愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

ルイのキャンプデビューで迎えた想定外の夜

2012-05-03 13:21:30 | ルイとの日々

☆最悪だった4月の日々
 4月早々にひいてしまった風邪が、一進一退のままいまだに本復していない。咳が抜けないのである。このひと月、三度、診察を受けてそのつど薬を変えてもらった。
 三度目は会社を休んで家の近くの病院のお世話になった。それが23日の月曜日。念のためにと血液検査とレントゲン検査を受けたが異常なく、調剤してもらった1週間分の薬も飲みきったがいまだに咳が残ったまま声も枯れた。

 そんな状態で、4月はずっと気力が萎えてしまい、このブログを更新するほんの少しのパワーさえ湧いてこなかった。ルイは確実に成長している。少しずつだがコミュニケーションが増している。変わらないのはそのやんちゃぶり。なんとかぼくの気を引き、遊びに誘いこもうという魂胆だ。
 ルイのおかげで、にぎやかで幸せな毎日である。ちょっとでもルイがおとなしくしていると、もしかして、ぼくの風邪をうつしてしまったではないかと不安にかられる。 
 
 そして迎えた大型連休である。体調がいまひとつだけにギリギリまで逡巡したものの、例年どおりキャンプへ出かけた。たしか昨年の9月以来だから7か月ぶりのキャンプである。
 今回は、2日前に納車されたばかりの新車で出かけるというのでせがれが同行した。彼はキャンプよりもクルマに興味津々でしかないのだが、設営や撤収、それと道路渋滞のときなどに重宝する。


☆キャンプ犬ルイのデビュー
 7か月ぶりのキャンプは、ルイのキャンプデビューであると同時に、ルイのはじめてのロングドライブでもある。ぼくの体調もイマイチなのでワイルドなフィールドは避けて、ひととおり整備されたキャンプ場に向かった。だが、後述するようにこれがとんでもない誤算(?)でもあった。

 キャンプ場は松本市街を一望する山の上にある「美鈴湖もりの国オートキャンプ場」。シェラやむぎとも何度となくお世話になっている設備の整ったきれいなキャンプ場である。ここは何よりもスタッフの方々が素晴らしく、いつも気持ちよく過ごすことができる。
 数年前から、ゴールデンウィークは、早めに予約を取っていないと満杯になってしまうほどだったのと、シェラの高齢化でロングドライブは避けたいという家人の意向を汲んですっかりごぶさたしてきた。
 
 今年はちょうどキャンセルが出たのか幸運にも直前で予約が取れて入りこむことがことができた。最後にお世話になった2008年のゴールデンウイークは、場内のサクラの満開と重なって、それはすばらしいロケーションのなかでのキャンプだったが、今年はサクラの開花が遅れていた。松本城など、松本の市街地がちょうど満開で、山の上のサクラの蕾はかたく、開花ははまだ少し先だった。


☆夜、イビキにおびえたルイ
 往路の高速道路の渋滞も新しいナビのおかげで巧みに避け、途中でゆっくりめのランチタイムを含んでもおよそ5時間のドライブだった。ルイはリアシートで家人に張りついたまま、車酔いもなく、おとなしく長丁場をつきあってくれた。
 チェックインタイムの午後1時過ぎのキャンプ場で待っていたのは夏の陽気だった。ルイを木陰に避難させ、炎暑の中、急いでひととおりの設営を終えるとぼくたちは大好きな松本の街へ避難した。

 だが、問題は、この初日の夜のほうだった。
 キャンプ場のそこかしこから聞こえてくるイビキにルイが反応して唸りはじめた。区画サイトなので隣のサイトからのイビキが耳元で聞こえる。なるほど、イビキもりっぱな異音である。人間が眠りに発する異音だとわからなければ、得体の知れない獣の唸り声と錯覚しても不思議はない。ルイの反応はまさしく正しい。

 このキャンプ場は区画サイトなので、数メートル先には隣のテントがあり、そこで寝ている人がイビキをかくとすぐ耳元で聞こえる。“誤算”というのはこのことである。区画のないサイトならほかのテントから離れて設営ができるからだ。
 フリーサイトの場合、ぼくたちはいつもポツンと離れた場所を選んで設営する。わが家のわんこを怖がらせないためというより、ほかのキャンパーの迷惑(中にはわんこ嫌いの人もいるだろうから)にならないようにとの配慮からである。

 とはいえ、かつて、シェラはキャンプの夜、おびえて夜鳴きがとまらず、ぼくとクルマへ避難してひと晩をふたりで過ごしたことが何度かある。あれはよそのキャンパーのイビキだったのかもしれないし、ぼくには聞こえない異音がシェラの耳には聞こえていた可能性もある。
 むぎのほうは何か怖いときは、シェラかぼくたちのどちらかに張り付いていれば安心していたので手のかからない子というイメージが濃厚である。


☆シェラやむぎも大好きだったフィールド
 テントの薄い布を通して聞こえてくるイビキだけに、ルイの唸り声もまた外へ洩れているはずである。ぼくはルイを連れてテントの外へ出た。イビキがどこから聞こえてくるのかを教え、怖くはないのだと伝えるためである。
 なるほど、ルイがおびえるのは無理もない。寝静まった深夜のキャンプ場とはいえ、そこかしこのテントからそれはにぎやかにイビキが聞こえてくる。
 
 それらのイビキが洩れてくるテントの前でルイは立ち止まり、「ウウウ……」と低く唸る。闇の中でテントそのものが得体の知れない巨大な怪物にも見える。だが、初日はルイも疲れが出たのだろう、自分たちのテントへ戻るとまもなくおとなしく寝てくれた。この日のために買って持参した折りたたみのケージの中で……。

 安眠は長く続かなかった。朝まで絶えないイビキ、そして、テントで寝るキャンプという慣れない環境のせいもあって、ルイは午前5時過ぎに不安げに騒ぎはじめた。想定はしていなかったが、何があってもしかたないと覚悟はしてきた。ぼくはすぐにシュラフから脱けだし、身支度を終えるともうすっかり夜が明けた朝のキャンプ場へルイを連れ出した。

 キャンプ場の外れから続く人の気配のない林道はルイにとって発見の連続だった。見るもの、聞くもの、そして、犬だけに道ばたのにおいさえ、すべてがはじめての経験の連続だった。
 森の中の鳥の鳴き声に立ち止まってあたりをうかがい、頭上の梢をかすめていく野鳥の影と羽音に首をすくめ、道端のそこかしこのにおいを嗅ぐルイにつきあいながら1時間半、林道をゆっくりとたどった。
 
 振り向き、ぼくを見上げるうれしそうなルイに、ぼくは何度も語りかけた。
 「ルイ、キャンプへきてよかったな。どうだ、いいキャンプ場だろう? ここはシェラもむぎも大好きだったんだぜ」
 どうやら、キャンプ犬としての素質は問題なさそうである。少々無理をしてもキャンプにきてよかった。ときおり咳き込みはするが、晴ればれとした朝を堪能した。