☆春までになんとかしたいね
「あら、シェラちゃん、ずいぶんシャキッとしたじゃない」
昨日、夕方の散歩のときに家人が近所のわんこ仲間から言われたという。実は、ぼくも昨朝の散歩で同じ感想を抱いたばかりだった。
初冬の冷え込みのせいかもしれないし、土曜日から飲ませているステロイド効果かもしれない。なんであれ、悪性の腫瘍を押さえ込んでくれる効果があってくれればいいのだが、むろん、まだわからない。
このところの盛んな食欲も、ステロイドのせいなのか、それとも老化ゆえなのかわからない。食べることで元気でいてくれるなら太らせない程度で聞き届けてやりたい。
これから寒さに向かう季節だというのは、大いなる期待材料である。シェラは寒ければ寒いほど元気になるわんこである。死んだむぎの寒そうにしている顔は知っているが、シェラは寒さをエネルギーに変えているかと思えるくらいめっぽう強い。
その代わり、暑さには情けないほど弱い。どちらかというとむぎのほう暑さには強かった。その油断ゆえにむぎを殺してしまったのかもしれない。
シェラの腫瘍をなんとかしようとしているいま、もし、暑さに向かう季節だったら、ぼくたちはきっと絶望的になっていただろう。だが、冬に向かうというだけで、シェラの命が、少なくとも来年の春過ぎまでは保証されているかのように思ってしまう。
☆早くもっと寒くなれ!
これは今年にかぎったことではなく、去年も、一昨年も、似たような安心感を抱いた記憶がある。老年期を迎えたシェラが、冬の間は決して死なない、必ずや生き抜いて春を迎えてくれると強烈に思い込んできた。それほどに、シェラは冬の申し子だった。
でも、ほんとうのところ、「今年はどうだろうか?」と思う。冷静に振り返ってみると、いつもの年と違うからだ。
晩春から初夏へ移り行くある日、それまで毎朝決まって歩を刻んでいた散歩のコースをシェラが嫌った。断固拒否したのである。この日を境にして散歩の距離は半分以下に縮まった。たしかにシェラの姿は老犬そのものであり、衰え方は痛々しいほどだった。
高齢のみならず、首の腫瘍や右足の脂肪の塊のせいもあったろうが、もうひとつは迫りくる夏の暑さという陽気のせいだとぼくは確信してきた。機を一にしてむぎにも、いまして思えば病魔が巣食った。驚くほど同時だった。そして、暑さがむぎの身体に追い討ちをかけた。
だから願う。早く寒くなれと……。
まもなく、本番の冬がやってくる。この冬はとりわけ寒いそうだ。ぼくも年のせいで暑さ寒さにめっきり弱くなったけど、シェラのためにはうれしいニュースである。いま、自分の身体には応える寒さだが、いまはシェラのために寒さを待ちわびつつ、深夜の散歩だって楽しんで日々を送っている。