「北朝鮮」といっても相手を侮蔑することにならないのはかつての東ドイツ・西ドイツと同じと考えるからです。それだけではなく、今の北朝鮮という国に対する認識の相違もありそうです。初鹿議員は、自国民の基本的人権などに一顧だにしない北朝鮮の独裁政権との相互の「尊重」を国際政治上の<方便>として考えているのならまだわかりますが・・・。
ホントはこの記事の一番の目的は、「韓国内での北朝鮮に対する呼び方でその人の政治的な立ち位置がわかる」ということだったのです。で、今回までの記事は(例によって)タラタラと長~い前書きのようなものです。
というわけで、続きは<韓国・北朝鮮は、それぞれ相手国と自国のことをどう呼ぶか?>について書きます。
→ 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ③韓国では、「北韓」の語が定着するまで何と言っていた?
以前は、各テレビ局がニュース等で「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」と長ったらしい言い方をしていましたが、長い間よく続けていたものです。新聞の場合は「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という表記でした。→ウィキペディアによると、このような呼称は1972年札幌オリンピックの頃から今世紀の初め頃始まり、小泉首相訪朝後、北朝鮮の拉致問題や、核施設凍結解除・IAEA査察官の追放(翌年脱退)等の問題が沸騰していた2002~3年頃まで続いたとのことです。ということは、約30年間。
右の画像は、表記の変更についての2002年12月28日の朝日新聞の社告です。
なお、この直後の、灘本昌久京都産業大学助教授(当時)による関連記事(→コチラ)は、この呼称問題について詳しく記しつつ、自身の見解を提示しています。
これらの記事から、各紙が北朝鮮の呼称を簡略化した時期を順に並べると・・・。
・産経新聞・・・1996年から「北朝鮮」のみ。
・読売新聞・・・1999年から「北朝鮮」のみ。
・毎日新聞・・・2002年11月から、正式国名は全ページで1ヵ所。
・朝日新聞・・・2002年12月から、一部の記事をのぞいて「北朝鮮」に。
・日本経済新聞・・・2003年1月から、原則として「北朝鮮」に一本化。
・東京新聞・・・2003年1月から、正式国名は全ページで1ヵ所。
※フジテレビ・・・以前から「北朝鮮」のみ。
・・・と、ほぼ各紙の政治的立ち位置(北朝鮮に対する批判の強度の差)がこんなところにも表れていますね。
では、朝鮮総聯の機関紙「朝鮮新報」と、民団の機関紙「民団新聞」の日本語版ではどうなっているかというと、それぞれ北朝鮮と韓国での呼び方の通り。
つまり、「朝鮮新報」(→公式サイト)では、北朝鮮は「朝鮮」、韓国は「南朝鮮」。「祖国」という言葉も多く見受けられます。
ただ、4月27日の南北首脳会談は「北南首脳会談」ですが、「朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長と大韓民国の文在寅大統領は・・・」ときっちり書いています。(ほー、大韓民国と書いたか!)
「民団新聞」(→公式サイト)は、韓国がそのまま「韓国」で、北朝鮮は「北韓」と、本国と同じ表記。
また、統一志向の在日韓国人による新聞「統一日報」の→公式サイトをのぞいてみると、南北首脳会談についても「「板門店宣言」は自由民主国家の自殺」といったオオッと驚くような見出しの記事(→コチラ)が目を引きます。北朝鮮に批判的な論調を特色にしている新聞(統一教会とは無関係)で、「民団新聞」と同じく「韓国」と「北韓」の語を用いています。
ところで、上記の灘本昌久さんは記事の中で「記事の簡略化という点では、なぜ「朝鮮」では ないのかという疑問には答えられない。」として「北朝鮮」よりも「朝鮮」がよいとしているようですが、「朝鮮」だと南北全部を指すようにもとられそうだし、韓国での一般的な理解のように、過去の朝鮮王朝を指すと受け取られることも考えられます。「朝鮮の社会体制は、生まれながらの身分による差別が人生をほとんど決定づける」と書いたら、どちらのことなのかよくわかりません。またNHKの語学講座も「朝鮮語講座」とすべきだったとの主張ですが、先の平昌冬季五輪の南北合同チーム内でもなかなか言葉が通じにくかったと伝えられたように、南北間の言葉にはかなりの隔たりが生じています。そんな中、NHKでは当然日本人に身近な韓国語で講座をやっているわけで、それに「朝鮮語講座」というタイトルをつけるのは不自然だし、また多くの誤解を招き混乱の元になりそうです。ということで、この件についてヌルボはとりあえずは現状の「ハングル講座」でOK。(ただし<ハングル>は文字のことなのに、「ハングルで話す」という間違いに気づかない人を多数生んでいますが・・・。)もちろん半島の情勢が今後大きく変われば国や人や地理関係の呼称も変わる可能性はありますけどね。
北朝鮮に対する呼称がもう1つあるのを思い出しました。今も使われています。(一部の人たちですが。) と、これだけでわかる人がどれくらいいるでしょうか?
ヒント。私ヌルボが1991年団体で北朝鮮に行った時、現地で北朝鮮の人たちに対して国名をどう言えばいいか?という点について、案内員氏(だったかな?)が教えてくれました。
「○○○と言って下さい。」
漢字3文字です。正解はやコチラ → 共和国
これは固有名詞じゃなく普通名詞でしょ! ・・・と誰しも思うでしょうが、今も依然として使われているのですね。(「え、うそっ。みんな「王朝」って言ってるのに・・・。」という人もいるかも。)
下の画像は「世界」の2018年1月号の、まさのあつこ「「北朝鮮」と呼ばれる国交のない国・訪問記」より。
まさのあつこさん、必ずしも北朝鮮ベッタリということでもありませんが、現地で「共和国」と言っても、日本に戻ってもずっと「共和国」を用い続けるというのはどうなんでしょうか? コンゴ共和国とか南アフリカ共和国と誤解する人がいるかもしれないし・・・。
あ、そういえば立憲民主党の初鹿明博議員は→ウィキペディアによれば次のように述べているそうです。
「日本が朝鮮民主主義人民共和国から尊重してもらいたいなら、同じように相手の国を尊重しなくてはならないとして『北朝鮮』という呼称を使わない。『朝鮮』もしくは『共和国』と呼ぶように心がけている。これは、朝鮮の国民も自国に誇りを持っており、その誇りを傷つける行為を不用意にするべきではないと考えるからだ。」
私ヌルボ、これは傾聴に値する主張だと思います。が、上述のように「朝鮮」でも「共和国」でも誤解がありそうだし、「北朝鮮」といっても相手を侮蔑することにならないのはかつての東ドイツ・西ドイツと同じと考えるからです。それだけではなく、今の北朝鮮という国に対する認識の相違もありそうです。初鹿議員は、自国民の基本的人権などに一顧だにしない北朝鮮の独裁政権との相互の「尊重」を国際政治上の<方便>として考えているのならまだわかりますが・・・。
ホントはこの記事の一番の目的は、「韓国内での北朝鮮に対する呼び方でその人の政治的な立ち位置がわかる」ということだったのです。で、今回までの記事は(例によって)タラタラと長~い前書きのようなものです。
というわけで、続きは<韓国・北朝鮮は、それぞれ相手国と自国のことをどう呼ぶか?>について書きます。
→ 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の呼称 ③韓国では、「北韓」の語が定着するまで何と言っていた?
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