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北朝鮮生化学武器研究員が欧州に亡命 「政治犯を実験台にサリンガス等の生体実験をしている」との証言も

2015-07-05 19:24:58 | 北朝鮮のもろもろ
 7月3日の<DailyNK>(韓国語版)に「北、政治犯・キリスト教信者を生物化学兵器の実験対象に利用」という見出しの記事がありました。(→コチラ。)
 副見出しは「MBC、生物化学兵器研究員出身の脱北者がフィンランドに亡命と報道」です。
 以下、記事全文を訳出してみました。

 生物化学兵器開発に関与したことがある北朝鮮の研究員が生体実験関連資料を持ってヨーロッパに亡命したとMBCが2日報道した。
 報道によれば、韓国内のある北朝鮮人権団体は慈江道の江界(カンゲ)微生物研究所所属研究員李某氏(47)が6月6日フィンランドに亡命したと明らかにした。
 昨年中国の医療機関に派遣されていた李氏はベルギーの人権団体の助けで亡命したとMBCは付けくわえた。
 李氏は亡命直前、1年に200人あまりの北朝鮮住民が江界研究所のサリンガスと炭疽菌の性能強化実験の対象となっていると人権団体側に暴露したと伝えられた。
 李氏は団体側に「実験対象となった住民たちを研究所地下2階にあるガラス部屋に閉じ込めてサリンガス実験をして、国家安全保衛部が政治犯やキリスト教信者たちを実験対象として供給した」と語った。
 また彼は「長期間の生体実験を通して炭疽菌100㎏で100万人を殺傷することができる」とも語ったとのこと。炭疽菌は6月16日国防部(日本の防衛相に相当)が国会で開かれた国防委員会全体会議で報告した「懸案報告書」で北朝鮮が有事の際に培養して武器化する可能性が高い菌体であると明らかにした伝染性の高い5種中の1つである。
 一方、北朝鮮は炭疽菌を含むペスト、コレラ、細菌性赤痢、腸チフスなど13種の生物化学兵器を保有中であると報じられている。


 実は、ほとんど同じ内容の記事がやはり7月3日付<中央日報(日本語版)>にあります(→コチラ)が、記事の最後の部分が少し詳しく記されているので上掲の記事を紹介したというわけです。一方、「中央日報」の記事の方には「L(李氏)は今月の欧州議会で生化学武器の生体実験資料を提示するなど非公開で証言を行うだろうとMBCは説明した」という文が末尾に付されています。

 私ヌルボが問題提起したいのは、まず非道な人体実験に目を向けるべきだということ。
 炭疽菌といえば、この5月米軍が烏山空軍基地等韓国の10ヵ所に誤って生きたまま送っていたことが明らかになり、また韓国政府に知らせないまま炭疽菌を使った実験を行っていたことも判明して韓国内で問題になっています。(→関連記事。)
 また、<ハンギョレ>は「在韓米軍は世界規模の生物化学兵器戦実験場だったのか」と題した記事で在韓米軍の生物化学兵器実験とその関係施設について詳細に記しています。(→コチラ。)
 たしかに、生物化学兵器(韓国語では생화학무기(生化学武器))は重大な問題です。ところが、その開発のために人間を実験台として使うとは、それだけで非常にゆゆしき問題というか、メディアとしてはもっと大々的に扱ってしかるべきことではないでしょうか!?

 ところが、同じ韓国メディアでも同じネタを取り上げた<聯合ニュース>(韓国語版)の7月2日付の記事「北朝鮮の生物化学兵器研究員、生体実験の資料を持って亡命」という記事(→コチラ)を見ると、次のように記されているだけです。

 北朝鮮の生物化学兵器研究所研究員が膨大な量の生体実験関連資料を持ってヨーロッパに亡命したことが明らかになった。
 北朝鮮慈江道の江界微生物研究所所属研究員李某氏(47)が6月6日フィリピンを経てフィンランドに亡命したとある北朝鮮人権団体が2日明らかにした。
 この団体代表は聯合ニュースとの電話通話で「李氏が表面上掲げた亡命理由は、研究に懐疑をを感じたため」と語った。


 これが記事の全文です。先の記事にあったような政治犯やキリスト教信者が実験対象云々の記述はありません。また、この記事の上に何やらおぞましい資料写真が載せられていますが、説明によると日本731部隊の生体実験模型(!)とのことです。
 ※このニュースは<聯合ニュースTV>でも放映されました。<YouTube>でも見ることができます。(→コチラ。) アナウンサーの放送原稿の内容は、上記の記事と同じです。

 ところで私ヌルボ、このニュースに接して考えたのは「ニュースの重要性」といったことです。
 厖大な数のニュースの中から何をピックアップし、どれをとくに大きく取り扱うかは各メディアの価値判断の問題で、正解があるわけではありません。
 ところが、今この人体実験の問題や、これまでも伝えられているような北朝鮮の政治犯収容所のような北朝鮮の人権問題については、韓国も日本のメディアも非常にわずかしか取り上げていないのはフツーの価値観から考えてどうもヘンだと思います。
 たとえば例の「慰安婦問題」について考えてみると、基本的には「過去」の事実(?)をめぐる問題で、現在の元慰安婦ハルモニたちは生存権はもちろん基本的人権が脅かされているわけではありません
 ところが上述の北朝鮮の(未確認情報とはいえ)「人体実験」や「政治犯収容所」の問題は「現在」生きている人たちの「人権」、というより「生存権」、というよりまさに「命」に関わること・・・。
 ですから、フツーに考えると「慰安婦問題」よりもはるかに重大なニュースではないか?というのが私ヌルボの主張です。ところが「慰安婦問題」に対する関心の10分の1さえもコチラの方に向けられないのはなぜなのでしょうか?
 「慰安婦問題」で熱くなっている日韓の人たちはどう考えるのか? とくに韓国の進歩的な人権活動家の人たちに訊いてみたいです。
 およそ前近代的な連座制や公開処刑のようなネタでも、それが北朝鮮でのこととなると「あり得る話だ」、と「自然に」受けとめられてしまうのでしょうか? たとえば中国・アメリカ・日本(!)といった国が「人体実験をやっている」となると大ニュースになるでしょうが、北朝鮮だと小さな記事にとどまるのでしょうか? 私ヌルボはどこの国かを問わず新聞のトップ記事として報道すべきだと思うのですが・・・。

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